ピクトグラムの歴史
ピクトグラムがどういうものか、その意味や他との違いをご説明しました。実は、ピクトグラムは大変歴史が古く、なんと紀元前には既に存在しています。そして、共通言語といわれるまでに発達し、世界に普及したのには、日本が大きく関わっているんです。ピクトグラムの起源や日本との関係について、ピクトグラムの歴史を通してお話しします。
世界でのピクトグラム
ピクトグラムの歴史は古く、絵が言葉を示すという意味では、その始まりは紀元前の壁画から見つかった絵文字が元だといわれています。その後、1920年代にオーストリアの学者であったオットー・ノイラートが統計で使う量などの数字を絵文字を使って視覚的に表し(アイソタイプ)、これが現在のピクトグラムの原型となりました。
日本でのピクトグラム
日本で話題になったのが、1964年の東京オリンピックです。当時、日本では日本語の案内板だけで、外国の方向けの案内板はありませんでした。アメリカだけでなく、アジアや欧米、アフリカなどさまざまな国の人々すべてに同じ意味が通じるように開発されたのが「ピクトグラム」です。実は、よく見かけるトイレのマークもこのときに生まれ、全世界で使われています。
そして全世界へ
こうして、世界中で見られるようになったピクトグラムですが、世界中に広がったわけは、高い評価ともうひとつあります。それは、著作権が放棄されているからです。当時ピクトグラムを作った製作者たちは、自分たちの成果を独り占めするのではなく、世界中で使われるようになってほしいと著作権を放棄しました。その結果、共通言語として世界中で使われているのです。
ピクトグラムの種類
ピクトグラムの種類はさまざまで、トイレをはじめ、JIS規格のピクトグラムで約110種類、2020年の東京オリンピックのピクトグラムで50種類、民間のものを含めると、数え切れないほどのピクトグラムが街にあふれています。ここでは、数あるピクトグラムのほんの一部ですが、街なかでよく見かけるピクトグラムについてご紹介していきます。
公共の場所のピクトグラム
トイレ
1964年の東京オリンピックで広まったピクトグラムの代表格がトイレのサインです。ズボンとスカートの違いで男子トイレ女子トイレを区別し、丸と線だけでわかる世界共通のサインになっています。最近では、ベビーベットやベビーチェアの有無や、洋式、和式、だれでもトイレなどのサインがあり、なにがどこにあるかすぐにわかるようになりました。
非常口
この非常口のマークも、オフィスビルやショッピングセンターなど至るところで見かけます。昔は文字のみでしたが、ピクトグラムをいれることでぱっと意味がわかるようになっています。非常口のマークが緑色なのは、火災の際の炎の赤色とは対照的な色のために目立ちやすいからです。ピクトグラムだけでなく、色も使ってわかりやすいようにデザインされています。
障害者のための国際シンボルマーク(車イスマーク)
普段「車イスマーク」や「身障者マーク」などと呼ばれることも多いこのマークですが、正式名称は「障害者のための国際シンボルマーク」といいます。車椅子の方だけでなく、さまざまな障碍がある方も使いやすいような工夫のある施設や場所、乗り物についているマークです。スーパーの駐車場やだれでもトイレ、最近多くなってきたノンステップバスでもみられます。
喫煙・禁煙マーク
最近は、喫茶店やファミレスでも受動喫煙防止の動きから、禁煙や分煙の場所が多くなってきました。そこに貼られているのが、この喫煙・禁煙マークです。煙の出ているタバコが描かれた喫煙スペースのマークと、喫煙スペースのマークに「禁止」を表す赤い斜線をひいた禁煙スペースのマークがあります。この案内があることで、喫煙者も非喫煙者も気持ちよく過ごせます。
優先席
電車や路線バスでよく見かけるこのマークもピクトグラムです。怪我をした方や妊婦さん、小さいお子さんを連れた方、ご年配の方などを図形で表し、助けを必要としている方に譲るべき席というサインになっています。最近では、そのほかに内部障がい者(心臓など体の内部に障害がある方)を表す、胸にハートと十字のマークがあるピクトグラムも見かけることがあります。
街なかのピクトグラムはまだまだあります。次のページでも引き続きご紹介します。
出典:写真AC