春子とは
「春子(カスゴ)」は、稚鯛(まだ大人にならない鯛)の地域での呼び名のようです。地域によっては、うろこの色から「桜鯛」と呼ぶこともあります。真鯛、黄鯛、血鯛の稚魚はすべて春子と呼びます。
基本情報(真鯛)
分類 | タイ科マダイ属 |
学名 |
pagrus major |
分布 | 日本周辺の海全般に分布 |
旬の時期 | 春の産卵期 |
鯛の旬の時期は春の産卵の時期と言われています。普段は海の深いところで暮らしている鯛が産卵期にだけ浅いところに浮上するからと言われています。春子は、春の時期に獲れる生後1年~2年目の鯛です。
春子の捌き方:三枚おろし
春子は身が柔らかいので、家庭でも簡単にさばくことができます。三枚おろしの方法を覚えておくと、ほかの魚にも応用できますよ。
捌き方①うろこをはがす
うろこ取りを使って、尾から頭に向かってうろこをはがしていきます。うろこ取りがない場合は、包丁の峯を使ってはがしていきましょう。全体的に丁寧に鱗をはがすことで、三枚おろしや背開きをするときに包丁が入りやすくなります。
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貝印 うろこ取り
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鯛のような硬くて大きなうろこもこそげ落としやすい形状です。生魚を自宅で捌く機会が多い人は、準備をしておくと便利です。
捌き方②頭を落とす
頭を落とすときは、背びれと頭の境目から、胸ひれを頭側に残すように包丁を入れます。身に対して垂直ではなく、若干斜めになるように包丁を入れると、エラを残すこともありませんし、内臓も取れやすくなります。頭を落としたら、内臓を取り出し、軽く水洗いしてください。
捌き方③三枚におろしていく
腹側から包丁を入れます。内臓があった場所は空洞なので、軽く切れ目を入れて中骨のアタリをつけるのがポイントです。
この切れ目から、中骨に沿って包丁を刃を入れます。中央の太い骨に当たるまで包丁を進めてください。
次に背側に向きを変えて包丁を入れます。中骨に当たりやすい尾に刃先を当てて、包丁を入れるとアタリが付きやすくなります。腹側と同様、中央の太い骨に当たるまで、中骨に沿わせて包丁を入れてください。
半身がおろせたら、同じ手順でもう半身もおろしてください。これで、三枚おろしが完成しました。
春子の捌き方:背開き
背開きは、腹を輪に見立てて開く魚の捌き方です。一夜干しなどをする際に使われます。効率的な酢締めの下ごしらえをするために三枚おろしよりも背開きの方法が推奨されているので、チャレンジしてみましょう。あらかじめ、うろこははがした状態から始めてください。
捌き方①背中に包丁を入れる
腹の内臓があった部位がわかるので、必然的に背中はどちら側かわかります。背中に包丁を入れ、背中から開くため「背開き」といいます。逆に、腹側に包丁を入れ、腹側から開く捌き方を「腹開き」といいます。三枚おろしができれば、いずれの方法も応用になります。
背びれにアタリをつけて包丁を入れていきます。三枚おろしの要領で、中骨に沿って中央の太い骨まで包丁を進めてください。
捌き方②腹側に包丁を入れる
内臓があった部分から尾にかけて身がついているので、包丁を入れて身と骨を外します。三枚おろしと逆の方向から刃を入れるので注意しながら包丁を進めます。腹側は完全におろさず、輪を残した状態にしてください。
捌き方③中骨を落とす
中骨がついている側の背に包丁を入れます。手順②の要領で腹まで包丁を進めてください。
開きの状態が作れましたが、腹側の中骨と尾がつながったままです。また、腹側の中骨と腹びれは直結しているので、中骨を外すときに一緒に外します。
身をよけておき、骨と身が残っている部分をだします。
腹びれとつながっている骨に包丁の角を突き刺し、固定します。左手で身を軽く押さえ、包丁を固定したまま右方向へ引くと、ひれと身が外れます。
