極地法のやり方・登り方
極地法のやり方は決まっていて、確実に登頂するためのメンバー構成や登り方のマニュアルがしっかり定まっています。雇われる人はその山のベテランであることが多く、各メンバーが知識を出し合いながら登頂を目指します。
メンバーを集める
ネットで登山家を雇ったり、現地で募集、交渉したりします。有名な山の場合は登山サポートサービスのコミュニティを作っている場合が多く、そこで依頼すれば円滑に手配してくれます。資金や山の難易度を相談しながら、メンバーを編成します。
打ち合わせをする
登山を始める前に、メンバーで入念な打ち合わせをします。山の天候や登山中のアクシデント予想、メンバーの配役や、登山スケジュールの設定、持っていく備品についてなど細かく決定します。そうすることで、より安全に登山に挑むことができます。
ベースキャンプに向かい準備する
日数を要する山の麓にはベースキャンプエリアがある場合が多いです。ない場合はベースキャンプを自分達で設営し、拠点にします。そこに全ての資材を持っていき、緊急避難場所としてのテントを建てます。そこから更に必要な資材を厳選し登っていきます。怪我人やリタイアする人はこのベースキャンプまで降りて来られれば、安全を確保できます。
徐々に登っていく
朝から登り始めて、大体日が暮れる前に設営を開始して夜に備え、休憩を取ります。この作業を繰り返しながら、最初に打ち合わせた日程をなるべく崩さないペースで進んでいきます。
最終拠点を設営する
極地法では、テント設営メンバーは頂上まで登らずに頂上手前の最終拠点で待機します。最終拠点は頂上まで往復1日以内に行き来できる場所に設置します。下り始める頃には、別隊員がベースキャンプから持ってきた物資が最終拠点に集まっていて体力を維持しつつ下山を完了させるやり方が極地法です。
極地法のメンバー編成例
以下は、80歳でエベレスト登頂を達成した三浦雄一郎さんの実際のメンバー編成例です。24人の大部隊で、人件費、食料費、入山料など費用総じて約1億円以上かかっています。
アタックメンバー(2名)
登頂を目指す人。このアタックメンバーをサポートする目的で、他のメンバーを雇ったりします。基本的にアタックメンバーは2人〜5人程度になることが多く、常にサポートを受けながら登山に集中できます。
アタックメンバーの直近サポートメンバー(2名)
最後までサポートをしながら一緒に登る人。怪我をした時に背負って下山するために基本的にアタックメンバーと同人数で編成します。登山インストラクターの様にルートの確認や、危険な通過ポイントの攻略法、姿勢の改善や怪我の応急処置、ペースの調整の役割を担います。
ポーター(18人)
荷物を運ぶ人のこと。登山期間によっては大量の荷物が必要になるため、登る山の難易度や標高によってポーターの人数も比例して増加します。エベレストなど観光地としても有名な山脈の場合は、現地の少数民族をポーターとして雇うことが多いです。エベレスト登山の場合は周辺を居住地にしている少数民族の「シェルパ」を雇います。
キャンプ設営や荷物管理担当(3名)
ポーターである「シェルパ」へ指示を出し、キャンプの設営や荷物管理をします。
調理担当(5名)
調理担当です。これは必要不可欠ではありませんが、料理による気力回復と体調の向上は過酷な登山にはかなり効果的なので、お金に余裕がある場合は雇うとよいでしょう。
極地法に対する反対意見
極地法は、そのサポート体制の充実度から登山家からの批判を受けやすい立場にあります。また一般市民の間でも過酷であればあるほど評価が高まる風潮にあるので、例えエベレストを登頂したとしても、極地法のサポート体制やその費用を知った人々の評価は少し下がります。その証拠にネットのコメントや、メディア記事の書き方にも少し貶した書き方が目立ちます。以下は極地法に対する反対意見でよくあがる例の一覧です。
登山家の恥
登山家には自分の限界に挑戦する人が多いことからか、多数の人間の力を借りて登頂する極地法に関心しない人が一定数存在します。その様な人からは「極地法で登った奴は登山家の恥だ!」なんて言われることがあります。しかしエベレストに一般人が1〜2人で挑むのは自殺行為ですので、その様な批判は流すべきです。恥と言う人は必ずいるでしょうが、極地法は合理的に考えられた手法であり、それを選択するのは賢い手段と言えるでしょう。
金の力を借りて登った
多額の資金を使って登山することから「金の力を借りた」などと言われることがあります。その意味は単に人間の経済力に対する嫉妬です。これも仕方のないことで、極地法のスタッフを5人も雇えたなら十分にお金持ちと呼べる行動です。大半の人はそんなに人を雇えないので、仲間内でメンバーを集めるか諦めるしかありません。
ゴミを山に撒き散らす
エベレストに登る場合は約1ヶ月かかります。その期間分の物資と共に大勢の人が登っていくので当然出るゴミの量も増えます。1日で往復できる富士山でもゴミ問題が深刻になっているので、この意見も自然なものと言えるでしょう。しかしエベレストの場合は環境が過酷なので「ゴミに体力を使っている場合ではない」「命には変えられない」というのが現場の声です。
まとめ
極地法のやり方に対する反対意見も目立ちますが、登山には万全を期して臨むべきです。登山家の恥だろうがなんだろうが、登り切ることに意味があるので安全策を取れるなら取るべきです。実際に、資金不足で超高標高の山に最低限の資材で挑んで亡くなってしまった例もあります。登山の怖いところは引き返すのが難しいことで、途中で食糧を確保することはできず、餓死の確率が高いことが特徴です。そのことを忘れずしっかり対策をとって、登山を楽しみましょう。
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