とりもちとは何か
とりもちとは、モチノキの樹皮に含まれるゴム状で粘着性がある物質で作られたものです。強力な粘着力が特徴で、かつてはゴムのように伸びたとりもちを木に巻き付け、近づいた鳥や虫を捕獲していました。
とりもちの歴史
江戸時代から由来のあるとりもちは、熊野山中のモチノキから生まれました。とりもちを作る工程期間は長く、春~秋にかけて地道な手順をくり返すことで、とりもち特有の粘りをだすのです。近年ほとんど目にすることがなくなったのは、1971年の鳥獣保護法の制定によりとりもちを使用した狩猟が禁止されたことが要因です。
とりもちの使用については、従来ははご(千本はごを含む。)またはもちなわを使用する方法のみが禁止されていたが、とりもちを板または網に塗布して鳥類を捕獲する方法が行なわれ、鳥類保護上弊害が多いので、これらの猟法を排除するため、今回とりもちを使用する猟法のすべてが禁止されたものである。
昔のとりもちの作り方
とりもちを作る工程は、冬の風物詩でもある餅つきの作業に似ています。ただし、昔のとりもち作りは大変手間の掛かる手順でした。最初に、春~夏の間に剥いだモチノキの樹皮を3カ月ほど水にさらします。それを臼でつき水で洗い流して、再び臼でつきます。この手順をくり返し、ベタベタする懐かしのとりもちがやっと仕上がるのです。
どうしてベタベタするのか
とりもちがベタベタする理由は、とりもちの原料であるモチノキの樹皮自体に粘着性があることと、ねっとりした油脂を含んだ蝋(ろう)の成分が占めているからです。その蝋(ろう)は、ワックスエステルとも呼ばれさまざまな樹皮や果実などからも採取でき、化粧品や医薬品の製造にも使用されています。
現在の「とりもち」製品
とりもちと聞くと、上の画像のようなネズミ捕りを想像するかたも多いのではないでしょうか。ネット通販でとりもちを検索すると「ねずみとりもち」というチューブ状の商品や、害獣を対象としたさまざまな捕獲製品が現れます。現在は、ネズミなどを駆除する製品として「とりもち」という名前が広く使われているようです。
国民的マンガに登場
ドラえもんの道具に「テレビとりもち」というアイテムがあります。テレビに映るモノにとりもちを近づけると、画面からなんでも取り出すことができるという夢あふれる話です。1982年発売、26巻の単行本に掲載されました。高度経済成長期だったこの当時、藤子不二雄先生のとりもちに対する視点が愉快な作品といえます。
とりもちの作り方
できれば、晴れの日に行いましょう。陽光がキラキラ降りそそぐ時間がいいかな。
樹々や風の匂い、鳥のさえずり、とりもち作りのレシピは、懐かしき時間の回想です。
材料
とりもちを作る材料は、強力粉と普段家庭で使われている道具数点だけです。昔のような季節をまたいだ気の遠くなる期間も必要ありません。わずかな時間と手順でできる簡単な作業です。
材料
- 強力粉:計量スプーン 大さじ15mL(4杯)
- 水道水:計量スプーン 大さじ15mL(1.5杯/22.5mL)
- ボール
- ふきん
- ドライヤー
作り方①強力粉と水をあわせる
ボールに強力粉をいれ、水と少しずつ混ぜ合わせるのがコツ!
始めはベタつくが、しだいに丸みが出てくるよ。
ついでに、イーストや塩を加えて、パンも作りたくなるね。
今回は、懐かしい文化を愛でるためですよ。パンは、次回のお楽しみに。
作り方②滑らかになるまでこねて生地を寝かせる
滑らかになるまでしっかりとこねます。赤ちゃんの頬のような柔らかさになったら、1時間ほど寝かせましょう。
作り方③生地をふきんで包んで洗ってもむ
寝かせた生地をふきんで包み、もむように軽く水道水で洗い流します。少しずつ粘り気が出てきます。ここまでくるとほぼ完成です。
おお、子どものころに遊んだ、懐かしいとりもちになってきたゾ。
作り方④乾かしてできあがり
ドライヤーで丁寧に水気を飛ばしてできあがりです。
材料も家にあるモノで、手順もいたってシンプル。本当に簡単です!
とりもちの入手方法
ひと昔前までは、とりもちは飼鳥ショップや駄菓子屋で購入できましたが、現在ではほとんど目にすることがなくなりました。かつて駄菓子屋で入手できたのは、子どもたちがメジロなどを捕まえる遊び道具としても使っていたからです。社会の価値観の変化と共に風化され、気軽にとりもちを買うことは難しくなりました。
ネットで入手可能
とりもちを店舗で入手することは難しいですが、ネット通販で購入できます。現在のとりもちは捕鳥用としては市販されておらず、とりもちの文字も見当たりません。社会規制の流れで「とりもち」としての商品内容では販売できなくなったためです。商品名のモチと鳥のデザインにとりもちの名残が残っています。
店舗販売していない
とりもちの販売店舗を見つけ出すのは難しいでしょう。店舗へ向かう前に商品があるか確認することをおすすめします。ネズミなどの害獣駆除会社に問い合わせてみてもよいでしょう。
とりもちの注意点
特に小さな子どもがいる家庭は、とりもちの扱いには注意してください。食用のモチと特徴が似ているので、手の届かない場所へ保管しましょう。また、万一ペットがとりもち被害に遭ったら、小麦粉と食用油をブレンドしたものを塗布してください。とりもちの粘着に小麦粉が吸いつき、食用油が剥がしてくれます。
とりもちを使って、捕鳥や捕虫をしてはいけません。法律で禁止されているので、とりもちの扱いは十分気をつけましょう。
持ち歩くときも要注意
とりもちは非常に粘着力が強いのが特徴で、うっかり手につくとベタ付いてなかなか取れません。洋服のポケットや鞄のなかで缶のふたが外れようものなら、目も当てられない大惨事です。とりもち専用の袋などに入れ、ほかのものと直接触れないようにしてください。
いにしえの知恵にふれて
とりもちは、狩猟するにも満足なモノがない時代に先人の知恵で生み出された道具です。現在ではネズミなどの駆除商品としてその名残を残しています。ぜひ現代版のとりもち作りで、世代垣根なく昔の知恵を感じ楽しんでください。
出典:写真AC