甘鯛と笠松揚について
甘鯛はどのような魚?
甘鯛はタイの仲間ではなく、スズキと同じ種類の魚です。体長は20センチから60センチほどの大きさになり、日本近海から熱帯域まで広く分布しています。水深30メートルから150メートルの砂地に生息して、小型の甲殻類などをエサにしています。
甘鯛は赤、黄、白の3種類
甘鯛は、「アカアマダイ」、「キアマダイ」、「シロアマダイ」の三種類が水揚げされ、高級魚として扱われています。甘鯛の中でいちばん漁獲量が多いのはアカアマダイで、全体の漁獲量の7割近くをアカアマダイが占めています。シロアマダイは「シラカワ」とも呼ばれ、水揚げも少なく味も良いことから超高級魚として扱われています。
松笠揚げとはどんな料理?
甘鯛の切り身の鱗をとらず素揚げした料理で、うろこ揚げと呼ばれることもあります。唐揚げにするので、パリッとした食感が楽しめます。油で揚げると鱗が立つところが、松ぼっくりに似ていることから、松笠揚げと呼ばれるようになりました。鱗を食べる料理は、松笠揚げだけなのでとても珍しい料理法です。
松笠揚げのつくり方①甘鯛をさばく
表面のぬめりを取る
包丁を左右に動かしながら、甘鯛の表面についているぬめりをとります。全体的にぬめりが多い魚なので皮目だけではなく、お腹と背中のぬめりも取ります。鱗は簡単に外れませんが、あまり強くこすると取れてしまうので、力加減に注意します。
頭を落とす
まず初めにカマに切れ目をいれます。画像のように胸ビレの付け根と、切れ目を入れたカマのラインを目安に切れ目を入れていきます。身をひっくり返し同じように切れ目を入れて頭を落とします。甘鯛の頭は焼いたり、酒蒸しにしても美味しいので、捨てないで残さず使います。
お腹を開いて内臓を取り出す
内臓をとり出し、洗う準備をします。おへそ(肛門)から逆さ包丁でお腹を裂きます。内臓を取り出したら、お腹の奥に黄色い厚い膜があるので、包丁で切れ目を入れておきます。黄色い膜の奥にある血合が見えるようにしておくと、洗うときに楽です。
身を洗って水気をとる
お腹の中の血合を水でよく洗い流したら、皮目のぬめりもいっしょに洗い流します。甘鯛は水分の多い魚なので、水に触れている時間が長いと身がさらに水っぽくなります。手早く洗い、あとで洗い直しがないように注意します。洗い終わったら皮目とお腹の中もしっかりと水気をふきとります。
身を3枚おろしにする
甘鯛の身を三枚おろしにします。甘鯛はとても柔らかい魚ですが、その見た目と違い、骨はとても硬い魚です。さばき方は他の魚と変わりませんが、骨が硬く身をおろすのが難しい魚です。身に鱗が付いていたら揚げムラになるので、残さず取り除いておきます。
腹骨を切り取る
逆さ包丁で、腹骨と背骨のつながっている箇所を外します。腹骨と背骨が外れたら、包丁を元に戻して、腹骨に沿って刃を滑り込ますようにして切り取ります。逆さ包丁で腹骨と背骨の接合部を外し、包丁の刃の通り道を作ることで、腹骨を切りやすくしています。
小骨を抜く
頭がついていた向きを右側にして、指先で小骨を探しながらピンセットで引き抜いていきます。甘鯛は柔らかい魚なので、骨といっしょに身まで抜けないように、画像のように小骨の根本を押えながら、ピンセットで引き抜きます。魚の身を触りすぎないように、注意しながら抜いていきます。
小骨は頭に向かって生えているので、頭がついていた側を右側にすると抜きやすくなります。
おろした身を塩でしめる
甘鯛は水気が多い魚です。全体的に軽く塩をふって身をしめていきます。身だけではなく皮目にもうすく塩をふり、30分ほどおきます。塩で身をしめることで、全体的に塩がいきわたり、揚げたときに味が均一に入ります。使う塩の量は魚のお重さの1%くらいを目安にします。
出てきた水分が身に触れないように、すこし斜めに置くと良いでしょう。出てきた水分が身に浸ったままになると生臭くなります。
おろした身を切り身にする
三枚おろしにした身を切り身にします。切る大きさに決まりはないので、お好みで切ってください。今回は揚げやすさと食べやすさを考えて、35グラムから40グラムほどの大きさで切っています。鱗が皮についたままで切るので多少力が必要です。包丁に力を入れてバリバリと切っていきます。
切り身についた鱗は揚げムラになるので、取っておきましょう。
松笠揚げのつくり方②甘鯛を揚げる
身側にかたくり粉をつける
鱗は何も付けず素揚げにするので、身側のみに粉をつけます。使用するのは片栗粉で、高級感を出すなら葛粉でもよいです。ただし葛粉はとても高価なので、ご家庭で揚げるなら片栗粉で十分です。粉を均等につけたら、網目のお玉(網杓子)に鱗を上にして乗せます。ここまで出来たらいよいよ揚げに進みます。
お玉で油をかける①(鱗が上)
網杓子に鱗を上にして乗せます。油の温度は少々高めで、粉を落として”ジュッ”と音がするようになったら、お玉で油をすくって鱗にかけます。少しずつ鱗が立ってくるので、全体の9割くらい火を通すつもりで、やさしく油をかけていきます。
買ってきた切り身で作ると、水分が抜けていて鱗がうまく立たないことがあります。そのような時はさらしで表面に水分を与えてあげるとよいです。
お玉で油をかける②(鱗が下)
編杓子の上で身をひっくり返し、鱗を下にしてゆっくり油に浸して揚げていきます。切り身全体を油で揚げるのではなく、皮だけが油に浸っている状態にして揚げます。油の温度は少々高めの180度から190度くらいで揚げることで、水分が飛んで鱗がカラッと揚がります。
鍋に落として仕上げ
鱗が立ってきて、バリバリとした感じになったら、編杓子から取り出して、身を油に落として揚げていきます。油の泡が小さくなってきたところで、少しだけ火の勢い強めます。こうすることでカラッと揚がり、油のキレも良くなります。なお油で鱗を立たせてから、オーブンで焼くと松笠焼きになります。
松笠揚げのつくり方③盛り付け
すだちを添えて盛り付け
揚がった身をとり出し、油をよく切って盛り付けます。身をしめたときの塩味がついているので、味付けをする必要はありませんが、お好みで塩を盛ってもよいです。最後にスダチを添えたら完成です。今回はシンプルな盛り付けにしましたが、季節の野菜の素揚げを添える盛り付け方もあります。
まとめ
甘鯛のレシピの中から、松笠揚げをご紹介しました。鱗を食べる珍しい料理法で、クリスピーな触感が楽しめます。ぜひ一度お試しください。また揚げるだけではなく、焼いたり、蒸したり、また西京漬けにすることもできる魚なので、この機会にいろいろなレシピを研究してみてはいかがでしょうか。
参考動画
今回の記事は、銀座渡利様のYoutube動画を参考に作成をさせていただきました。
逆さ包丁とは、刃先を上にむけて柄を握ることです。包丁の先端で骨や身をすくい上げて切るときに使います。