ダーニングとは
ダーニングは衣類の補修方法のひとつで、ヨーロッパで生まれた技術です。セーターなどにあいた穴をふさいだり、擦り切れて布地が薄くなったデニムなどを補強したりします。また、汚れてシミになった部分も隠せます。ただ補修するだけではなく、刺繍のようにかわいらしいと人気です。「もう着られない」とあきらめかけた衣類に、もう一度命を吹き込む技法がダーニングです。
私もセーターの虫食いやシミが気になってるの。お気に入りの衣類ほどよく着るから、汚れやほころびが目立ってくるのよね。
そんなときこそ、ダーニングがおすすめ。手間をかけてよみがえった衣類は、ますます大切な一着になるかもしれないわ。
ダーニングに必要な材料と道具
ダーニングに使用する糸
ダーニングの基本の材料は糸です。毛糸、綿の編み糸、刺繍糸、刺し子糸など、使える糸は100均でもたくさん販売されています。左上の手芸用糸は色の違う糸5本どりとなっており、好きな色を数本選んで使うことも可能です。糸は、素材、太さ、色の3つの観点から選びます。
糸の素材
糸の素材は、補修する衣類と同じ素材か、似た素材を選びます。例えば、毛糸のセーターには毛糸を、デニムや靴下には綿の刺繍糸や刺し子糸を、という具合です。素材を軽視して、頻繁に洗濯する靴下に毛糸でダーニングを施すと、毛糸が縮むことがあります。
糸の太さ
糸の太さは、生地の厚さと釣り合うものを選びましょう。例えば、薄手のセーターに太い毛糸でダーニングを施すと、もっこりと盛り上がって見えてしまいます。ちょうどよい太さの糸がない場合は、細めの糸を2本どりや3本どりで使っても結構です。そのように撚り(より)のない糸を使う場合は、針が糸の間を通ったり、糸の一部がたるんだりしないように注意します。
撚っている糸は「撚糸(ねんし)」というの。繊維をねじって、強度を上げているのよ。
糸の色
糸の色はお好みで結構です。ダーニングが目立つのを避けたい場合は、生地と同系色を選びます。また、あえて違う色を選んで、ダーニングをデザインとして目立たせるのもおすすめです。複数の色を使い分けたり、途中で色が変わる糸を使ったりと、自由に楽しめます。
刺繍糸は色も豊富だし、違う色の糸をあわせて使うのも面白そうだわ。本数を変えることで太さの調整ができるのも便利よね。
そうね、でも刺繍糸は撚りがないので、初心者には扱いにくい点があるかもしれないわ。
なるほど、初心者は撚りのかかった糸を1本どりで使うのがおすすめね。ダーニングにはどんな道具を使うの?
ダーニングに使用する道具
ダーニングに最低限必要なのは、針と糸切りばさみです。太めの糸や複数の糸を通すため、針穴が大きめの針を選びます。セーターに毛糸でダーニングを施す場合は、毛糸針がおすすめです。網目を寄せるときに、フォークや櫛を使う方もいます。また、できあがったダーニングを落ち着かせるために、スチームアイロンがあると便利です。
ダーニングにはもう1つ、用意して欲しいものがあるの。
ダーニングマッシュルーム
ダーニングするとき、ダーニングマッシュルームと呼ばれるキノコ型の道具があると重宝します。ダーニングする箇所がピンと張れて、作業がしやすくなります。ダーニングマッシュルームを含め、必要なものがセットになった書籍も販売されているため、探してみるとよいかもしれません。
ダーニングマッシュルーム?そんな特別な道具がないとできないの?
いいえ、なくても大丈夫よ。身近なもので代用できるわ。
ダーニングマッシュルームの代用品
ダーニングマッシュルームがなくても、手頃な大きさと軽さで丸みがあり、針が通らないものならば代用可能です。ボール、ガチャガチャのカプセル、プラスチックのボトルなどがよく使われます。ダーニングを施す部分によって、適当な大きさや太さのものを身近で探してみましょう。生地を固定するためのゴムや紐も用意します。
ダーニングって、身近な材料や道具で気軽に始められるのね。ダーニングの基本的なデザインややり方を教えて。
基本のダーニングのやり方
まずは、小さめの穴があいてしまった際に使えるダーニングです。かわいらしく見せる工夫の仕方の例も、あわせて見ていきましょう。
最初に四角形のデザインをご紹介するわ。初心者にも取り組みやすいダーニングの基本よ。
四角形のダーニング
まず、穴があいている部分が中心にくるように、ダーニングマッシュルーム(または代用品)を当て、ゴムや紐で固定します。ニットなど伸縮性のある生地では、引っ張り過ぎないように気をつけてください。穴を中心にして、周囲にゆとりを持たせた四角形をイメージします。
縦糸を張ります。縦糸と横糸で色を変える場合は、多く出したい色を横糸にしましょう。四角形をイメージした場所より少し離れた位置から針を入れ、糸端を10cm程度残しておきます。糸を縦に張って、糸1本分の針目で生地を横にすくってください。
糸1本分をあけながら縦糸を張り、イメージした四角形を作ります。横糸も縦糸と同じ色にしたい場合は、連続して横糸を編んでも構いません。縦糸と横糸で異なる色を使う場合は、最後の縦糸を張って四角形の角に針を入れたら、少し離れた位置に出して糸を切ります。糸端は10cm程度残しましょう。
横糸を編みます。少し離れた位置から針を入れ、四角形の角の部分から針を出してください。横糸を利き手側から反対側へ通します。針の頭側から通すと、縦糸を引っかけにくいです。「縦糸の上を通る→下を通る→上→下→…」のように交互にすくいます。四角形の端で、糸1本分をあけて1目すくいましょう。生地を180°回し、1段目とは上下を逆にして2段目を編みます。
生地の上で小さな織物をしている感じね。
網目を詰めながら、編み進みます。網目を詰める方法は、針を通したときに針で押さえても(画像左の矢印)、フォークや櫛で寄せてもよいです。縦糸の端まで編んだら、四角形の端に針を入れ、離れた場所から針を出します。切る場合は10cm程度残して切ってください。
生地を裏返し、糸端を裏側に引き出します。糸を針に通し、縫い目に巻きかがって始末してください。玉止めをすると、肌に当たって触り心地が悪くなるかもしれません。
四角いデザインのダーニングが完成です(画像左上)。少し唐突な印象があると感じたので、縦糸に使ったピンクの糸で小さな四角形をプラスしました(画像左下)。仕上げにスチームアイロンを当てて、落ち着かせます。
四角のデザインを組み合わせるだけでも雰囲気が変わるわね。ほかの形はできないの?
形を変えてダーニング
ダーニングのデザインは、四角形だけではありません。ほかの形でもできます。穴を中心にして、下描きをするように糸で縫っておくと形がとりやすいです(画像左)。今回は丸のデザインをダーニングしてみます。縦糸は下描きの糸が隠れるように張りますが、張り方は四角形のときと同様です(画像右)。
横糸の編み方も、四角形のときと同様です。糸端は裏側に引き出し、縫い目にかがりつけて始末します。今回は、丸いダーニングに刺繍を加えて風船にしてみました。このように、ダーニングの形に少しだけ手を加えて、かわいらしさをアップすることも可能です。
お気に入りのデニムのズボンの膝が擦れて、生地が薄くなっちゃった!
そんなときもダーニングで補修できるわ。次のページで説明するわね。
出典:筆者撮影(本記事掲載の画像のうち、出典記載がない全画像)