はじめに
日本人は、魚を食べる機会が多いといわれています。刺身で食べる場合もあれば、煮魚や焼き魚として食べる場合もありますね。なかでも保存食として考えられた干物を好む人もいるでしょう。干物は、独特の風味と歯ごたえが魅力です。今回は、干物のなかでも「文化干し」についてご説明します。
文化干しとは
冷風乾燥のできる機械を使って、干す手法を「文化干し」と呼びますが、最初の文化干しが誕生した頃は、意味が違いました。当初は、干物の梱包方法を表していたのです。現在でも、そのなごりでセロハンに巻かれた干物を表すときもあります。なぜ、ふたつの意味の文化干しがあるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
文化干しの由来①
1950年頃の干物の梱包方法といえば、木の箱や新聞紙に包むのが一般的でした。しかし、東京の水産物加工会社が、セロハンに魚の干物を包んで販売を始めたのです。セロハンで包んだ干物は、見た目の変質もなく、うま味成分が凝縮されていました。セロハンの梱包方法が、とても画期的という意味で「文化的」だと評判になり、文化干しと呼ばれたのです。
文化干しの由来②
最初の文化干しが誕生してから、5年ほどたったころに、機械で干物を作る方法が考えられました。それまでの干物の作り方は、太陽の光や自然の風に当てて作る天日干しが多かったのです。冷風乾燥のできる機械を使った方法が天日干しとは違い、「文化的」だと表現されました。よく店頭でみかける現在の「文化干し」です。
天日干しの対義の意味にもなる
天日干しは、自然の力をかりて干物を作る方法です。現在では、機械で人工的に干物を作る方法が一般的になりました。おいしく仕上がるうえに、時間短縮や効率的なためです。天日干しの対義の意味として、機械を使って乾燥させる手法そのものを文化干しといいます。
文化干しに使われる魚
どんな魚でも、たいてい干物にできます。水分が多く身が柔らかいものや、脂がのっている魚は、特に風味がよいでしょう。文化干しには、脂がのった「さば」を使うことが多いです。さばは他の魚に比べて傷むのが早いため、保存食の役割もある文化干しにするには最適です。