汲み取り式トイレをリフォームする前にトイレの構造を確認しよう
くみ取り式から水洗式にリフォームするには、下水道式と浄化槽式の水洗トイレの構造を理解しておく必要があります。ここでは、汲み取り式も含めトイレの構造を確認しておきましょう。
トイレの構造は3種類
下水道
日本下水道協会によると、平成30年度の全国の下水道普及率は79.3%とされていることから、多くの家庭で水洗式トイレを利用していると言えます。水洗トイレは配水管を下水道管に直接つなげる構造で、配管の工事が必要です。工事は専門の資格が必要で、知識があっても勝手に工事を行ってはいけません。
浄化槽
下水道が通っていないエリアでは、浄化槽を設置する必要があります。浄化槽設備は合弁処理浄化槽を設置し、トイレ以外に台所やお風呂場などの水回りから流れる排水のすべてを処理する構造です。耐用年数は一般的に約20年~30年といわれています。ただし、臭いのトラブルや虫の発生リスクがある点に注意が必要です。なお、下水道が整備されて供用が開始されたら3年以内に下水道へ接続しなければなりません。
汲み取り式
いわゆるボットン便所と呼ばれているのが汲み取り式です。
トイレリフォームにかかる料金は?
和式の汲み取り式トイレから洋式の水洗トイレへのリフォームでは、汲み取り式で使っていたタンクを撤去し、浄化槽タイプにするなら浄化槽の設置料金、下水道へ接続するなら配管工事料金がかかります。このほか、内装工事や電気設備工事もあるので、具体的な料金について見ていきましょう。
一般的な費用内訳
撤去費用
既存の汲み取り式トイレを撤去するための費用で、業者に依頼した場合は2万円~3万円程度かかるといわれています。くみ取り式便器の取り外し自体はDIYでも可能ですが、タンクの撤去は地面を掘る必要があるため業者に依頼するのが一般的です。配管工事のことも考えると、便所のタンクの撤去は業者に依頼するのが無難でしょう。
配管工事代
料金は1mあたり2万円程度が相場で、長くなるほど業者ごとに決められた追加料金が発生します。
洋式トイレにするための給排水配管工事は、それぞれの工事で以下の資格が必要です。
・給水装置の工事…給水装置工事主任技術者
・排水管の工事…下水道排水設備工事責任技術者
・浄化槽の設置…管工事施工管理技士
資格取得には実務経験が必要で、簡単に取得できる資格ではありません。
便器代
洋式トイレの便器は種類が豊富で、料金の幅も広いです。簡易水洗式やホームセンターで購入できる便器は比較的割安で、便器とタンクがセットで3万円を切るような製品もありますが、せっかくなら最新機能を備えた便器にリフォームしたいと思う人は多いでしょう。上を見ればキリがありませんが、高いものでは40万円以上する製品も販売されています。どのような機能がほしいのか、じっくりと検討して選定しましょう。
内装代
トイレの内装は、すべてDIYで完結できます。床組は大工さんにお願いするとして、天井クロスや壁紙の張替えは、初めての人でも決して難しいものではありません。一般的な相場は、大工さんに依頼する床組に2万円~6万円がかかり、シート材を使うよりもフローリングのほうが料金は高い傾向です。そして、DIYで行う天井と壁紙の張替え、巾木の取り付け、窓枠の塗装に1万5,000円程度かかるので、内装工事の総額は4万円~8万円程度は見ておきましょう。ただし、電気設備の位置を変える場合は電気工事士の資格が必要で、素人が勝手にできるものではありません。
結局いくらかかるの?
洋式トイレへのリフォームを業者にすべて依頼した場合は最低でも20万円以上、場合によっては100万円以上の料金がかかると考えておいたほうがいいでしょう。すべての工事において資材のほかに人件費がかかってしまうので、料金はどうしても高くなってしまいます。もちろん、プロの施工による仕上がりはきれいですが、手先が器用な人ならDIYでリフォームするのもおすすめです。
汲み取り式トイレのリフォーム手順①トイレの設計
くみ取り式から洋式トイレにリフォームするには、タンクの撤去、給排水配管工事、電気配線工事以外はDIYでもできます。トイレのタイプには簡易水洗もありますし、内装の仕上げもじっくりと考えたいところです。せっかくなら、理想のトイレに作り上げられるように、設計から家族で考えてみましょう。
設計の方法
全体のイメージを決める
まずはトイレをどのようにしたいのか、具体的にイメージしてトイレのデザインを決めていきます。マイホームのトイレはプライベートの空間とも言えますので、家族の意見も聞き入れて決定しましょう。特に壁紙の色は意見が分かれるところですが、住宅全体のイメージとかけ離れるとトイレだけが浮いた存在になりかねませんので、気をつけましょう。
トイレのタイプを決める
洋式の水洗トイレといっても、下水道に直結するのか、浄化槽を設置するのかで工事料金は変わってきます。便器も水洗式にするか、簡易水洗式にするかで使用感や費用に違いがあります。排水については住宅の立地条件に左右されるところですが、便器のタイプについては家族の意見を取り入れて決めましょう。
資材の費用を計算する
どのようなトイレにするのかが決まったら、必要な費用を計算します。業者に依頼するべき費用とDIYでおこなう費用は、別に計算しておきましょう。業者に依頼する部分は、複数社に相談して料金を比較することはもちろんですが、対応力の見極めも大事です。DIYで工事する部分はホームセンターなどの料金を参考に計算するとよいでしょう。
