カンチレバーの建築用語としての意味
カンチレバーは一方が固定され、もう一方が自由な構造をしています。日本では一般的に「片持ち梁」のことをカンチレバーと呼び、建築用語として多く使われています。以下に、カンチレバーの建築用語としての意味をご紹介します。
建築用語としての意味
クリムキンイーグルは元々カンチレバー(cantilever)って呼ばれてるけど、カンチレバーって何?と思ったら、「片持ち梁」のこと。英語の発音だと「キャンテリーヴァ」に近い。一端が固定され、他端は動くことができる構造。水泳の飛び込み板が分かりやすい。建築だと空中に張り出したこんな構造。 pic.twitter.com/td1BmBOzjz
— Macha (@Macha_FS) March 10, 2018
カンチレバーは建築の場では「キャンチレバー」や「キャンチ」と呼ばれることが多く、日本では片持ち梁の意味で使われることが多いです。片持ち梁とはどのようなものでしょうか。
片持ち梁(かたもちばり)とは?
神奈川県 江之浦測候所
— 建築学生の呟き (@rninopon) January 17, 2020
建物全体が現代美術作品として展示されている。夏至の日ノ出だけ光が通り抜ける角度になっている。
ちなみにガラスは自立していて、屋根はすべて片持ち梁とのこと(接続はしている)。 pic.twitter.com/GwLxMRfJUY
通常の梁はその両端の柱などで支えられています。しかし、片持ち梁は一端が固定されて他端が自由な状態の梁になっているためたわみやすいです。特に、建物の軒先や玄関のひさしなどに採用されることが多く、壁面や柱からせり出した状態で下に空間が生まれます。
カンチレバーの構造
カンチレバー工法を採用すると、具体的にどのような構造物が造れるのでしょうか。以下に、カンチレバーの構造をご紹介します。
構造①梁の一方が受ける負担が大きくなる
鉄筋コンクリート構造でカンチレバー工法を用いると、時間経過とともにコンクリートがひずんで次第に垂れてくることがあります。これは強度だけの問題ではなく、適切な防水処理などを施し慎重に設計・施工することが求められます。また、片持ち梁の場合、梁が受ける力の大きさは梁の先端より根元にいくほど負担が大きくなります。
構造②端部の変形が大きくなる
カンチレバー工法では変形量が大きく、いかに梁の力の負担や変形を小さくするかがポイントになります。建築基準法ではカンチレバーの梁で2.0mを超えるときは、鉛直震度を考慮したうえで設計する必要があり、鉛直震度とは垂直方向に作用する荷重です。
構造③端の曲げモーメントが大きい
新幹線のカチカチのスジャータアイスクリームと共に提供されるプラスチックスプーンは、深く掘り込むための強い力に対応できるよう、曲げモーメントが最大になる柄の根元に向かってテーパーして断面が大きくなり、さらに2本のリブで補強されている超合理的な形状。 pic.twitter.com/W7FUt7XEK7
— EMURA Tetsuya (@emuratee) December 18, 2019
カンチレバーは片持ち構造のため、梁の端の曲げモーメントが大きくなります。曲げモーメントとは物体を曲げて変形させようとする内側の力の作用のことです。カンチレバーは普通の梁と比較すると4倍の曲げモーメントになります。
構造④斬新で開放的な空間が生まれる
カンチレバーを用いることで、足場が作りにくい場所に橋を作ることが可能です。そして、 片方のみを固定するという特性を生かし、住宅の下に開放的なスぺースを作ったり特徴的で斬新な構造物の建築が可能になります。
構造⑤特徴を生かした長スパン構造物
カンチレバーの特徴を生かして作られたカンチレバー橋は、さまざまな地形条件や制約を受けながら、これまで数々の長スパン橋が造られました。橋によって施工方法はさまざまですが、基本的な工法プラス独自の技術を取り入れて施工されています。今後もカンチレバーの特徴を思う存分活かした構造物が増えていくでしょう。
カンチレバー工法の橋の施工例
長スパン構造物であるカンチレバー橋は、2016年7月現在世界で約2,700橋あります。以下に、カンチレバー工法の橋の施工例を2つご紹介します。
①浜名大橋(静岡県)
「浜名大橋」は静岡県の浜名バイパスのほぼ中央にあります。全長が630.0mで5径に渡って連続するプレストレストコンクリート桁構造の橋です。中央の径間長が240mあり、中央径間の中央にヒンジ(ちょうつがい)を採用し、桁に無理な力がかからないような造りになっています。もっとも高い中央径間の橋脚上の厚さは13.7mです。
②神都高千穂大橋(宮崎県)
宮崎県高千穂町の逆ランガーアーチ橋「神都高千穂大橋」です。神都高千穂大橋は全長300m、高さが115mあります。さらに、アーチスパン143.0mと日本最大の高さで、トラス張出し架設工法採用です。張出し工法とは橋脚上から場所打ち、またはプレキャストブロックを接合し、左右バランスをとりながら張出していく工法のことをいいます。
まとめ
カンチレバーの意味や構造をご紹介しました。カンチレバーはもともと建築物や橋などに使われていた工法でした。しかし、片方を固定しもう片方を自由に動かす構造を利用し、最近はこだわりのある椅子などの家具にも採用されているようです。今後もカンチレバーは進化し、さまざまなアイテムに採り入れられるかもしれません。
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出典:Pixabay