ワードローブって何?
みなさん、ワードローブというと、何を思い浮かべますか?インテリアもしくはファッション関係の言葉だろうけれど、普段使わずはっきりと説明しにくい、そういった言葉だと思います。でもこの言葉、実は掘り下げてみると勉強にもなり、面白いのです。この記事では、そんな曖昧に使われている”ワードローブ”という言葉の意味や語源について、ひも解いていきましょう。
ワードローブの意味
日本語辞典でのワードローブの意味
まず、ワードローブという言葉は、日本語ではどういう意味で解説されているのでしょう。辞書の大辞林(小学館)によると、”衣装戸棚”や”洋服だんす”、という意味の一方で、”個人の持ち衣装(全部)”、という服や衣装そのものも示す記述が併記されています。曖昧なイメージなのは、家具と洋服と、両方の意味があるから…でもありそうです。
英語でのワードローブの意味
では、英語であるワードローブは、どのような意味なのでしょうか。プログレッシブ英和中辞典によると、"wardrobe"という言葉は、主にイギリス(英)英語で洋服ダンス、衣装戸棚の意味であり、アメリカでのcloset(クローゼット)と同義です。一方で、日本語辞典と同じく、衣服という意味も記載されています。劇団の衣裳部屋や衣装係、そして劇団の持ち衣装や古衣装の意味合いが強いようですが、それは、ワードローブの語源と関係がありそうです。
wardrobeの意味 - 小学館 プログレッシブ英和中辞典
1CU((英))洋服ダンス,衣装戸棚(((米))closet);〔通例単数扱い〕(特に劇場の)衣装部屋[部,係]2C(個人の)衣服,〔集合的に〕(特別な目的・季節用の)衣服,(個人・劇団の)持ち衣装(⇒clothes[類語]);(古典劇などに用いる)古衣装(costumes)
ワードローブという言葉の語源
では、ワードローブの語源は何なのでしょうか。英語の"wardrobe"という単語は、"ward"という単語と"robe"という単語からできています。このうち"robe"はバスローブという言葉があるように、羽織るような長い衣装を指す言葉です。語源はラテン語の略奪品という言葉から派生したそうですが、フランス語で王族等のドレスやガウンという意味に、英語では裁判官や聖職者などが羽織る特別なガウンの意味になったとのことです。一方、"ward"という言葉は保護するいう語源から来た言葉だそうです。
wordrobeの語源
"wardrobe"は、"ward"と"robe"の語源をそれぞれ合わせると、衣装を保護するもの、という意味が語源と言えます。中世のヨーロッパから来た言葉ですから、中世を舞台にした劇場用語として、今も使われているのが納得できます。衣装を保護するもの=衣装を保管する衣装箱、に使われたことから、保管された「衣装一式」という意味にもなったようです。英語の"wardrobe"が、洋服ダンスと衣装両方の意味が残っているのは、こういうわけなのですね。
ワードローブとクローゼットの違い
英語でのワードローブとクローゼットの違い
ところで先ほど英和辞典で、イギリス英語のワードローブはアメリカ英語のクローゼットと同義、という記述がありました。ではイギリス英語では、ワードローブはどう使い、クローゼットとはどう違うのでしょうか。調べたところ、イギリス英語のコラムで参考になる記事がありましたので、以下に紹介します。
イギリス人は「wardrobe」の中に洋服を収納します。イギリスの家はアメリカの家より比較的狭いので、「closet」(洋服を収納する小さい部屋)というスペースは珍しいです。しかし、家によってそのスペースがある場合にそこは「closet」か「walk-in wardrobe」と呼びます。 | ブリティッシュ英会話より
イギリス英語でのワードローブとクローゼットの違い
この記事によれば、イギリスでは服を(家具としての)ワードローブにしまうことが多いが、アメリカのように(部屋としての)クローゼットをつくる空間がないから、です。イギリスではワードローブは家具、クローゼットは収納部屋として捉えられているようですが、アメリカではどうでしょうか。
アメリカでのクローゼットとワードローブ
アメリカでクローゼットという言葉は、語源の「小さな囲い場所」から派生して、実際は、納戸・食器戸棚も含めた収納の意味として使われているようです。つまりアメリカ英語でのclosetは、イギリス英語でのワードローブやカップボードも含めた、広い意味で使われています。一方、ワードローブの具体的な使い方は見つけることができませんでした。
closetの意味 - 小学館 プログレッシブ英和中辞典
1((特に米))(食器・衣類などを入れる)戸棚,押し入れ,クローゼット(((英))cupboard)
2((古))(祈り・応接などのための)私室,小室;(水洗)トイレ(water closet)
日本語でのクローゼットとワードローブの違い
日本語でのクローゼットという言葉とワードローブ
日本でも、収納といえばクローゼットの方が一般的な呼称です。クローゼットについては、辞書「大辞林」にアメリカ英語に近い意味が記述されていますが、伝統的な”押し入れ”とは違う、床から天井まで大きく使える造り付けの収納の意味です。中に歩いて入れる部屋状の収納場所となると”ウォークインクローゼット”となりますが、イギリスでは”ウォークインワードローブ”と呼ぶので、面白いですね。では日本で、ワードローブという言葉は、具体的にはどう使われているのでしょうか。
クローゼット【closet】|大辞林 第三版
① 衣類などを収納する戸棚。クロゼット。
② 便所。洗面所。クロゼット。
③ 秘密にすること。特に自分のセクシュアリティーを秘密にする場合に多く用いられる。
日本でのワードローブという言葉の使われ方
ワードローブという言葉の使われ方 ①衣装収納家具
家具や収納としてのワードローブという言葉は、収納空間としてのクローゼットという意味よりも、衣装を主体とした意味が強い言葉です。衣装を保管するのに特化した、吊パーツや引き出しパーツを備え、通気のよいガラリ戸を扉に使うというように、より衣装を保管する意図が明確な家具を指します。造り付けの場合もあるかもしれませんが、衣類収納パーツの集合という意味での家具を指すと言えます。
ワードローブという言葉の使われ方② 衣装デザインのコーディネート一式
また一方現在の日本では、ワードローブという言葉は、ファッション用語やデザイン用語としても使われて続けています。季節に合った衣装デザインのコーディネートやコレクション一式を指しています。英語の語源の衣装一式、から来ているのでしょう。ファッションの先端地のフランスでは、男性の正装がズボンとなった後も、女性のワンピース状の礼服の意味として"robe"という言葉が今に残っているそうです。そのフランス語がファッション用語として名残に貢献しているのかも知れないと考えると、言葉って奥が深いですね。
ワードローブまとめ
ワードローブという言葉の意味や語源、使われ方について解説しましたが、いかがでしたか?日本では、インテリア用語としてだけでなく、ファッション用語としても使われているワードローブという言葉。英語での意味や語源、イギリスやアメリカでの使われ方の違いを知ると、その言葉のニュアンスや歴史が感じられて面白いです。ぜひワードローブという言葉を、味わい深く使ってみて下さい。