コハダ(コノシロ)とはどんな魚?
コハダは東アジアの内湾から、下降の汽水域に群れで生息する魚です。日本では、東北南部以南の太平洋、日本海南部、東シナ海、南シナ海北部の内湾や汽水域に分布しています。成魚で体が大きい個体では全長30cmほど。日本では、東京や大阪、九州で多く食べられる魚です。
コハダは出世魚
コハダの寿命は3年ほどといわれています。その中で幼魚を「シンコ」と呼び、大きさによって「コハダ」「ナカズミ」「コノシロ」と呼び分けがなされます。今回取り上げるコハダは10cm程度の大きさです。シンコの時期は高級魚として高額で取引されますが、コハダより大きくなると、価格は落ち着くといわれています。
コハダの基本情報
分類 | ニシン科コノシロ属 |
国内での分布 | 東北南部以南の太平洋及び日本海 |
特徴 | 側扁形 背は青緑色で腹は銀白色 |
コハダ(コノシロ)のさばき方
ここからは、銀座渡利の板前さんの動画を参考に「コハダ」のさばき方を紹介します。小さい魚ですが、丁寧に扱うことが求められます。今回はかんたんな「腹開き」の手法でコハダをさばきます。
さばき方①頭やひれをとる
コハダには特徴的な背びれがあります。針状に長い背びれの際に包丁をひっかけるように刃を当て、手前に引くと背びれが切り落とせます。
次に、うろこを落とします。包丁の刃を立てて尾から頭に向かって一方向に引くと、うろこが落ちます。全体的にうろこを落としましょう。忘れやすいところとして腹や背が挙げられます。指で触るとうろこが残っている部分がわかりますので、確認しながら手早くうろこを落としましょう。
頭を落とします。可食部を少しでも多く残すためには、コハダの肩部分にある黒い斑点とエラの中間部分に包丁を入れるのがポイントです。腹びれの根元を頭側に残すように角度をつけて落としてください。
尾を落とし、腹は肛門(動画ではヘソと表現)から腹を切り落とすと、画像のような形に仕上がります。ここで内臓を落とし、流水で全体を洗います。
さばき方②腹開きにする
「腹開き」とは、背側を残したまま、腹側から包丁で開く方法です。小さな魚なので、手のひらの熱が入らないように手早く進めましょう。頭を落としたところからコハダを見ると、中骨が見えます。この中骨に包丁の先を添わせて、身と骨を外します。
背中を包丁の先で破かないよう丁寧に処理します。腹側を手前に置き、利き手側に頭を配置しましょう。頭側から尾に向けて包丁を進ませましょう。
半身の骨が外せたら、もう半身の骨を外します。コハダの場合は、骨がついている身の皮目を上に置き、包丁を添わせます。先ほどのプロセスと同様に頭から尾に向けて包丁を進めてください。
これで、腹開きができました。背びれの骨を中心に、腹(内臓)が入っていた黒い部分が外側にきています。
さばき方③トリミングをする
ここからは、身に残っている小骨を取り除きます。背びれを支える骨が中央に残っています。画像丸印の中にある白く浮き上がった部分がそれです。これに包丁を薄く入れて取り除きます。酢締めをすれば小骨は柔らかくなりますが、口当たりを気にする人は背びれの骨は必ず外してください。
内臓を守るためにおなか周りについている小骨は酢締めをしても残りやすいので外します。身と皮を残すように、骨だけをそぎ切りしてください。
反対側は包丁の刃が逆向きになるため、さばきにくいかもしれません。
これで、コハダの下ごしらえが完了しました。
コハダは刺身では食べないって本当?
