ヒヌカン(火の神)を祀るタイミングとは?
それでは「ヒヌカン(火の神)」はどんなタイミングでお祀りするものなのでしょうか?沖縄では、ヒヌカンを建てることを「火の神仕立て(ヒヌカンシタティ)」といいます。近年、沖縄でも時代の流れと共に「ヒヌカン」を祀る家も少なくなってきていますが、今でも根強くる儀式の一つです。「ヒヌカン(火の神)」の仕立て方は、地域やその家によってもそれぞれ違いがありますので、こちらでは基本的な内容をご紹介いたします。
新しく仕立てる場合
「ヒヌカン」は、本来、親から子へと代々受け継いでいくものですが、結婚や独立で実家から分家し、新しく家を建てた場合には、「ヒヌカン(火の神)」を新たに仕立てる必要があります。その際には、神様が宿っているとされる、実家にあるウコール(香炉)の「ヒヌカンの灰」を貰って「分家」するのが一般的です。しかし、近年の住宅事情や時代の流れにより「実家にウコールの灰がない」という話も多くなっています。その際には、神様をお迎えしなくてはなりません。
神様を迎え入れる方法
それでは、実家に「ヒヌカンの灰」がない場合にはどうすればよいでしょうか?実家などから引き継ぐ「ヒヌカンの灰」がない場合には、「ヒヌカン(火の神)」をお迎えしましょう。一般的に最も多いお迎えの方法をご紹介します。
- 新しく灰を購入する。
- 自分の新しく住む地域の御嶽(うたき)に報告する。
- 新しい土地に祀られている火の神様と、ガー(地域の水場)または、ウフガー(産川=自分が産まれた土地の水場)を巡り、ヒヌカンを仕立てたことを報告して、「ヒヌカン(火の神)」に入って頂く。
実家から引き継ぐ場合
沖縄の多くの地域では、結婚したり、実家から独立したり、新しい家で「ヒヌカン」を仕立てる場合には、実家から「ヒヌカンの灰・味噌・塩」をもらって引き継ぐという風習があります。特に、結婚して新たに仕立てる際には、両家の「ヒヌカンの灰」を混ぜて引き継ぎます。その理由しては、相手や自分のどちらかが強くなるのを避けるという意味があるようです。
ヒヌカン(火の神)のまつり方
それでは「ヒヌカン(火の神)」はどのようにお祀りすればよいのでしょうか?沖縄の地域によっても、まつり方が違う場合がありますので、こちらでは一般的なまつり方をご紹介します。
祀る場所
まず最初に「ヒヌカン」をお祀りする場所についてですが、家の中で火を扱う場所といえば、「台所(キッチン)」ですよね。沖縄の一般的な家庭では、キッチンにあるガスコンロの周辺に祀っていることが多いようです。ただし、水のある場所は避けた方がよいと言われています。
置く方向
置く方向としては、昔から「東向きに置く」や「西向きに置く」などの他に、「家の門」や「玄関と向い合せに置く」などがよいとされてきました。現代では昔ながらの沖縄の家と違い、間取りが多様化していることもあり、あまり条件などにこだわらず、手を合わせて気持ちがよければよし、とする家も増えているようです。
必要な道具
次に「ヒヌカン(火の神)」をお祀りするには、どのようなものを準備すればよいでしょうか?実際にお祀りする際に必要な、神具やお供えもの、配置などを詳しく解説していきましょう。
ヒヌカン神具とは?
ヒヌカンをお祀りする際に必要な神具をご紹介します。
- 花瓶…葉を生けるもの
- 香炉(ウコール)…お線香を立てるもの。必ず前日までに塩で洗って乾かしておきましょう。
- 湯呑み…お水を入れるもの
- 盃…泡盛を入れるもの
- 小皿…塩を盛るもの
- ウブク茶碗(三つ)…「ウブク」とは沖縄の言葉で「ご飯」を差します。
- お盆かヒヌカン台…セットを並べる台
どこで購入する?
沖縄では、ヒヌカンを祀るための神具を「ヒヌカンセット」といい、一般的には仏具店で購入することが多いようですが、ホームセンターでも購入できます。初めて「ヒヌカン」を仕立てる場合には、新しいものを購入するとよいでしょう。ヒヌカンセットは、通常売られているものは白い陶磁器がほとんどですが、実はその色や柄などに明確なきまりはありません。他の用途に使わないものであれば、わざわざ「ヒヌカンセット」を購入しなくてもよいようです。
供えるものと配置
次にそれぞれの神具には供えるものや配置がきまっていますので、確認しておきましょう。
- 左奥に花瓶を置き、チャーギやクロトン、榊などの常緑樹を生けます。
- その隣の中央には、ヒヌカンの灰を入れた香炉(ウコール)を置き、沖縄の線香(ヒラウコー)を拝します。
- 手前の湯呑には水、塩を盛った小皿、泡盛などを入れた盃を並べます。
- 一番手前にウブク茶碗を3つ並べます。(毎月1日、15日にご飯を盛って並べます)
拝み方
主に台所を預かる家の女性は、毎朝「ヒヌカン」にお供えしている湯呑のお水を、新しいものに取り替えて拝みます。また、毎月2回、1日と15日には、ウブク茶碗に白いご飯を山盛りにしてお供えします。そして、日々守って頂いていることへの感謝と共に、今後もお守り頂けるよう祈願します。これを沖縄の言葉で1日を「チィタチの拝み」、15日を「ジュウグニチの拝み」と呼びます。
まとめ
今回は「ヒヌカン(火の神)」の由来やまつり方など、基本的な内容をご紹介しました。沖縄では代々「ヒヌカン(火の神)」を家の守り神や、身近な「台所の神様」としてお祀りし、とても大切に守っています。そこにはすべてのものに感謝するという気持ちがあります。時代の流れと共に少しずつ変化している風習ですが、今後もずっと受け継いでほしいですね。今回ご紹介した内容は、沖縄の地域によっても違いがありますが、参考にしてくださいね。
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出典:写真AC