天ぷらの上手な揚げ方を知りたい!
天ぷらは、卵液に小麦粉を混ぜた衣を素材につけて、油で揚げた人気の日本料理です。一見、シンプルで手軽な料理に思えます。しかし、衣がべちゃっと重くなり、上手にできないと悩む方は少なくないかもしれません。天ぷらの衣をからっとおいしく揚げるにはどうしたらよいのでしょうか。本記事では天ぷらの揚げ方を、初心者にもわかりやすく解説します。

本記事で紹介する3種類の衣
天ぷらの衣と一口にいっても、作り方は1つだけではありません。これから次の3種類の衣の天ぷらと、そのポイントをご紹介します。
- 基本!サクサク軽い衣の天ぷら
- 華やか!花を咲かせた衣の天ぷら
- 長持ち!ザクザク感が続く衣の天ぷら

まずは素材の準備じゃ。素材の準備の過程にも、天ぷらをおいしく揚げるポイントがあるぞ。
素材の準備
今回は素材として、人気のエビとキスをとりあげました。初心者向けに、さばき方からご説明しましょう。他に、ちくわや野菜類も天ぷらでおいしく食べられ、かき揚げも人気があります。

まずはエビの下処理からね。エビって、どんなエビでもいいのかしら?
エビの下処理
エビは黒いタイガー系を選ぶ
エビの天ぷらを上手に作るためには、エビの選び方にもポイントがあります。加熱調理には、赤系のエビよりも黒のタイガー系のエビがおすすめです。赤系のエビは水深の深い場所に生息し、比較的水分量が多く、加熱するとぼそぼそになりやすいといわれます。天ぷらには、浅い海に生息している黒いタイガー系のエビを選びましょう。
頭と殻を取り除く
まず、エビの頭と殻を取り除きます。頭を取るときはねじるようにして、背わたを一緒に引き抜くと楽です。右側の足と左側の足の間から、親指を殻と身の間に滑り込ませるようにして殻をむきます。その際、尾側の1関節だけ殻を残してください。背わたが途中で切れてしまったものは、殻をむいてから包丁で背に切れ目を入れて掃除をします。尾の先を切り取り、包丁で中の水分をしごき出しましょう。
エビをのす
エビをまっすぐに揚げるために繊維を切る作業を、エビを「のす」といいます。まず、腹側に3~5か所程度、包丁で切れ目を入れてください。次に、エビの腹側をまな板に押さえつけた状態で、親指と中指と薬指で左右に引っ張りながら、人差し指で背中全体を順に押さえます。ぷちっと繊維が断ち切れるような感覚があれば、その部分は揚げても曲がりません。
頭部を下処理する
エビの頭も、素揚げにするとパリパリとおいしくいただけます。まず頭の殻を外し、口の位置で先端を切り落としてください。切り口からエビ味噌を取り出します。エビ味噌が油を汚しやすいからですが、気にならない場合はつけたままでも結構です。

次はキスをさばいてみよう。
キスの下処理
次は、キスの下処理をご紹介します。キスは釣り魚としても人気です。背開きにする方法や理由、天ぷらにする前のポイントをご説明しましょう。
うろこと頭と内臓を取る
まずうろこを取ります。包丁を尾側から頭側へと動かしながら、ひれのつけ根までていねいにうろこを取ってください(画像上)。胸びれのつけ根と腹びれのつけ根を結ぶ線で、頭を切り落とします(画像左下)。腹は開かずに内臓を出しましょう(画像右下)。水洗いしてペーパーなどで水気を取ります。
背開きにする
キスを背開きにします。キスの背中側から中骨の上に沿って包丁を進めてください(画像左上)。背骨から出ている血合い骨も断ち切りながら切り進み、腹側を残して本を開くように開きます(画像右上)。中骨を下にして置き、骨の上をこするように身と切り分けましょう(画像左下)。中骨は尾の近くで断ち切ります。

なぜ背開きにするの?

背開きだと、天ぷらにしたときの形が整いやすい。腹開きにすると内臓が入っていた身の薄い部分が端にくるので、まるまりやすくなるのじゃ。
小骨を処理する
腹骨をそぎ落とします(画像左上)。削り過ぎると身が分かれてしまうので、できるだけ薄く骨だけをそぎましょう。骨抜きで血合い骨を抜きます(画像右上)。左手の指で身をつまむようにすると、身崩れしにくいです。指で触って骨が残っていないか確認してください。背開きが完成したら(画像左下)、ペーパーなどにはさんで水分を抜きます(画像右下)。

