「ポタージュ」とは?
「ポタージュ(potage)」とはフランス語で、本来は鍋物を意味します。日本では野菜のピューレと牛乳や生クリームで作ったとろみのあるスープをポタージュと認識されていますが、フランスでは「スープ」全般を指します。鍋(Pot)で食材を煮込みブイヨンを作ることに由来する言葉です。コンソメスープもブイヤベースもポトフもフランスではポタージュの一種ということになります。
「スープ」との違いは?
日本で一般的に使われているスープの語源は英語の「スープ(Soup)」です。ラテン語の浸すという意味の「スッパーレ(suppare)」に由来します。肉、野菜などを煮込んだ西洋風の汁物料理全般を指すということから、ポタージュとこのスープの違いはありません。
「ポタージュ」とは洗練されたスープ
「スープ」は12世紀頃から鍋物の煮汁やフルーツワインにつけて食べるパンを指していました。しだいに煮汁をかけてふやかしたパン、パン入りのブイヨンを意味するようになりました。中世ヨーロッパではこのお粥のようなパン入りスープが庶民の食事の中心でした。今でもヨーロッパの田舎に行けば、スープの中にパンを入れて食べる習慣があります。
市民革命による変化
18世紀になると市民革命が起こり、旨みが詰まった煮汁であるブイヨンの真価が認められました。フランスでは郷土料理の伝統的なスープやパンを浸して食べる田舎風のスープと区別して、ブイヨンを出汁として用いる上質なスープを改めて鍋物の表すポタージュと呼ばれるようになりました。
ポタージュとはフランス料理におけるスープ
イギリスでは複数の食材の煮汁のことをポタージュとしており、長いことスープとポタージュの語の使い分けがありませんでした。ところがポタージュとはフランス語で、フランス料理にルーツがあるという理由から、フランス料理でふるまわれるスープはポタージュとして区分けされるようになりました。
コーンポタージュとコーンスープの違いは?
コーンスープはとうもろこしの実を使ったスープのことを言います。代表的なものとしてアメリカ料理のコーンチャウダー、中国料理のユーミーカン、ベトナム料理のスップバップクア、メキシコ料理のソパ・デ・エローテなどがあります。フランス料理のコーンポタージュもそのひとつです。
日本の場合
日本の場合、とうもろこしを裏ごしして口当たり滑らかに仕上げたスープをコーンポタージュ、とうもろこしはそのままでつぶつぶ食感が楽しめるスープをコーンスープと言います。両方のよいところを味わえ、満足感のある粒入りコーンポタージュもあります。
ポタージュの種類
フレンチのコース料理で前菜の後に出るポタージュはコースの編成や季節に応じて、温製と冷製のどちらかが提供されます。澄んでさらりとした「ポタージュ・クレール」、濁ってとろりとした「ポタージュ・リエ」の2つに大きく分類されますが、材料や調理法、地方によってその区分けは様々です。
ポタージュ・クレール
日本で一般的にコンソメスープと言われるものです。ブイヨンやコンソメベースのスープで、クルトンや野菜が浮き身として使われます。温かいものを「ショー」、冷たいものを「フロワ」、見た目も食感も涼しげなゼリー状のものを「ジュレ」と分類します。出汁となる材料や浮き身となる具材を変えることでいくつかの種類があります。
ポタージュ・リエ
日本で一般的にポタージュと言われるものです。「リエ(lie)」はつなぐという意味で、ブイヨンベースに、小麦粉、米、卵黄などつなぎとなる材料を加えたクリーム状の濃厚なスープです。仕上がりや材料、とろみのつけ方によりいくつかの種類に分類されます。
ピュレ
じゃがいもやとうもろこし、かぼちゃなどデンプン質を多く含んだ野菜や豆などをブイヨンで煮込み、裏ごしするなどしてピューレ状にし、牛乳や生クリームを加えて濃厚に仕上げたスープです。日本でポタージュと言われているものの多くがこのピュレです。
クレーム
小麦粉をバターで炒めたルーに、デンプン質の少ない野菜や鶏肉のピューレを加え、生クリームで仕上げたスープです。トマト、ブロッコリー、ほうれん草、カリフラワーやきのこ類のポタージュがこれにあたります。
ヴルーテ
小麦粉をバターで炒めたルーをブイヨンで伸ばし、生クリームや卵黄でとろみをつけて仕上げたスープです。シチューに似た食感があります。
ビスク
香味野菜と煮込んだカニやエビなどの甲殻類をすり潰し、搾り出したエキスをベースに生クリームでとろみをつけ仕上げた旨みたっぷりのスープです。アメリケーヌ・ソースとしてメイン料理のソースとしても使われます。
代表的なポタージュを紹介!
じゃがいものポタージュ
ほっこりまろやかなじゃがいものポタージュ。冷製スープの代表格で上品な味わいのヴィシソワーズもじゃがいものポタージュです。でんぷんが多いため煮崩れしやすく、加熱することでほくほくした食感が楽しめる男爵やキタアカリなどの品種がおすすめです。
かぼちゃのポタージュ
クリーミーで濃厚なかぼちゃのポタージュ。ほっこり甘く、鮮やかな黄色が食卓を華やかにします。低カロリーで栄養豊富なかぼちゃは器としても大活躍します。
さつまいものポタージュ
クリーミーでやさしい甘さのさつまいものポタージュ。野菜嫌いのお子さんにも好まれる美味しさです。さつまいもはいも類の中でもっとも食物繊維が豊富です。腸内環境を整え、便秘の改善が期待できます。
にんじんのポタージュ
まろやかな甘みのにんじんポタージュ。にんじんをすりおろして煮込めば簡単に作れます。皮ごと使うことで栄養満点です。にんじんに多く含まれるβ-カロテン(プロビタミンA)は免疫力を高め、美肌や風邪の予防の効果が期待できます。
まとめ
ポタージュは具材のうまみがギュっと凝縮されたバリエーションが豊富な濃厚なスープです。暑い夏や寒い冬でもしっかり栄養補給できます。滑らかなテイストが魅力のポタージュ、今晩の食卓を彩ってみませんか?
出典:写真AC