季節別の「おはぎ」「ぼたもち」の別名
「おはぎ」や「ぼたもち」以外にも、夏や冬の季節ごとの「夜船」「北窓」の名前もついています。これらの名前は、季節の花や風物詩が由来ではなく、作る工程からつけられました。季節を問わずに使える「隣知らず」というものもあります。
「おはぎ」「ぼたもち」と「餅」の作り方の違い
「おはぎ」「ぼたもち」以外の米を使った食材に「餅」がありますね。餅はうすときねでつくときや、手返しをする際に音を立てます。また、大掛かりな道具が必要なため、家の外でないと餅つきは難しく人目につく場合もあるでしょう。
一方、「おはぎ」「ぼたもち」の場合は、炊いたうるち米や蒸したもち米をすりこぎなどでつくようにつぶして練るような作り方です。餅をつくこととは異なり、家の中で作業ができますし、大きな音はしません。この違いが別名の由来です。
夏の季節は「夜船」
夏の季節の名前は「夜船(よふね・よぶね)」です。夜間に港や船着き場に停泊する船が、人々が寝ている間に静かに入る様子が由来です。もちをつくのと違って音がせず、夜船のように静かに作れること、人が寝静まっているさなかに来る船でいつ着いたのかわからないところから、お菓子を作っても周囲に気づかれにくいことを表しているようですね。
冬の季節は「北窓」
「北窓(きたまど)」は、建物の北側に面した窓のことです。一見、お菓子とは関係なさそうですが、一種のダジャレや言葉遊びが由来です。いくら明るい満月であっても、北を向いた窓からでは実際の月の姿を見られません。「『北窓』には『月がない』」というところから、ご飯をつぶす作り方を「もちつきのように『つきがない』」と連想して名前がついたそうです。
どの季節でもOKな「隣知らず」
「隣知らず」の名前は、「ぼたもち」や「おはぎ」を近所に知られずに作れるというところからつけられました。ご飯をつぶす音は外にもれにくく、もちつきのように大がかりで人目につくこともありません。この「隣知らず」という名は季節を問わずに使えます。
ちょっと怖い「ぼたもち」「おはぎ」の別名
実は、「夜船」「北窓」「隣知らず」以外にも、「はんごろし」「みなごろし」という怖い別名があります。インパクトがありますが、地域によっては聞いたことがないという方もいるかもしれません。
「みなごろし」「はんごろし」とは?
「みなごろし」と「はんごろし」は、ダメージを食らうほど傷つけられるという意味ではありません。この場合の「ころし」は食材の粒がつぶれた状態のことで、「はんごろし」は半分ほどつぶれている、もしくは粒が残っていることです。一方「みなごろし」は全部つぶれていてなめらかな状態であるということですね。
怖い理由でついた名前ではないので、安心して使えますね。
「つぶあん」「こしあん」の違い
あんこの状態を見て、「おはぎ」や「ぼたもち」に「はんごろし」「みなごろし」と使うところがあります。小豆がつぶれて粒が全く残っていない「こしあん」を使う場合は「みなごろし」です。つぶが残っている「つぶあん」を使っている場合は「はんごろし」と使い分けます。
「ご飯」の粒の違い
お餅とご飯を比較して、「はんごろし」「みなごろし」という場合もあります。
「ぼたもち」や「おはぎ」のなかでも、餅の生地にきな粉・ごま・青のりなどをまぶす作り方をする場合もありますね。餅はもち米の粒がない作り方をするため「みなごろし」です。一方、小豆のあんこなどで包んで作る「おはぎ」などは、ご飯粒が残っている状態のため「はんごろし」です。
「はんごろし」と「みなごろし」の組み合わせ
地域によっては、粒のある同士の組み合わせ、もしくは粒がない同士の組み合わせで「はんごろし」「みなごろし」と使い分けることもあります。「はんごろし」はつぶがある状態のご飯をつぶあんで包んだもの、「みなごろし」はなめらかなこしあんで餅をくるんだ作り方のもののことです。
どの季節でも「おはぎ」「ぼたもち」は美味しい
「おはぎ」「ぼたもち」いずれの名前であっても、あんこの甘さと米の歯ごたえで人気があります。春や秋以外に「北窓」「夜船」と季節に応じた名前がついたのも、お彼岸の季節を問わずに愛され、一年中食べられるお菓子として多くの人に親しまれているからかもしれません。現代では小豆のあん以外にもさまざまな味が楽しめ、いつでも美味しく食べられますね。
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夏や冬の別名などは花とは関係なく、餅との作り方の違いがポイントとなるようです。