汲み取り式トイレのリフォーム手順②解体
くみ取り式便所の解体は、その構造を押さえておけば素人でも難しい作業ではありません。ただし、注意点もあるので確認しておきましょう。
便器本体の解体
汲み取り式トイレの解体は簡単
くみ取り式の和式便器本体を外す際は、便所の床の解体も同時におこないます。便器本体は床の構造材と床板によって支えられているだけというのが一般的なので、先に床板を剥がしてから便器を取り外します。便器を外したあとは、ボットン便所特有の臭いが上がってこないように蓋をしておきましょう。
作業は意外と苦労する場合もあり
便器の取り外し自体は簡単ですが、問題は作業スペースです。一般的にトイレは住まいの中でも狭いスペースですから、作業に手間取るかもしれません。臭いとホコリが溜まりやすいので防塵マスクやメガネを使うようにしましょう。便器の解体後は、タンクの撤去、配管工事へとつながります。解体時にゴミが出た際は、できるだけ片づけておくと業者もスムーズに撤去作業に入れるでしょう。
汲み取り式トイレのリフォーム手順③内装の変更
内装の変更は配管工事後におこないますが、既存のくみ取り式便所の解体と併せて、古い内装材を撤去しておいたほうがゴミの処理がしやすくなります。ここでは電気設備の交換も含め、内装の変更における作業方法と注意点を具体的に見ていきましょう。
壁紙の張り替え
既存の壁紙を剥がすときは、天井から床に向けて剥がすようにします。床から剥がしてしまうと床に古い壁紙が溜まってしまい、脚立を思うように立てられず作業がはかどりません。新しい壁紙を貼る前には、壁材の凹凸を滑らかにするために下地調整をおこないます。下地調整を疎かにしてしまうと、新しい壁紙に下地の模様などが浮き出てくるおそれがあります。
天井クロスの張り替え
意外と重労働なのが天井クロスの張り替え作業です。既存の天井クロスを剥がすために常に腕を上げておかなければなりませんし、のりを付けて天井に貼り付ける作業は力が必要です。慣れない姿勢で行う作業は、壁紙を貼るときよりも空気が入りやすくなる点にはくれぐれも気をつけましょう。
電気設備の交換
トイレリフォームに合わせてトイレの照明機器を交換しましょう。デザイン性を重視するなら、トイレ以外の照明とのマッチングを考慮するのがおすすめです。機能を重視するなら、センサーで照明のオンオフができるタイプや、消臭機能が付いた照明にするのもいいでしょう。このような照明機器の交換だけなら素人でもできますが、スイッチの交換や配線の工事は感電するおそれがありますし、誤った配線により火災を起こすリスクもあるので、電気工事店に依頼するのが無難です。
汲み取り式トイレのリフォーム手順④便器の取り付け
いよいよ便器の取り付け作業に入ります。DIY初心者でも難しい作業ではありませんが、水漏れが発生しないように確実に施工することと、便器を傷つけないように気を配りながら作業を進めましょう。なお、工事の進め方は簡易水洗式でも同じです。
工程は3ステップ
止水栓の取り付け
立ち上がりの配管まで設置してもらったあとは、まず止水栓を取りつけます。先に止水栓を取り付ける理由は、便器が邪魔になって止水栓を取り付けるのが難しくなってしまうほか、設置不良による水漏れが起こるリスクが高まってしまうからです。止水栓にシールテープを巻いて水漏れが起こらないように確実にしめ込みましょう。
便器本体を設置する
止水栓を取りつけたら、購入した便器を設置します。排水ソケットのパッキン部分と便器本体の穴を合わせて設置するだけなので、難しい作業ではありません。まずは便器を仮設置して、便器を固定する位置を決めます。便器をいったん取り外して付属のビスを打つ穴を決めたら、もう一度便器を設置して動かないようにしっかりと固定します。
トイレタンクを取り付ける
説明書を確認しながら給水ホースを取り付けたあと、便器とタンクを合わせます。タンクと便器はナットで固定しますが、どちらも陶器で出来ており、締め付けが強すぎると破損してしまう場合があるので気をつけましょう。取り付けが完了したら、ぐらつきがないか確認してください。
汲み取り式トイレのリフォーム手順⑤最終チェック
動作確認をする
正常に作動するか
新しい便器を設置したら、すべての機能を作動させて正常に動くか確認しましょう。正しく設置して配線も正確に繋げていれば問題なく動くはずですが、機器の不良で動かないことがあるかもしれません。電池の入れ忘れでウォシュレットのリモコンが動かないなどのありがちなミスもあるので、注意しましょう。
水漏れはないか
水回りのDIYリフォームでありがちなのが水漏れです。しっかりと接続できていなかったり、パッキンを正く取り付けていなかったりすると水漏れの原因になりやすいので注意しましょう。水漏れしている箇所を確認したら、まずは止水栓を閉めて管の中に入っている水を抜き取り、管の外側に付いた水も拭き取ったうえで正しく繋ぎます。必要に応じてシール材を使い水漏れがないようにしましょう。
まとめ
くみ取り式のボットン便所から洋式の水洗トイレへのリフォームは、DIYでもできます。業者でなければ出来ない工事もあるため、すべてをDIYで完結させることはできませんが、費用を節約できるメリットは見逃せません。家族の意見も取り入れた満足度の高いトイレリフォームをしてみてはいかがでしょうか。