バトニングとは?
バトニングとは「斧ではなくナイフを使った薪割り」のことで、キャンプ用語の一つです。薪割りというと斧を連想しますが、バトニングは細い薪を作る作業を差すので使用する刃物はフルタングのナイフです。割った薪は炭にしたり、焚き火の際に用います。バトニングのやり方を覚えることで、よりサバイバル感のあるキャンプやブッシュクラフトを楽しむことができます。
斧で割った薪をさらに割る作業がバトニングです
斧で作った薪をさらに細かく割る作業がバトニングです。斧はパワーがある分大雑把で、木を切り倒したり丸太を割って直径5~10cm程度の太さの薪を作るには斧が有利なのですが、キャンプやブッシュクラフトでさらに着火しやすい細い薪を作りたいときにはナイフの方が小回りが利きます。そのため、バトニングにはナイフが使われるのです。
ブッシュクラフトとはどんなスタイルのキャンプ?
ブッシュクラフトとは、「できるかぎり自然にあるものを使ってサバイバルするアウトドア」のことで、キャンプの一種です。ブッシュクラフトでは焚き火は煮炊きだけでなく体温を維持する手段として大変重要視されています。バトニングを覚えることで、斧がない状況や斧を使って割った薪が無いシーンでも枝や枯れ木を薪に工夫して焚き火をつくることができます。
バトニングのやり方手順
①薪割りのセッティング
まずはバトニングのセッティングをします。セッティングをせず砂や岩の上で薪割りをするとナイフが傷みやすいデメリットがあるためおすすめしません。必ず木切れや切り株など平らでナイフにやさしい土台の上に薪を置いてバトニングをするようにしましょう。
念のため軍手の装着がおすすめです
バトニング中に木のとげが刺さると痛いので、軍手などで手を保護してバトニングを行うとよいでしょう。軍手をはめることで、ナイフの刃によるちょっとした怪我の予防になるメリットもあります。人里はなれたキャンプ場から病院に駆け込むのは難しいので、刃物を使う際はいつもよりも注意しましょう。
②ナイフの重心部分を薪に当てる
ナイフを利き手の反対側に持ち、薪の上部に押し当てます。重心がよくわからない場合は、中心よりも持ち手に近い方でよいでしょう。ナイフの向きは刃の切れる方が下になります。割る薪にナイフをぎゅっと当てて少し差して固定してもかまいません。
必ずフルタングナイフを使いましょう
理由は後述しますが重大事故につながる危険性があるため、バトニングにはモーラナイフや折りたたみナイフを使うのはやめてください。バトニングには必ず持ち手と刃が一体成型のフルタングナイフを使いましょう。
③薪でナイフを叩き薪を割る
利き手に余分な薪を持ち、ナイフの刃の背を叩いて薪を割ります。力を込めて複数叩くのがポイントで、ノミと金づちの要領を思い出すとよいでしょう。細い方が焚き火でよく燃えるので、指の太さを目安にすると完成イメージがしやすいです。薪を細く割っていきましょう。
④フェザースティックを作る
焚き火の焚き付け用に、新聞紙や着火剤を使わずにフェザースティックを作る方法もあります。フェザースティックとはメタルマッチなどでも焚き火が燃えやすいように、薪の表面を鳥の羽のように薄くスライスした薪のことです。鉛筆削りやゴボウのささがきの要領で、モーラナイフを使っても作ることができます。
バトニング手順の参考動画
プロの動作を確認するとイメージがわきやすいのでバトニング初心者は動画を見るのがおすすめです。こちらの動画ではバトニングの薪割りとフェザースティック作りの実演が冒頭3分以内に収録されているため時間のないときでも確認できます。
バトニングしやすいナイフの選び方
①必須条件は「フルタング製法」
フルタング製法とは、ナイフの製法のひとつで刃の鋼材が持ち手部分まで一体成型になったナイフを差します。持ち手部分にまで鋼材が入っていることで丈夫になり、万が一持ち手が壊れたときにも刃が飛び出してくることがありません。フルタング製法のナイフを選ぶときは「シースナイフ」と記載のあるナイフを選ぶとよいでしょう。
モーラナイフはフルタング製法ではありません
使いやすいためアウトドア万能ナイフとして人気があるモーラナイフですが、一般的に刃とグリップが別成型でフルタング製法ではありません。焚き火作りにどうしてもモーラナイフを参加させたいときは、フェザースティック作りに使うとよいでしょう。
フルタングかわからないときは重心を見る
パワーが必要な薪割り作業に必須のフルタングのナイフですが、手持ちのナイフがフルタングかわからないときは重心を確認しましょう。フルタングのナイフは持ち手まで鋼材が入っているため、フルタングではないナイフに比べて重心が後ろにあります。
②刃に厚みがあるタイプを選ぶ