素材の水分が多いと、揚げた後に水分がしみだして衣がべちゃっとする。素材の水分を減らすのは、天ぷらを上手に揚げるポイントの一つじゃよ。

へえ、素材の準備の仕方も天ぷらのサクサク感を左右するのね。では早速、私のような初心者でも上手にできるように、天ぷらの揚げ方を教えて。
基本!サクサク軽い衣の天ぷら
まず、サクサク軽い衣の天ぷらの揚げ方をご説明します。この衣が基本になるので、衣の作り方から揚げ方まで、くわしくみていきましょう。上手に天ぷらを揚げるポイントもその都度ご紹介します。しかし全てを完璧に実行しようとすると、天ぷらを揚げるのが億劫になってしまうかもしれません。ご家庭で無理なく実践できる範囲で取り入れてみるとよいでしょう。
①衣の作り方
天ぷら衣は揚げる直前に作ります。材料の比率の目安は次の通りです。
- 卵 1個
- 水 200cc
- 薄力粉 100g
- 片栗粉 適量
グルテンの形成をおさえる
ここでのポイントは、小麦粉のグルテン形成をおさえることです。グルテンとは小麦粉のたんぱく質と水が結びついてできる物質で、弾性と粘性があります。パンなどでは重要ですが、天ぷら衣にとっては邪魔者です。グルテンは温度が高いと形成されやすいので、水や卵だけでなく粉まで冷蔵庫で冷やす方もいます。衣に氷を入れたり、衣のボウルを氷水に当てたりするのも一つの方法です。

衣に氷を入れるより、ボウルを外側から氷水で冷やしたほうが、衣の濃さが変わらないわね。…なんだか均一に混ざらないんだけど、大丈夫かしら?

粉やだまが残っている状態でOKじゃ。かき混ぜ過ぎるとグルテンを増やしてしまうぞ。

衣を作ったら時間をおかずにすぐに揚げられるように、素材や油も準備しておくことも大切ね。
②揚げ油の準備の仕方
揚げ油を用意します。油はできるだけたっぷりと用意するのがコツです。油が多めだと温度が一定になりやすく、衣の水分がしっかり抜けてサクサクに揚がりやすくなります。油の温度は、魚介類の天ぷらの場合は高めの180℃程度です。緑の野菜はごく低温で色鮮やかに、根菜類は火を通すために低温から揚げましょう。

いろいろな素材の天ぷらを作るときには、最初に低温で揚げるものから始め、高温で揚げるものを最後にするとよいぞ。
③衣のつけ方
素材に衣をつけます。直接天ぷら衣をつけずに、打ち粉(薄力粉)をまぶしてから衣をくぐらせるひと手間が、上手に衣をつけるポイントです。素材を衣にくぐらせる際には、衣が薄い場所に入れて、衣が濃い場所から引き上げるとよいかもしれません。衣のつき方が少ないと感じるかもしれませんが、素材の色が透けて見えるくらいの仕上がりが適当です。素材の味を楽しめる軽い天ぷらができるでしょう。
④揚げ方
衣をつけたら、すぐに油に入れて揚げます。一度に揚げる天ぷらの量としては、油の表面積の1/3~1/2以下が適量です。一度にたくさん揚げようとすると油の温度が下がり、衣から水分が抜け切れずにべたっと重い衣になってしまいます。面倒でも、油の温度が一定に保たれるように少しずつ揚げましょう。表面に散った揚げかすはこまめに網杓子で取り除きます。
揚げ上がりは音と泡で判断
キスは背開きにしても、多少は端がまるまりやすいです。油に入れたら形が固まるまで箸で押さえているとよいでしょう(画像左)。衣が固まったら時々ひっくり返します。揚げ上がりの目安は、素材が浮いてきて音が乾いた感じに変わり、泡が小さくなってきた頃です。素材を縦にして油を切りながら引き上げ、網やペーパーの上で油を切ります。

油切れをよくするために、揚げ上がりに火を強めて油の温度を上げる方もおる。じゃが、次の素材を揚げる前に油の温度を下げなければならぬ。

うーん、家族全員分の天ぷらを揚げるときには、こだわり過ぎると大変かもしれないわね。自分に無理のない範囲を考えるわ。
⑤盛り付け方
サクサク軽い基本の衣は、素材の味が最も生きる衣です。塩でいただくのがよいかもしれません。スダチを添えてもよいでしょう。

天丼や天そばも人気よね?でも、もっと衣がたくさんついて華やかな天ぷらがのっている気がするわ。

うむ、花を咲かせた衣じゃな。今度はその作り方のポイントを説明しよう。
天ぷらは家族にも人気のお惣菜なの。自分で上手に揚げられるようになりたいわ。