木酢液とは
木酢液とは、乾留によって作られる液体です。木炭を作るときに出る水蒸気を集めて、気体を冷却したときに出る水分を集めたものが木酢液となります。ただし、この液体にはタール(煤)や木から抽出された油分(木クレオソート)などが含まれているので、これらを分けて木酢液だけ取り出す必要があります。炭を作る副産物ながらも、丁寧に作られる液体です。
木酢液の使い方
木酢液の原液は酸性なのでそのまま使うと、土壌や草木に悪影響が出てしまいます。そのため、100倍~150倍に希釈したものを土壌や草木に散布します。脱臭や消臭の場合でも100倍程度の希釈でよいでしょう。市販の木酢液はあらかじめ希釈されているものもあるので、取扱説明書に従いましょう。
木酢液のメリット
この木酢液は、園芸を趣味としている人や、家庭菜園をしている人を中心に人気がある液体です。それはなぜでしょうか、木酢液のメリットを紹介します。
メリット①エコ&ナチュラル
木酢液は、先にも記しましたが木炭を作る際に生まれる水蒸気から抽出した液体です。もともとは捨てられるものがサルベージされていることから、エコな液体だといえます。また自然のものから生まれたものであり、化学合成成分や薬品は一切化合されていないので、こういった点もナチュラルにつながります。自然界に還せる液体だからこそ園芸には欠かせません。
メリット②野菜の虫除けになる
木酢液は、カメムシやアブラムシを中心とした害虫駆除や忌避の用途に使われます。また、農薬ではないので野菜に直接かかっても安心ですし、土壌改良の効果もあるとされています。木酢液を吹き付けた後は、防虫の役割も生まれるそうですよ。
木酢液のデメリット
もちろん、木酢液にはいくつかのデメリットが存在します。こういった点も踏まえて木酢液の使用を検討するとよいでしょう。ここからは木酢液を使うデメリットについて紹介します。
デメリット①臭いが強い
木酢液の臭いは、「燻臭(くんしゅう)」と呼ばれる鼻につく臭いがします。文字通り燻された臭いなのですが、人によっては耐え難いと感じることも。木酢液を抽出する際には、止瀉薬である『正露丸』の成分としても知られる、木クレオソートも生成されます。このことからも、木酢液は止瀉薬の臭いとして受け止める人も見られます。
デメリット②すべての虫に虫除けが使えない
木酢液は、カメムシやアブラムシなどの害虫駆除や防虫目的といった用途で使われることが多いのですが、すべての害虫に木酢液の効能があるとは限りません。ダンゴムシや一部のアブラムシには効果がない場合も見られます。ナメクジなどの忌避も難しい場合があるようですね。
木酢液の効果と効能
木酢液の用途は虫除けや害虫駆除だけではありません。使えば使うほどウィンウィンな効果が生まれるとも考えられます。ここでは、木酢液の効果と効能を紹介します。
効果と効能①堆肥の熟成促進
木酢液には、アルコールなどの成分が含まれています。堆肥に木酢液を混ぜると発酵が促進され、たっぷりの栄養を含んだ堆肥ができあがります。畜産農家などは堆肥を作るために木酢液を応用しています。また家庭レベルの園芸であれば、コンポスト堆肥や腐葉土づくりに役立てられます。早く温度も上がるので、短時間で堆肥に仕上がるようですね。
効果と効能②土壌の殺菌
土壌に細菌が発生すると、野菜の根に何らかの影響が出ることがあります。木酢液を土壌に混ぜて土壌改良に使えます。木酢液には殺菌効果があるフェノール類も豊富に含まれています。また酸性の液体ですので、希釈して弱酸性にすることでアルカリに傾いた土を中和させられます。大きな花芽を持たせたい場合や、野菜類の収穫量を上げたい園芸家などは試しているようです。
効果と効能③植物の活力アップ
植物にかけることで、葉にかかりやすい病気を予防できます。光合成を妨げないため、花芽や実にしっかりと養分が回ります。また、可食できる野菜や果物は甘くなり、大きく育つ効果も狙えます。防虫のほか、病害虫も駆除できるので植物が元気になりますね。
効果と効能④カメムシやアブラムシなどの虫除け
カメムシは茎の養分を吸い取ってしまいますし、アブラムシは同様に養分を吸い取るだけではなく、見た目も悪いですね。先にも記しましたが、希釈した液を吹き付けることで害虫駆除の用途にも役立ちます。農薬ではないので木酢液を吹き付けられたカメムシがほかの畑や田んぼに行ってしまっても、木酢液自体の影響はありません。
