壁塗りは自分でできる
自然素材が定着してきた昨今、自宅の壁も塗り替えて心地よい空間を作りたいと考える人は多いでしょう。「人気の素材の珪藻土や漆喰に塗り変えてみたいけれど、専門業者に頼むとお金がかかりそう」と悩んだなら、DIYにチャレンジするのがおすすめです。プロに頼むのも一つの選択肢ですが、道具などもホームセンターで気軽に揃えられるため、自分でも壁塗りは可能です。
珪藻土と漆喰の基本情報
壁塗りの素材として人気があるのが、自然素材の珪藻土と漆喰です。珪藻土も漆喰も見た目や用途は似ていますが、大きな違いがあります。
珪藻土とは
珪藻土は、海や湖に堆積した粘土状の土で、藻の一種である「珪藻」の殻が化石化したものです。珪藻の殻は二酸化ケイ素でできており、珪藻土の成分の大部分を占めています。珪藻土の大きな特徴が、10億分の1cmという小さな小さな孔(あな)がたくさん空いている点です。消臭効果で有名な炭の550倍空いているといわれています。
漆喰とは
漆喰は、水酸化カルシウム(消石灰)を主原料としています。サンゴが非常に長い年月をかけて大陸プレートとぶつかり地殻変動を起こし、隆起した石灰岩から石灰石を採掘し、さらに焼いて水を加えたものが消石灰です。これに海藻糊を加え水で練ったものを漆喰といいます。つなぎで使われる糊は、主に繊維質のものが利用されますが、その種類は地域によって異なります。
珪藻土と漆喰のメリット&デメリット
自然素材として人気のある珪藻土と漆喰ですが、メリットもあればデメリットもあります。DIYにチャレンジする前にそれぞれのポイントや特徴の違いを押さえておけば、壁塗りの素材を選ぶ際にも役立ちますね。
珪藻土のメリット
珪藻土のメリットは、小さな孔が無数にあることによって可能となる調湿効果です。実は、漆喰よりも高い調湿効果を誇っています。さらに微細孔がにおいを吸着し除去するため、消臭効果がある点も魅力でしょう。また、耐火性にも優れており、もし燃え移ったとしても有害物質を出しにくいという利点もあります。
珪藻土のデメリット
珪藻土の大きなデメリットの一つが、乾いた後に壁がボロボロと落ちる可能性が高い点です。また、触ると白くなる点も問題として挙げられるでしょう。この2点から掃除が大変になるといったデメリットもあります。そのほか、カビが湧きやすいことや、ひび割れが起きやすいといった声もあるのが現実です。
漆喰のメリット
漆喰も珪藻土同様、調湿効果がある素材です。漆喰の原料の消石灰は、二酸化炭素を吸収し、100年を超えるような長い年月をかけながら石灰石へと戻っていきます。このように漆喰が呼吸することで、夏は湿気を防ぎ、冬は乾燥を防ぐのです。また、アルカリ性のため、カビや細菌を分解する力があり、シックハウス症候群に効果を発揮します。珪藻土と同じく耐火性にも優れ、古くは城壁や、蔵にも使用されていました。
漆喰のデメリット
漆喰の特徴として、時間が経つとどんどんと硬くなる点があります。そのため、地震などでひび割れが起きる可能性が高いのがデメリットです。内壁はもちろん、外壁の場合、天気の影響をダイレクトに受けるため、よりひび割れが起きやすい傾向があります。また、水を弾かない素材のため、コーヒーや醤油といった色が目立ちやすいものをこぼすと、浸透してシミになります。
珪藻土・漆喰それぞれのおすすめ箇所
いざ壁塗りをしようと思っても、どの部屋から手をつけたらよいのか悩むかもしれません。珪藻土、漆喰それぞれの個性や違いを踏まえて、どこに塗るのかを選んでいきましょう。
場所によっておすすめの素材は変わる
珪藻土と漆喰には、それぞれ特徴があります。湿気対策、消臭する力、細菌が繁殖しづらいなどのメリットはもちろん、デメリットも考慮すると、塗る場所によってはおすすめとなる素材が変わってきます。
珪藻土を塗るならここ!
