扇子とは
扇子(せんす)とは、扇いで(あおいで)風を起こす道具です。扇(おうぎ)とも呼ばれます。団扇(うちわ)と異なり、骨を要(かなめ)という1点で固定し、開閉できるので持ち運びに便利です。扇子は日本で生まれ、平安時代には扇子に和歌を書いて送るなど、儀礼やコミュニケーションの道具でした。
日本人と深く関わってきた
扇子は、武将が戦に携える軍扇、舞や落語の小道具、お座敷遊びの道具など、さまざまな形で使われてきました。宝塚歌劇では女性貴族の華やかさを際立たせる羽根扇子が登場します。1990年代には、この羽根扇子を振ってディスコで踊るのが流行し、ジュリアナ扇子と呼ばれました。扇子(扇)は「末広がり」に通じる縁起物としても大切にされています。
扇子の作り方①張り替え
扇子は夏が近づくと100均にも出回ります。大きさも形もデザインもさまざまです。100均とは思えないおしゃれなセンスもたくさんあります。しかし、お気に入りの布や紙に張り替えて自作の扇子を作ることも可能です。100均の扇子の布を張り替える手順をご説明しましょう。初心者でもひとつひとつていねいに作業すれば大丈夫です。
張り替えの準備
材料・道具
扇子を張り替えて自作の扇子を作る際に必要な材料・道具は、次の通りです。
- 張り替え用の扇子
- 新しく張る布
- はさみ
- アイロンとアイロン台
- 接着剤
- マスキングテープ
- 印付け用の色鉛筆やチャコペンシルなど(3色くらいあるとよい)
張り替えに使う扇子は扇面が紙製のものよりも、化学繊維の薄い布でできているもののほうが剥がしやすいです。また、新しく張る布はできるだけ薄くしっかりした布を選びます。今回は100均のてぬぐいを材料にしています。接着剤は、速乾性の高いものではなく、ある程度位置調整する時間的な余裕があるものが便利です。
まず構造をよく確認
まず、張り替えたい扇子の布や紙を剥がしますが、剥がす前に構造をよく確認します。初心者は見本の扇子を用意するか、各部の写真を撮っておくとよいでしょう。よく見ておいたつもりでも、いざ張るときに記憶があやふやになっていることもあるからです。注目ポイントは次の3点になります。
扇面を剥がす前に確認したいポイント
- 中骨を貼る位置:ひだの中央でなく、裏から見て谷折りになっている線の左側に沿って中骨が貼ってあるか
- 親骨の貼り方の違い:裏面から見て右側の親骨は布の裏面に、左側の親骨は布の表面に貼ってあるか
- 親骨との接着部:印付けや接着の際に混乱しないために、そこに1本折り目がついて布端が折り込んでいるか
布を剥がす
まず、張り替えたい扇子をいっぱいに開き、マスキングテープで骨を固定します。表裏両面から固定すると安心です。もともと張ってある布(紙)をきれいに剥がします。剥がした布(紙)は型紙として使うので、できるだけ破れないように丁寧に扱いましょう。折り線が消えない程度に軽くアイロンをかけて、平らにしておきます。
裁断と印付け
剥がした布(紙)を型紙として、新しく張る布の上に待ち針でとめます。扇面に模様をどう入れるのかをよく考えてとめましょう。両端には親骨に接着されていた部分、折り込まれていた部分があることを意識しておくと、張るときに混乱しにくいです。布を固定したら一回り大きく裁断します。ほつれにくい布であれば、内側の弧の部分は型紙通りに切っても大丈夫です。
印付け
内側の弧の部分は型紙通りに切りました。次に蛇腹折りの線にしたがって、布に印をつけていきます。谷折り線と山折り線の色を変えておくとわかりやすいです。初心者はたくさん印があると、どの点とどの点がペアなのかわからなくなることがあります。そこでところどころ色を変えて目印にするのがおすすめです。親骨との接着部にも印をつけるといいですね。
蛇腹折り
印付けが終わったら型紙を外し、アイロンで蛇腹折りをしていきます。まず、裏から見て山折りになる部分から折っていきましょう。折るときに印が見えるので、初心者でも折りやすいです。
山と山を合わせて谷折り
山折りが終わったら、山と山をつまんでぴったり合わせてアイロンをかけます。谷折り線に沿って折り目がつくはずです。
内側を切り揃える
