「上がり框」とは?真似したくなる玄関の段差アイデアも5つご紹介!

「上がり框」とは?真似したくなる玄関の段差アイデアも5つご紹介!

「上がり框」は日本建築の専門用語で、聞き慣れない方もおられることでしょう。しかしその意味を紐解いてみると、新しい発見や気付かされることも多々あるものです。こちらでは玄関の上がり口「上がり框」にフォーカスして解説していきます。

記事の目次

  1. 1.はじめに
  2. 2.「上がり框」とは
  3. 3.建築基準法の取り決め
  4. 4.アイデアに富んだ「上がり框」5選
  5. 5.まとめ

建築基準法の取り決め

出典: https://pixabay.com/ja/photos/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC-%E6%9B%B8%E7%B1%8D-%E6%B3%95%E5%BE%8B-%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80-620011/

建物である以上、日本では「建築基準法」に則って建てられなければなりません。「上がり框」も例外ではなく、「床の高さは直下の地面からその床の上面までを45cm以上とすること」と建築基準法第二章一般構造第二節第二十二条一号で定められています。

出典: https://pixabay.com/ja/photos/%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97-%E9%95%B7%E3%81%95-cm-2202258/

この45cmというのがクセモノで、分かりやすく言うと、一般的なイスの座面の高さに相当します。そんな高さを毎日昇り降りするのは立派な筋トレですよね。ですから昔の人は、上がり框にさらに一段低い「沓脱石(靴脱ぎ石)」という段差を追加して階段状にすることで楽に昇り降りできるようにしていました。

45cmの取り決めがなかった時代では、さらに高いものもあってのぅ、そうしたところでは、沓脱石が2段階になっていたりしたんじゃ。

昔の人って、頭いいー

建築基準法の但し書き

出典: https://pixabay.com/ja/vectors/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC-%E8%BF%BD%E5%8A%A0-%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88-2517422/

法律は、その取り決めが時代の流れ的に通用しなくなってきたときや、法律を改正するのに十分な時間がなかったりといった大人の事情で、「但し書き」がつくことがあります。先にも述べた建築基準法にも但し書きがあり、「居室の床下に防湿が施される」という条件付きで45cmの制約を解かれるとあります。

今までも防湿処理はされていたんじゃないの?

確かに防湿処理はされてたんじゃが、今の設計に対して防湿という面で言えば効果的とは言えんかったのじゃ。

45cm以上の根拠とは

昔の工法では、防湿シートや断熱材での処理が主流で、換気設備として通風孔が設けられている程度が普通でした。というのも基礎が一定間隔で造りがシンプルなため、当時はそれでも十分な換気能力でした。

常に風通しがよければ、定期的に防虫処理する程度で昔はよかったんじゃなぁ

しかし、時代の流れかデザイナブルな物件が増え始め、設計も凝ったものが流行り出すと、防湿シートの継ぎ目から湿気てしまうことになるなど従来の基礎部分の加工では換気が間に合わなくなります。継ぎ目をテープでふさいでも劣化して剥がれてしまうため、効果は望めませんでした。

出典: https://pixabay.com/ja/photos/%E3%81%AD%E3%81%98-%E3%81%95%E3%81%B3-%E6%9D%AD-%E6%AF%8D-%E3%81%AD%E3%81%98%E8%BE%BC%E3%81%BF-4355586/

その結果、「カビ」「腐食」「シロアリ」の温床となってしまう事例が多発し、ひどい所では建て直しを余儀なくされるなど、深刻な被害もでてきたことから、空調設備で床下の空気を強制循環させる必要が出てきたわけです。

シロアリ、イヤぁあ~

普段見えないところだけに、被害者のショックは計り知れんじゃろぅのぅ。

それには床下の十分な高さと、設計に対応できる換気設備が必要となってきます。そのため、45cmという家に上がることを拒むかのような高さが決まってしまったんですね。

カビは病気の原因になるし、シロアリや腐食は建物を根元からダメにするでのぅ。家主は定期的に検査してもらうのが賢明かもしれん。

バリアフリーについて

出典: https://pixabay.com/ja/photos/%E7%94%B7-%E5%A5%B3%E6%80%A7-%E4%BA%BA-%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85-%E5%BE%92%E6%AD%A9-3199386/

日本は少子高齢化がドンドン進んでいます。そんなお国事情もあり、「バリアフリー」の意識が高まってきました。特にその意識が向けられるのが、住宅などの建物ではないでしょうか。

ワシも近々バリアフリーを考えねばならんと思っておるのじゃ。

ケガして入院なんてしたら、大好きなお酒が飲めなくなるもんね~

核心を突かれると痛いわぃ

建物の平面積全体に防湿コンクリートを敷き詰めた「ベタ基礎」と呼ばれる基礎を採用することで防湿を兼ねる工法の場合、上記の「但し書き」が適用され、上がり框の段差が数センチ、或いはゼロというバリアフリー化が可能となります。

出典: https://allabout.co.jp/gm/gc/29070/2/

10cmの段差も避けて通りたくなるほどの障害となる場合もある高齢者や身体の不自由な人にとって、バリアフリーの意識はとても希望に満ちたものでしょう。その人だけでなく、介護する人や、家族にとっても意味のあるものなのは間違いありませんね。

アイデアに富んだ「上がり框」5選

出典: https://pixabay.com/ja/photos/%E9%9B%BB%E7%90%83-%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%97%E3%83%88-%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%AF-2692247/

