広範囲のダーニングのやり方
続いて、広さのある場所を補修するダーニングのやり方を2種類ご紹介します。デニムのズボンの膝のように、生地が広範囲にわたって擦れて弱くなった場合に役立つ補修方法です。また、いつも擦り切れる箇所を、前もって補強しておきたいときにも使えます。
ごましおステッチによるダーニング
1つ目のダーニングは、「ごましおステッチ(ごましおダーニング)」と呼ばれることがあります。縫い目がごま塩をふったようにみえるからです。まず、生地が一番薄くなっている部分(穴がある場合は穴の部分)を中心にしてボトルなどを当て、ゴムや紐で固定してください。
木綿が主体の生地のダーニングには、刺繍糸や刺し子糸が適しています。今回は木綿の手芸用糸を3本どりで使いました。半返し縫いのようなイメージで、生地が薄い部分にステッチを施していきます。それほど強度を必要とせず、早く仕上げたい場合は、波縫いでも結構です。
今回は、ストレッチ素材のパンツのため、縦糸を細かく入れて、横糸を最小限にしました。横糸を広範囲に入れると伸縮性が妨げられるからです。ストレッチ性を問題としない場合や、擦り切れ方がひどくない場合は、縫う間隔を広げて構いません。穴のあいた部分には、基本のダーニングのように縦糸を渡します。糸を引き過ぎないように注意しましょう。
針目の不ぞろいは、かえって味わいになります。途中で色を変えても結構です。擦り切れた部分より少し広い範囲を補修してください。糸端は裏に引き出して、裏の糸に巻いてかがり止めます。
今回は穴と周辺の特に薄い部分にだけ、横糸を入れました。穴の周りにはごま塩ステッチを施します。穴に渡した縦糸(右上青線)には、基本のダーニングに基づいて横糸(橙線)を織り込みましょう。穴を通過したら、しばらくごま塩ダーニングを施します。穴がふさがり、穴の周囲の弱くなった生地も丈夫になりました。
もっと大きな穴があいてしまったら、どうしたらいいの?
大丈夫よ。当て布をして補修する方法があるわ。
当て布をしてダーニング
2つ目は、当て布をする補修方法です。穴が大きく糸だけでは補修しにくい場合に重宝します。生地の素材、厚さ、色合いを考えて布を選びましょう。生地と同系色の色が入った布はなじみやすいですが、アップリケのように違う色の布を使うのもかわいらしいです。布の当て方は、表から当てる方法と、裏から当てる方法があります。縫い方はほぼ同様です。今回は裏から当て布をする場合を見ていきましょう。
穴の部分に当て布をして待ち針でとめ、しつけをします。今回は丈夫に仕上げたかったため、穴を切り揃えて端を折り込み、1周まつりました。ほつれたダメージ感を残したい場合は、布端を切り揃えたり折り込んだりしなくても結構です。
穴より広めの範囲に、ごましおステッチを施します。今回は白い刺繍糸2本と、ペールオレンジの刺繍糸1本を3本どりにして使いました。星が流れるイメージで斜めにステッチを入れています。このステッチが終わった段階(画像左)では、白い星が少し浮き過ぎていると感じたため、青の刺繍糸でステッチを加えました。このようにアイデア次第で手を加えて、よりよい作品を目指せます。
糸端は裏側に出して、縫い目に巻き付けて処理します。余分な当て布は切り取りましょう。スチームアイロンで縫い目を落ち着かせて完成です。
ダーニングで衣類をよみがえらせよう
ダーニングは、Tシャツやセーターなどの穴やシミが気になるときに重宝する衣類補修方法です。靴下やデニムの擦り切れた生地の補修にも使えます。繕った箇所を目立たせない補修や、刺繍やアップリケのように見栄えのする補修も可能です。お気に入りの衣類をあきらめる前に、ダーニングでよみがえらせてみてはいかがでしょうか。
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出典:写真AC