刃に厚みがあるタイプはゴツくて重く、かさばるため持ち歩きしづらいデメリットがありますがバトニングが主目的の場合は厚いナイフを選びましょう。ナイフが切り込んだ後のバトニングのしやすさは厚みで決まります。
コンベックスグラインド刃がバトニングしやすい
グラインドとは刃の断面形状のことです。バトニング用ナイフを選ぶ際は、刃の断面形状が若干船形になったコンベックスグラインドがおすすめです。切れ味はいまひとつですが、耐久性があり切り開く力が強いのでバトニングしやすくなります。ナイフを選ぶ際にたびたび登場する専門用語「はまぐり刃」とはコンベックスグラインドのことを差します。
スカンジグラインド刃もおすすめ
やや丸みのある刃が特徴のコンベックスグラインド刃と異なり、スカンジグラインド刃は直線状に刃が研がれている特徴があります。スカンジグラインド刃のナイフはコンベックスグラインド刃よりも切れ味がよいのが特徴です。また、もし切れ味が落ちたときにも研ぎなおしがしやすい特徴もあり、メンテナンスしやすいためこちらもおすすめです。
バトニングに不向きなナイフ紹介
①モーラナイフ
モーラナイフとは刃渡り10cm前後で樹脂製などの持ち手がついたナイフです。調理や木を削るなどに便利な万能アウトドアナイフといえばモーラナイフというほどメジャーなナイフですが、持ち手の途中までしか刃が入っていません。薪割りの衝撃で樹脂の持ち手が割れると刃が飛び出す恐れがあり危険なため、バトニングには向きません。
モーラナイフでは軽すぎることもデメリットです
おすすめできない一番の理由は危険だからですが、そもそも刃が薄く軽量なためバトニングにはおすすめできません。モーラナイフはパワーが必要な薪割り作業よりも、調理やフェザースティック作りに使うとよいでしょう。
②折りたたみナイフ(フォールディングナイフ)
折りたたみナイフとは携帯時に刃を折りたたみ、持ち手に収納ができるナイフのことで「フォールディングナイフ」とも呼ばれます。携帯性に優れたメリットがあるためアウトドア用に人気ですが、こちらもバトニングにはおすすめできません。留め具で支える形状のため強度が弱いデメリットが理由です。薪割りの衝撃で持ち手と刃が分離した場合、大怪我につながる恐れがあります。
フェザースティック作りになら使用可能です
不向きなナイフで焚き火作りに参加したいときは、フェザースティック作りを行うとよいでしょう。フェザースティックとは、薄くスライスした薪のことで焚き付けに使います。木工に使えるナイフならどのナイフでもフェザースティックを作ることができますよ。
③調理用ナイフ
薪割りに使おうとする方は少ないかと思いますが、調理用ナイフもバトニングにはおすすめできません。調理以外の目的で使用することが想定されていないので刃や持ち手が砕けると危険です。キャンプの荷物を最小限にとどめたい気持ちはわかりますが、思わぬ事故につながる恐れがあります。絶対にやめましょう。
④ツールナイフ
折りたたみナイフの一種で、さまざまなツールがセットになったタイプのものも当然、薪割りにはおすすめできません。そもそもこれでバトニングしようと思う方は少ないかもしれませんが、強度に問題があるのが理由です。また刃の薄いナイフは切り開く力を伝えにくいデメリットもあります。
バトニングおすすめナイフ紹介
①シースナイフ
シースナイフとは、刃と持ち手の部分が一体成型のフルタングナイフ全般を差します。折りたたみはできないので、収納や持ち運びの際には革やプラスチック入り布ケースなどで刃をくるんで保護します。バトニングやフェザースティックも作りやすく、パワーが必要な作業におすすめです。サバイバルアイテムとしてキャンプやブッシュクラフトに持っていきたいナイフです。
②ブッシュクラフトナイフ
装飾で選びがちなナイフですが、用途で選ぶならブッシュクラフト愛好家のためのナイフが選びやすいでしょう。こちらのナイフはシースナイフで刃の形状は力を薪に伝えやすいコンベックスグラインドです。バトニングがしやすくなれば焚き火の準備がしやすくなるためナイフは用途をポイントに選ぶのがおすすめです。また安全に持ち運ぶためのベルトつきの鞘もセットになっているところも安心です。
③ハンターナイフ
バトニングにはハンターナイフもおすすめです。ハンターナイフは狩猟後の解体を主としたナイフですが、フルタング構造のタイプが多く、バトニングにも使うことができます。薪割り用に使いたい場合はなるべく刃に厚みがあり、スカンジグラインドのものを選ぶとよいでしょう。
まとめ
今回は、焚き火のためのナイフを使った薪づくり「バトニング」のご紹介でした。キャンプの醍醐味ともいえる焚き火ですが、バトニングを行うことで太い薪よりも燃えやすい薪になり、火付けがしやすくなります。アウトドア人気とともに、よりサバイバル感を楽しむブッシュクラフトが注目されています。キャンプライフをランクアップさせるヒントになれば幸いです。