玄関の名わき役とも言える上り框は、ここ最近、目覚ましい進化を遂げてきています。「玄関の一番奥にある小上がりした靴を脱ぐところ」は、今や実用性と芸術性が高次元でバランスされている「玄関の輪郭」と言ってもいい位なのかもしれません。ここではそんなリフォームで真似したいと思える代表例をご紹介します。

スタンダードな上がり框

出典: https://www.denhome.co.jp/archives/4167

多くの人になじみ深い、どこか温かみのある玄関を思わせる上がり框です。とはいえ、今は沓脱石を置くほど高い段差は少なく、ベタ基礎、若しくは玄関の外に階段を設けるなどといった設計上で巧く「法律的高さ」を出しているものがほとんどです。それでも古さを感じないものが多く、スッキリまとまっていますね。

匠の業は、こんな「何気ないところ」こそ光るのかもしれんのぅ。

角度付き上がり框

出典: https://www.renoveru.jp/journal/5124

マンションやアパートなどに多い限られた玄関スペースにおいて、斜めに角度を付けることで空間を最大限有効に活用し、おしゃれでスタイリッシュな玄関を演出すると共に、直線状からズレた間取りを繋いで一体感を出すことができます。段違いの間取りでもスマートで、設計の自由度が増した手法と言ってもいいかもしれません。訪れた人にも「さわやかな印象」を感じて頂けるでしょう。

あ、友達の家の玄関、この斜めのタイプだ。おしゃれだと思ってたんだよねー。

このタイプのデザインが出てきたおかげで、マンションなどの「間取りの自由度」が飛躍的に向上したといえるのぅ。

湾曲上がり框

出典: https://www.renoveru.jp/journal/5124

「スペースを贅沢に使う」ということも、スペースを有効に活用するもう一つの選択肢ではないでしょうか。この手法は老舗旅館や、料亭といった「高級施設」が多用することでもよく知られています。そのため、ある一定以上のスペースが必要とされてきましたが、最近では一般家屋にも浸透してきており、人造大理石などの加工が容易な素材が登場したことで省スペースでも高級感を楽しめるデザインが可能となり、人気を呼んでいます。

そう言えば、テレビで紹介されてる老舗旅館とかって、ほとんどの上がり口が湾曲してるものね。

樹木の形をそのまま上がり框に活かしたものもあるのぅ。

バリアフリー上がり框

出典: https://www.k-juken.com/blog/2018/02/08/agari_gamachi/

新築の設計時や、リフォームで「バリアフリー」を意識する人は多いでしょう。それには、建築基準法の定める「但し書き」が適用される、若しくは一定以上のスペースを使うことが条件となりますが、お年寄りや体の不自由な人にとって死活問題レベルの重要事項となりうるものです。

ワシもバリアフリーを考えねばならんようになるとは…歳はとりたくないものじゃわぃ。

「ベタ基礎」で建てられている家屋なら建築基準法の但し書きが適用されるので、バリアフリー化も比較的簡単ですが、そうでない場合は専門の設計士と相談のうえ、計画的に進めていくのが一般的です。

出典: https://home-kensetu.com/nisetai/barrier-free.html

バリアフリーが注目され始めたころは、機能重視なものが主流で、デザインは二の次、三の次な風潮がありましたが、最近では機能面を犠牲にすることなく、洗練されたデザインが喜ばれる傾向にあるようです。おしゃれなデザインの方が魅力的ですからね。

最近のバリアフリーって、おしゃれなものが多いよねー。

収納付き上がり框

出典: https://one-project.biz/2018/09/04/entrance-storage-84.html/%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%8A%E6%A1%86%EF%BC%88%E3%81%8B%E3%81%BE%E3%81%A1%EF%BC%89%E4%B8%8B%E3%81%AE%E5%BC%95%E3%81%8D%E5%87%BA%E3%81%97%E5%8F%8E%E7%B4%8D

都市部での住宅に多い悩みことの一つが、「土地が狭い」ことではないでしょうか。道路や建物が複雑に入り組んでいる都市部特有の立地条件のもと、限られたスペースを最大限活用すべく、設計士は頭をフル回転させます。

これはアイデアだわ。小上がりしたところを収納にしちゃうなんて!

そのノウハウはリフォームでも活かされ、斜めのデザインと共にセンスが光るのが「収納」です。上がり框の上がり口に収納を設けたのもその一つで、まさに技ありのアイデアと言えるでしょう。これにより、省スペースでも無駄なく靴をしまうことができます。

あ!もしかして、沓脱石も収納機能がついたりするのかしら!?

ご明察じゃ。その収納機能がある沓脱石をさらに丸ごと収納できるようにしたものもあったぞぃ。

出典: https://www.tabatakouji.biz/housing/syuunou/

上がり口を収納にリフォームするとは、おしゃれを演出する意味でも合理的じゃのぅ

まとめ

出典: https://www.renoveru.jp/journal/5124

何気ない日常で名も知られず佇む玄関の輪郭「上がり框」の今をご紹介してきました。一般的にはあまり知られていない、マイナーな存在になっていたところ「バリアフリー」の意識が高まったことで今後注目される可能性は大いにあるでしょう。リフォームを検討している方はもちろん、そうでもない方も、この記事が新しい発見の一助になれば幸いです。

toshiminn
ライター

toshiminn

建築系の仕事を生業としていますが、それ以外ではじっくりコツコツと物事を進めるタイプです。二児の父として奮闘中。

関連記事

記事ランキング