このように、身からひれが外れます。身はひれがついていた部分のみ穴が開いたような形になります。
尾は身側に倒し、尾を落とさないように中骨を断ち切ります。これで、背開きが完成です。
捌き方④仕上げをする
口当たりが悪くなるので、内臓を包んでいた膜とあばら骨を包丁でそぎ落とします。皮だけは残しておくときれいに仕上がります。
三枚おろしと背開きが完成しました。身が柔らかいので、手早く捌いてください。
春子の酢締めの方法
ここからは、捌いた旬の春子で酢締めを作ります。お刺身なら新鮮なもの、焼くか蒸すかといった調理法が主流の鯛ですが、身が柔らかい春子なら自宅で酢締めにすることも可能です。
酢締めの方法①下ごしらえ
春子の身には臭みを持った水分が含まれているので、浸透圧を使って水分を追い出し、味をしみこませやすくします。この場合、塩を使うのがセオリーですが、塩は分子が小さく柔らかい春子の身にすぐに入り込んでしまいます。酢締めの仕上がりが塩辛くなるので、ここでは分子が大きい砂糖を打ってください。
砂糖を両面に打った後、10分ほど寝かせます。すると、身から水分が浮き上がりますので、軽く流水で洗い流してください。
酢締めの方法②湯引きをする
鍋にお湯を沸かし、沸騰したら塩を小さじ1程度入れます。ボウルには氷水を準備してください。春子にはまだ臭みが残っています。また、皮が若干固いので湯引きの作業で皮を柔らかくするとともに、臭み抜きを行います。身崩れを防止するために、網しゃくしなどに春子をのせ、鍋に入れましょう。
湯引きの時間は10秒程度です。すぐに氷水が入ってボウルに入れて身を締めてください。このときにぬめりなどを軽くとっておきます。湯引きで身が縮むので、身に残っていた鱗などもはがしてください。
冷水で粗熱を取った後、ざるにあげて水を切ります。画像の通り、熱湯にくぐらすと身が縮むため、身の反り返りが見られます。三枚おろしにしたものは、ロール状になり、火が通りにくくなることが予想されます。また臭み抜きも完全ではなくなるため、背開きの方法を推奨しています。
酢締めの方法③酢に漬ける
湯引きをしたのち、水分を切った春子を酢漬けにします。酢だけでは味が強いので、薄口しょうゆで香りをつけ、みりんでまろやかな風味をプラスした漬け地を作ってください。銀座渡利の板前さんは目分量で作っていましたが、酢10:しょうゆ2:みりん2程度の割合でよいでしょう。お好みに合わせて作るのがポイントです。
酢を入れたボウルに春子を入れて、5分~10分程度漬け込みます。しっかり味をつけたい場合は長く漬けるとよいでしょう。
着け終わった春子は、ざるに挙げて、酢を切ってください。
ある程度酢が切れたら、乾燥を防ぐためにラップをかけて冷蔵庫で半日以上熟成させ、味を落ち着かせます。これで酢締めの完成です。
春子の酢締めの食べ方
できあがった春子の酢締めはお寿司のネタにしてもよいのですが、春らしく湯がいた三つ葉と合わせてみてはいかがでしょうか。シャキシャキとした食感の旬の三つ葉と、ふっくらとした春子の身がベストマッチしますよ。
春子の身の仕立て方
背開きした春子は、尾を落とし半分に切ります。腹の薄い部分をそぎ落としたのち、一口大に切ってください。
さっと湯がいた三つ葉は、水に取って軽く絞ったあと、春子の身の大きさに合わせて切ります。
三つ葉と春子は混ぜ合わせず、小鉢にそれぞれを重ねるように盛り付けていきます。わさびを添えて完成です。三つ葉にこだわらず、菜花やアスパラガスなどと合わせてもおいしくいただけます。
春の味の春子をおいしく食べよう
銀座渡利さんの動画を参考に、春子の捌き方や、酢締めの作り方を紹介しました。市場では価格も手ごろで購入できる春子なので、ぜひ自宅で酢締めにしてふっくらとした身を楽しんではいかがでしょうか。春子の捌き方は、ほかの魚にも応用できるので、試してみてくださいね。
参考動画
今回の記事は、銀座渡利様のYoutube動画を参考に作成をいたしました。
出典:写真AC