珪藻土を塗るのにおすすめなのは、調湿効果や消臭効果を活かせる場所です。
①トイレ
芳香剤などでごまかしてきたトイレのにおいは、珪藻土の消臭効果によって、ぐっと気にならなくなります。また、湿気対策にもおすすめです。
②寝室
調湿効果の高い珪藻土は、乾燥しすぎず適度な湿度を保ってくれます。柔らかな空気で安眠しやすい環境をつくってくれるでしょう。
③リビング
リビングは消臭効果が活かせる場所です。においを気にせず料理を楽しめたり、ペットのにおいにも効果を発揮したりします。
漆喰を塗るならここ!
漆喰を塗るなら、調湿効果やカビの発生を抑える効果を活かせる場所がおすすめです。シックハウス症候群の軽減にもつながります。
①洗面所
どこよりも湿度が高いのが洗面所です。漆喰の調湿効果とカビや細菌を分解させる効果で、清潔なスペースを保てます。
②玄関
靴が多く、湿気が意外にたまりやすい玄関もおすすめです。調湿効果と消臭効果の両方を生かせます。
③トイレ
湿気のある場所といえばトイレも外せません。消臭効果もあり、活用したい場所の一つです。
珪藻土と漆喰の塗り方
壁塗り前はしっかりと計画を立てて、道具などの準備を怠らないことです。塗りたい場所がビニールクロスや砂壁などであれば、それらを剥がし下処理をする必要があります。また、塗る面積をはかり、どれくらいの材料が必要なのかを確認しましょう。必要な道具はどれもホームセンターで手に入るものです。必須アイテムのため、購入漏れがないよう気をつけましょう。
材料・道具
珪藻土・漆喰 | 自然素材のものを選ぶ |
コテ | 先が尖っている剣先コテが使いやすい |
コテ板 | 塗る際に材料を載せる板で、ここから珪藻土や漆喰をコテで取って塗る |
ひしゃく | 練られた素材をコテ板に移す際に使う |
バケツ | 素材を練る際や、使った道具をすぐ洗う際にも重宝する |
攪拌機 | 素材を練る際に使う。練り済みの素材には使わなくてもよい |
マスキング・養生テープ・ マスカー |
養生をする際に使用する |
ブルーシート | 床が汚れないように使用する |
珪藻土の塗り方
手順①養生
珪藻土を塗る前に大切なのは、しっかり養生することです。仕上げをきれいにするためにも、マスキングテープやマスカーを活用して塗る面以外をカバーしていきましょう。
手順②下地塗り
下地材を塗ることも大切なポイントです。下地を塗ることで、珪藻土を塗り終わった後に剥がれ落ちてしまうことを防げます。
手順③珪藻土を練る
いよいよ珪藻土を練っていきます。ダマになりやすいため、しっかりと混ぜましょう。混ぜ終えたら、3分ほど置きましょう。置いている間に水分が馴染んでいきます。その際には、乾燥防止のためにビニールなどをかぶせてください。
手順④塗る
コテを使って壁に塗っていきます。あまり厚塗りをせず、1.2〜1.5mmくらいがおすすめです。多少ランダムになっても、自然素材の味が楽しめるでしょう。
手順⑤養生を剥がす
壁を塗り終えたら、珪藻土が乾く前に養生を剥がしましょう。乾いてしまうと、珪藻土が欠けてしまう可能性があります。1〜2日間、換気をしながら乾燥させたら完成です。
漆喰の塗り方
手順①養生
漆喰も珪藻土と同じく、養生が大切です。手を抜かずに養生をすることは、きれいな仕上がりにつながります。
手順②下地塗り
漆喰塗りでも下地塗りをおすすめします。下地を塗ることで土台となる木からアクが出ることを防げます。
手順③漆喰を練る
漆喰の粉に水を加え、少しずつ練っていきます。ダマにならないようなめらかになるまで練りましょう。
手順④塗る
はじめに薄く塗った後、2時間以上乾燥させます。その後、もう一度塗ると美しい仕上がりが叶います。
手順⑤養生を剥がす
塗り終えたら珪藻土と同じく、完全に乾く前に養生を剥がしましょう。漆喰は日が経つにつれ硬くなっていきます。
DIY壁塗りにチャレンジしてみよう
家の壁は面積も広いため、こだわりたい場所の一つです。一見難しそうな壁塗りですが、道具もホームセンターで気軽に購入でき、楽しくチャレンジできます。まずは小さな面から始めると取り組みやすいでしょう。