コハダは刺身で食べません。コハダの脂が酸化すると、においを発することがその理由と考えられています。口の中にも脂が残りやすいようですね。食べ方のひとつで炙りをすると、脂のにおいが強くなるので好まない人もいるのだとか。変質しやすい魚ですので、においが出ないように手早く下処理をすることは大切です。
コハダ(コノシロ)の酢締めの方法
コハダを酢で絞める方法を紹介します。おいしく食べるには下ごしらえに時間がかかりますが、この手間をかける時間も楽しいものです。刺身の盛り合わせの中にコハダの酢締めを出すことは、食べ方のひとつとしておすすめです。
コハダを酢締めする理由
コハダを酢で締める理由
- 魚の脂を落し、口当たりをよくする
- 小骨を柔らかくし口残りを防ぐ
- 保存性を高める
また、塩味と酢の味を魚に含めることで、淡白な味にアクセントが付きます。皮目もきれいなままで残りますので、良いことずくめの食べ方といってもよいでしょう。刺身に酢締めを添えるのも腹痛を避ける理由があるとも考えられています。
コハダの酢締め①塩を振る
バットの上にまきすを敷き、その上にコハダを置きます。まきすを置くのは、塩を振った後に出てくる水分が魚に戻らないためです。
あら塩をコハダの上から振ります。まんべんなく塩がかかるように振りましょう。
身を上に返して、塩を振ります。塩の粒子が見えるほど少し強めに振りましょう。コハダの身の厚さや大きさによっても変わりますが、30分程度このままで塩をなじませます。
冷蔵庫に入れておくと安心ですね。
30分経過したものを、流水で塩や油脂を洗い流します。雑菌がついてしまわないように身は触らないようにしましょう。洗った後はキッチンペーパーで水気が残らないよう、かんたんにふき取ってください。
コハダの酢締め②酢につける
小ぶりのボウルにコハダを入れて、酢をひたひたになるまで注ぎ入れます。使用するのは家庭にある食酢で構いません。甘味が欲しい場合は「米酢」がおすすめです。銀座渡利さんのような江戸前寿司の場合は、酒かすを醸造した「赤酢」を使うこともあるようです。この状態で20分程度漬け込みましょう。
常温のほうが、酢がしみやすくなります。
酢締めの時間は、塩漬けの時間の半分程度といわれていますが、身の厚さや温度でも酢の入り方が変わります。あくまでも目安として様子を見ながら酢締めをしましょう。身が全体的に白くなったら、酢が入ったサインです。
コハダの酢締め③熟成させる
バットに清潔なまきすを敷き、酢締めされたコハダを引き上げます。身を外側にして背を中心に折り、立てるように並べましょう。通気性が高まるため、熟成が進みます。酢のとがった味を丸くすることと、身の内側までしっかり酢を浸透させるために半日くらい熟成させます。
熟成する際は、キッチンペーパーに包み冷蔵庫の中で熟成させましょう。
コハダ(コノシロ)の握り寿司の仕立て方
酢で締めたコハダの食べ方でポピュラーなのは握り寿司です。ここでは握り寿司の仕立て方をかんたんに紹介します。
①コハダに飾り包丁を入れる
腹開きになっているコハダを半身ずつに切り分けます。皮目を上にして飾り包丁を入れます。これは見栄えをよくする意味あいがありますが、寿司を握ったときに酢飯に沿うように形がまとまりやすくなります。網代編みや縦もしくは斜めに切れ目を入れます。
画像ではわかりにくいのですが、切れ目を入れた後、二枚を重ねるように配置しておきましょう。
②酢飯と合わせて握りを入れる
酢飯は、赤酢を使っているため、色がついています。一口大をすくいとり、軽く握ったあと、コハダの身に軽くわさびをつけ酢飯と合わせて握ります。コハダの形を整えるように握ってください。
握りを入れたことで、切れ目の流れがわかる寿司が完成しました。
③寿司を盛り付けて完成
体裁よく器の上に盛り付けて完成です。かんきつを絞ったり、ゆずの皮をのせたりと化粧を施しているものもあります。
新鮮なコハダでチャレンジしてみよう
コハダのさばき方から、酢締め、かんたんな握りの作り方などを紹介しました。地域によっては新鮮なコハダが手に入ることでしょう。家でもぜひ酢締めにチャレンジすると、食卓のバリエーションが広がりますよ。
参考動画
今回の記事は、銀座渡利様のYoutube動画を参考に作成をいたしました。
出典:写真AC