季節や天候をあらわす月の呼び方
昔の人は、今よりもより季節を身近に感じていました。そのうちのひとつが月であり、気温や天気によって、月の表現を変えていました。また「季語」とは、「雪=冬」「桜=春」のように、その言葉一つで季節を表現できるものです。昔の月の呼び方によってどの季節を言っているのか、知っておくとより文学作品を楽しめます。
<春>朧月(おぼろづき)
霧や靄に包まれて、ほのかに霞んで見える月を「朧月」そのような夜を「朧月夜」といいます。春の季語で、多くの歌や俳句などに詠まれています。
<秋>良夜(りょうや)
月が美しい夜のことを「良夜」といいます。特に「中秋の名月」のことを指す場合が多く、秋の季語となっています。秋の季語は「月」に関係するものが多いのですが、晴れて空気も澄んだ季節、より月がはっきりと明るく光るのでしょう。
<冬>寒月(かんげつ)
冬の夜、冷たく冴え渡った空に光る月を「寒月」といいます。冬の季語ですね。日没が早くなってきた冬は、寒ければ寒いほど空気が澄んで、月がきれいに見えます。
<雨>雨月(うげつ)
文学好きの方の中には上田秋成の小説「雨月物語」を連想する人もいるのではないのでしょうか。「雨月」とは旧暦の5月頃のことを指す場合もありますが、天気について言っている場合、雨が多くて月が見えないという意味です。後者の場合は秋の季語で、梅雨のことではないのでご注意を。
<曇>無月(むげつ)
曇り空によって、月が全く見えない状態のことを言います。季語は秋。「雨月」といい、天気が悪くて見えないときも月のことを考えて、表現していたんですね。
見え方をあらわす月の呼び方
月は空にひとつですが、その明るさや色味が日によって違うということに昔の人は気付き、さまざまな呼び方で表現していました。月の見え方の種類と呼び名を知ってみましょう。
月白(つきしろ)
月の出の直前、東の空が白みわたって見えることを「つきしろ」あるいは「げっぱく」と言います。日本の伝統色にもこの名前の色があり、くすんだ青みのかかった白色をしています。
青月(せいげつ)
大気中のチリの影響で、月が青白く見える状態が「青月」です。ブルームーンともいいます。いくつかの偶然が重なって見られる種類の月のため、「奇跡」という意味を持ちます。
月蝕(げっしょく)
地球が太陽と月の間に入る「皆既月食」の状態、あるいは大気にチリが舞って赤く見える月は、「ブラッドムーン」とも呼ばれています。月が大きく、赤く見えるときは地震の前兆という言い伝えもあり、古今東西でよくないことの前触れとされていました。
孤月(こげつ)
他に星や雲もなく、ひとつ寂しそうな状態の月は「孤月」という名称があります。孤独な自分と重ねて表現するパターンが多く使われます。
時間をあらわす月の呼び方
周期によって月の出の時間や、見え方が違います。夕方のオレンジの空にうっすら浮かぶ月や、明け方だんだんと色が薄くなっていく月など、月ごとの名称を知ってみましょう。
<夕方>夕月(ゆうづき)
夕方、まだうっすら空が明るいときに見える月を「夕月」と言います。秋の季語として使われることも多く、三日月を特に指します。
<日没>黄昏月(たそがれづき)
日没後(黄昏)の夕闇に浮かぶ月を「黄昏月」といいます。ちなみに「黄昏」と言う言葉の由来は、暗くなって顔の判別ができず「誰そ彼=お前は誰か」という言葉だと言われています。
<日没>宵月(よいづき)
こちらも日没後間もない時間帯に見える月、特に陰暦8月の2日~7日頃の月を言います。駆逐艦の名前にもなっています。
<明け方>残月(ざんげつ)
明け方、空がうっすら明るくなる頃まで残っている月のことを「残月」といいます。「有明月」の異名でもあり、つまり三日月よりもずっとずっと欠けた状態の月がこの残月です。
素敵な月の呼び方を知ってみよう
さまざまな月の種類と、その呼び名、また月にまつわるちょっとしたトリビアをご紹介しました。メジャーなものはもちろん、昔の月の呼び名も合わせて知ることで「この作者はこの季節や天気を表現しているんだ」とわかります。月の名称を覚えて、夜を風流に過ごしてみましょう。