日本人に愛される「ぼたもち」と「おはぎ」
「おはぎ」や「ぼたもち」は、つぶしたご飯をあんこで包んだ菓子として多くの人に親しまれています。また、小豆以外に、きな粉や青のり、ごまなどをまぶしたもの、いもあんやうぐいすあんで包んだものなどバリエーションも豊かです。お彼岸の春分の日や秋分の日に仏様にお供えすることもあります。老若男女問わ好まれますが、両者の違いがわからない人もみられます。
「ぼたもち」「おはぎ」をお彼岸に供える理由
小豆の役割
古くから小豆の赤みを帯びた色は、魔除けのおまじないの効果があると考えられています。色も華やかで慶事にもふさわしく、お祝い事の食事や贈答用の「赤飯」にも使われています。
供養の気持ちが込められている
お彼岸はご先祖に思いを馳せて供養する仏教行事の一つです。亡き人への思いが届きやすくなるお彼岸に、邪気や災難を防ぐ小豆を使った「ぼたもち」や「おはぎ」をお供えしてお墓参りをし、あの世での幸せと無事を願う習慣が根づきました。
特にお彼岸の真ん中に当たる「春分の日」や「秋分の日」などの中日は、太陽が真東から上り、真西に沈みます。太陽の動く道筋が「此岸(しがん:人間が生きる俗世)」から真西の果てにある極楽浄土への道に通じているとされていました。お彼岸の時期の中でも最も距離が近くなり、この世とあの世の行き来がしやすくなると考えられていたそうです。
「おはぎ」と「ぼたもち」の違いは?
現代では「おはぎ」と「ぼたもち」といっても、お彼岸の季節によって名前が変わるだけという場合が多いようです。特に区別せず使っている人も多いでしょう。
季節の花の名前が由来
「ぼたもち」は「牡丹」、「おはぎ」は「萩」と、春と秋のお彼岸の時期に盛りを迎えるそれぞれの花にちなんで名前がついたという説が最も有力です。現代は両者の作り方に大きな違いがありませんが、昔は「牡丹」「萩」の花に見立てて、形や大きさ、使う「あんこ」が異なっていました。
春の彼岸は「ぼたもち(牡丹餅)」
春の彼岸の時期に咲く牡丹は、見栄えがよい大きめの花であるのが特徴です。牡丹の花の形に見立てて大きく丸く形作られ「ぼたもち(牡丹餅)」という名前がつきました。春の彼岸のころは、秋の小豆の収穫時期から冬を越して時間が経っており、小豆の皮が硬い状態です。そのため、「ぼたもち」には、硬い皮を取り除いて裏ごしした粒のない「こしあん」を使うのが一般的でした。
秋の彼岸は「おはぎ(御萩)」
「おはぎ(御萩)」の場合、9月ごろに収穫された小豆を使うため、作るまでにさほど間がないことから皮が柔らかく、小豆をそのままつぶした「つぶあん」が使われていました。「おはぎ」は植物の「萩」に丁寧語の「お」がついた名前で、宮中にお仕えする女房が使い始めた言葉と伝えられています。あんの小豆のつぶが、細かく連なって咲く萩の花の様子に似ていたことにちなんだといわれています。
もともとの「おはぎ」は、ぼたもちよりも二回り程度小さめの楕円形(だえんけい)に作られました。
場所によりますが、二口、三口程度で食べられるサイズに作る場合もあったようです。
「牡丹」と「萩」の花以外の説
「おはぎ」と「ぼたもち」については、さまざまな分け方があります。その一つが、食材で分けるものです。仏教が伝来する前、お彼岸の行事は太陽を神に見立てて五穀豊穣を願い、実りを感謝する祭りでした。季節の花ではなく食材で名前を使い分けるのは、古くからの行事の名残かもしれませんね。
もち米とうるち米
「おはぎ」や「ぼたもち」の中には、ご飯が入っています。うるち米(一般的な白米)やもち米を使う場合があったり、両方を混ぜたりして作ることもあるようです。主にうるち米を用いたほうが「おはぎ」、もち米を使ったほうが「ぼたもち」という呼び方をされています。
きなこと小豆あん
種類を問わずに小豆のあんこでご飯を包んだものを「ぼたもち」と呼び、外側にきな粉をまぶしてつけたものを「おはぎ」という地域もあります。
さつまいもと小豆あん
あんこには小豆以外に、さつまいもからできた「いもあん」もあります。ご飯をいもあんでくるんだものを「ぼたもち」、小豆のあんで包んだものを「おはぎ」と呼ぶ場合もあります。
関東地方などでは「ぼたもち」という名が使われず、昔から「おはぎ」と統一して呼ばれていたようです。