蛇腹折りができました。内側の弧の部分を大きめに切った場合は、出来上がり線で切り落とします。出来上がり線で切った場合も、多少ほつれがでている場合は軽く切り揃えるとよいでしょう。
左右の端の始末
親骨に接着する際に折り込む部分を始末します。最初に確認した通り、左端と右端では表裏どちらに折り込むかが異なることに注意が必要です。裏面から見て右側の端は、裏面に親骨を接着するので、布端は裏側に折り込みます。裏面から見て左端は表面に親骨を接着するので、布端を折り込むのは表側です。折ったら接着します。
骨に布を張る
布を骨に接着する前に一度、骨に当ててみましょう。左右を親骨に合わせたときに、多少のずれはあっても、布の谷折り線の左側に中骨がきているはずです。布の内側の弧は、中骨の太さが変わる辺りにきます。外側の弧は中骨より外に出ていますが、これは骨に接着してから処理するので大丈夫です。
たいてい布にたるみがある
この段階で布と骨がぴったり同じ大きさにできている場合は、一気に接着できます。しかし、布の内側の弧の辺りに若干のたるみが生じていることが多いです。原因は、最初に扇子を全開にして固定したつもりでも、蛇腹折りの力で少し戻ってしまうことにあります。その場合でも、次のように中骨を1本ずつていねいに貼っていけば問題ありません。
右の親骨に接着
今回は裏側から見て右端の親骨部分から接着していきます。利き手や個人差で、やりやすいほうから始めて大丈夫です。最初に確認した通り、右側の親骨を貼るのは布の裏側です。
中骨に接着
中骨を1本ずつ、谷折り線の左側に合わせて接着していきます。内側の印に中骨を合わせるのが少し難しいかもしれません。画像左下に拡大図を示したように、必要に応じてピンセットなどで布をつまみ出すとよいでしょう。布の内側の弧が描く線が、中骨の太さが変わる部分からずれていかないように、時々確認しながら進めます。
左の親骨に接着
中骨を全て接着し終わったら、左端の親骨を接着します。こちら側の親骨を接着するのは、布の表側です。
さぁいよいよ次ページからは仕上げについて解説です!
仕上げ
貼り終えたら、扇の縁の始末をします。親骨の部分の角は四角く切り取りましょう。通常の扇子の縁は、極薄の細い布(紙)で挟み込むように貼ってあります。しかしこのような生地は入手が難しいです。厚くなりすぎると扇子がたたみにくくなるため、切り揃えて折り込む方法をとります。裏に折り込む分(5mm前後)だけ残して、縁を切り揃えましょう。
縁を折って接着
縁の部分に接着剤をつけて裏側に折ります。縁部分のほうが長いはずなので、たるみがでるのではないかと不安になるかもしれません。しかし、骨の部分で盛り上がるため、切れ目を入れなくても自然に折れます。布端まで接着剤をつけておけば、ほつれる心配はありません。縁の始末が終わったら扇子を開いたまま乾かしましょう。たたんで乾かすと、接着剤が多かった部分がくっつくことがあります。
アイロンがけ
接着剤が乾いたら、中骨にそってもう一度アイロンがけするときれいに仕上がります。接着前に蛇腹折りでアイロンがけしていますが、折れ線と骨がずれてしまったり、接着剤の水分で折り目が少しとれてしまうからです。
折りぐせをつける
ひだをひとつずつていねいに折りたたみ、きつめに輪ゴムを巻きます。布が厚めだとぐしゃっと崩れる場合があるので、画像のように上から重しをした状態で折りぐせをつけます。
完成
100均手ぬぐいで張り替えた自作の扇子が完成しました。通常の扇子に使われている布より厚めなので、たたみにくさはあるでしょう。しかしお気に入りの柄で丹精込めて作った扇子は、愛着がわいて手放せないかもしれません。
初心者の方は、もしも折りたたみにくく持ち歩きできないと感じてもがっかりしないでください。扇子は「末広がり」の意を持つ縁起ものです。せっかく好みの柄で自作した扇子ですから、飾り扇子として活用しましょう。100均のスマホスタンドなどを使えば立てて置けますし、壁に飾っても素敵です。
好きな布で扇子を張り替えできるなんて素敵!でも、初心者や子供がもっと簡単に手作りできるような扇子の作り方はないかしら?
そこで次ページからは手作りキットを使った手作り扇子の作り方を解説します!
出典:筆者撮影