ひな祭りとは
ひな祭りのはじまりは、中国の「上巳(じょうし)の節句」です。上巳の節句には、自分の厄を和紙の人形にうつして水に流す風習がありました。これが、当時の女の子の人形遊びである「ひいな遊び」と結びついたのが、ひな人形の原型の「流し雛(ながしびな)」です。その後人形は精巧に作られて家に飾るようになり、女の子の節句として現代の形になりました。
ひな祭りにすること
ひな祭りは桃の節句ともいわれ、おひなさまや桃の花を飾り、女の子の健康や幸せを願いながらお祝いします。ひなあられや桜餅、ひしもちといったひな祭りを代表するお菓子やちらし寿司、ハマグリの潮汁、白酒などを用意するのが伝統的ですが、近年では、ライフスタイルにあわせてお祝いをするのが一般的です。
女の子が産まれて初めての桃の節句は「初節句」と呼ばれ、親族を呼んで盛大にお祝いすることも多いです。記念に写真館で写真を撮るのもいいですね。
【ひな人形の飾り方】飾る時期や場所
飾る時期
ひな人形をいつ飾るかは決まりはありません。節分が終わって立春になり、暦の季節が春になった時期が一般的です。地域によっては1月くらいから飾り始めるところもあります。ひな祭りの前日に飾るのは「一夜飾り」といわれ、縁起がよくないです。余裕を持って、ひな祭りの1週間程度前までの天気がよく、暦の日にちがいい日に飾るようにしましょう。
飾る場所
ひな人形にとって大敵なのは、紫外線に湿気、温度差の3つです。窓際など直射日光が当たる場所や湿気がたまりやすい場所、結露してしまうような場所には置かないように気をつけましょう。エアコンやヒーターの風をあててしまうと、乾燥でひび割れを起こしたり、温度差で木が歪んだりするので注意が必要です。
【ひな人形の飾り方】ひな人形の並べ方
セットによって飾り方が違う
ひな人形はセットによって段数や人形の数、小物なども違っています。店などで選ぶ際に写真などに残しておくと、家に帰ってから飾りやすいですよ。基本的に、一段目はお内裏様とおひなさま、二段目が三人官女、三段目に五人囃子、四、五段に大臣、仕丁(しちょう)、最終段は重箱やかご、御所車となっています。
各段に飾る人形や小物の種類の一例 | |
1段目 | 内裏びな、三宝、菱台、高坏(※1)、桜橘(紅白梅)(※2) |
2段目 | 三人官女、高坏 |
3段目 | 五人囃子、調度品(※3)、桜橘(紅白梅)(※3) |
4段目 | 右大臣、左大臣、仕丁(※4)、お膳、菱台、調度品(※5) |
5段目 | 仕丁、調度品、重箱、かご、御所車(牛車)(※5) |
6段目 | 調度品 |
7段目 | 重箱、かご、御所車(牛車) |
※2…三段十人飾りの場合
※3…三段五人飾りの場合
※4…五段十人飾りの場合
※5…五段飾りの場合
【ひな人形の飾り方】人形の名称と飾り方
①内裏びな
内裏びなは天皇家の婚礼をかたどった人形です。通常「おひなさま」と「おだいりさま」と呼びますが、「内裏(だいり)」とは天皇家が住まう宮殿を指すため、「男雛」「女雛」が正式名称です。飾り方は、男雛は頭に「烏帽子(えぼし)」をかぶせ手に「尺」を持たせて向かって左側に、女雛は「檜扇(ひおうぎ)」を持たせて右側に並べます。京雛では並べ方が逆になります。
②三人官女
三人官女は女雛に仕える女官です。飾り方は向かって左に「提子(ひさげ)」というやかんのようなものを持つ女官、中央に「三方(さんぽう)」という盃をのせる台や「嶋台」という飾り台を持つ座った女官、右には「長柄銚子(ながえのちょうし)」という柄杓(ひしゃく)のような道具を持つ女官の順です。
左右の女官は外側になる足を前に出していますので、それも見分けるポイントです。
③五人囃子
「囃子(はやし)」とは、能や歌舞伎など日本芸能でバックミュージックを流す、いわばオーケストラです。左から順に、太鼓、大鼓(おおづつみ)、小鼓(こづつみ)、笛、謡(うたい)です。太鼓はバチをもたせ、足元に太鼓を置きます。大鼓は左手に大鼓、小鼓は右肩に小鼓、笛は両手に笛、謡は手に扇を持たせます。お揃いの脇差と烏帽子をつけてできあがりです。
雅楽を奏でる五楽人や七楽人の場合もあります。この場合は、左から琴、横笛、縦笛、火焔太鼓、笙(しょう)、琵琶(びわ)、羯鼓(かっこ)の順で並べます。
④随臣(右大臣・左大臣)
弓矢を持ち、男雛女雛を守るのが随臣(ずいしん)です。男雛側に右大臣、女雛側に左大臣を置きます。右大臣は若く、黒い衣装を着ているのが特徴です。左大臣は赤い衣装で、髭の生えた老人の場合が多いです。年齢で見分けがつかない場合は衣装の色で見分けましょう。冠をかぶせ背中に幅広い背矢、右手に矢の束である手矢、左手に弓を持たせます。
右大臣の「右」、左大臣の「左」は上にいる"男雛から見たときの右左"になります。そのため、飾る側から見て逆の配置になります。
⑤仕丁(しちょう)
「仕丁」とは、身の回りの雑事をこなす従者です。向かって左から先が丸く膨らんでいる「台笠(だいがさ)」、靴を置く台を持っている「沓台(くつだい)」、長細い棒の「立傘(たてがさ)」と並べます。外出用の道具ではなく、掃除道具の場合もあります。その場合は、左から「ほうき」「ちりとり」「熊手」の順に持たせましょう。
【ひな人形の飾り方】道具の名称と飾り方
①小道具
ひな飾りには、さまざまな小道具がつきものです。「三宝(さんぽう)」は神様に供えるための飲み物を入れる「瓶子(へいし)」をのせるもので、内裏雛の中央に置きます。「菱台(ひしだい)」は菱餅をのせて内裏びなの前やお膳と一緒に四段目に、「高坏(たかつき)」は紅白餅やお菓子をのせて三人官女の間におきます。
②嫁入り道具
嫁入り道具はおひなさまが嫁入りするときに一緒に運んだものです。タンスや鏡台、針箱、茶道具といったものが含まれています。並べ方としては左から箪笥、長持と挟箱(平たい箱とそのうえに小さな箱2つをのせる)、鏡台、針箱(上にL字を逆さにした棒がついたもの)、火鉢、衣装袋、茶道具の順です。
③駕籠(かご)・重箱・御所車(ごしょぐるま:牛車)
おひなさまが嫁ぐために乗るかごや牛車もセットに入っています。かごは両端を人が担いで運ぶためのものです。仕丁が持っている立傘が2本セットになっていることが多いので、横に立てて飾ります。向かって左にかごを置き、中央にお弁当である重箱、右側に牛に引かせて乗る御所車を置きます。
④桜・橘
桜・橘は天皇家に馴染みの深い京都御所の「紫宸殿(ししんでん)」の橘と、桜をまねて作られたものです。紫宸殿の庭には東側に桜、西側に橘が飢えられていて、左近の桜、右近の橘といわれます。位置は随臣と同様、向かって左側に橘、右側に桜です。セットによっては紅白梅のこともあります。その場合は、向かって左に白梅、右に紅梅を配置します。
次のページは、ひな人形のしまい方です。細かいところに気を遣ったしまい方をすれば、おひなさまも長持ちしますよ。
出典:写真AC