効果と効能⑤ハチの営巣阻止と虫除け
ガーデナーなどの園芸家や家庭菜園にできるハチの巣は危険です。木酢液は煙の臭いがするので、火を嫌うハチは木酢液の臭いがするゾーンへの営巣を避ける傾向があります。もちろん、木酢液の臭いでハチも近寄らなくなるので、果樹などを育てる人にもおすすめです。スズメバチ対策には、巣を作ってほしくない場所に対し、こまめに木酢液を吹き付けましょう。
効果と効能⑥害獣などの忌避効果
蛇やネズミ、ハクビシンなどの害獣もまた、煙の臭いは火を想像させるので嫌いな臭いのようです。害獣被害にあっている場合は、棲み処となりやすい場所に原液をまくほか、通り道に木酢液をまいておくと忌避効果が現れます。燻煙材を使うと火災報知機が誤作動してしまう場所や、近所に迷惑をかけてしまう場所には、木酢液を使うことも一案です。
効果と効能⑦脱臭効果
糞尿から発するアンモニアを中和させる働きが木酢液にはあります。糞を熟成させた堆肥に木酢液をかけるのは熟成促進だけではなく、臭い消しの効果も担っていると考えられます。また、ペットのトイレ臭や、トイレそのものの臭い消しに木酢液を使うことも一案です。ただし犬猫も苦手な臭いなので、ペットトイレそのものには噴霧しないほうがよいでしょう。
木酢液の作り方手順
木酢液はどのようにして作られるのか興味を持つ人もいるかもしれません。ここからは、木酢液がどのようにして作られるのか、その材料や手順を紹介してまいります。また、材料や作り方の手順が分かれば、自宅で作れるかといった疑問にもお答えします。
木酢液の材料
- ブナやナラなどの広葉樹の原木
- 炭焼き窯
- 集煙装置
- 液体を集めるタンク(酸に強い樹脂もしくはガラス製のもの)
材料選びの注意点
良質な木酢液を抽出するには、広葉樹を材料に選ぶことが一番といわれています。また、無農薬であることと病気にかかっていない健康な樹木であることも条件に入ります。木酢液は、木炭を作る際の副産物です。炭焼き窯と煙突からパイプを通して水蒸気を集めるための装置も必要です。
木酢液の作り方手順
- 炭焼き窯に木炭の材料を投入し火を入れる
- 窯の煙突から立ち上る煙をパイプを通して集める
- パイプを急速に冷却し、パイプの中に含まれた水蒸気から液体を抽出する
- 液体をタンクに集める
- 数ヶ月間熟成させ、油とタール、水分を分離させる
- 水分だけを集めて木酢液の完成
手順としては難しいものではないが、時間がかかりそうじゃのう
木酢液は自宅で作れるか?
アウトドアの手法で、自宅で作る木炭の作り方があります。割りばしや松ぼっくりをアルミホイルでしっかり包んだものを、バーベキューコンロの上で時間をかけて蒸し焼きにするという方法です。そのときに出る煙を集めて水蒸気から液体を抽出するという方法をとれば、木酢液を自宅で作ることも不可能ではありません。
ただし、煙と焦げ臭さが出るので、住宅密集地では現実的ではないでしょう。木酢液として通常使える量まで抽出したいというのであれば、材料を大量に確保する必要があります。そうなると、市販品を準備したほうが早いのかもしれません。また、タールや油の処分も必要ですよ。
木酢液の作り方ポイント
木酢液制作のポイント
- 木酢液は炭焼きの煙から水分を抽出したもの
- 収集した液体を沈殿させて、タール・油・水分に分ける必要がある
- 木酢液として使えるまで時間が必要
木酢液の虫除けスプレーの作り方
園芸ショップなどで購入できる木酢液を用途別に効率よく使用するためには、スプレーボトルに入れて常備しましょう。特に、防虫効果や害虫駆除効果を得るためにはスプレーを作っておくと害虫を見つけた都度、駆除できます。水で希釈した木酢液をスプレーボトルに入れるだけですので、簡単ですね。
木酢液の希釈方法
市販の木酢液は、原液で販売されているものや希釈されているものなど、いろいろあります。説明書を見ながら用途別に希釈しましょう。100倍希釈の場合は、10ccの木酢液に対し水1リットルで希釈する手順が一般的です。
木酢液の保管方法
園芸ショップなどで購入した木酢液は、誤用を防ぐためラベルを付けたまま保管がベストです。他のボトルに移さないようにしましょう。木酢液スプレーを作った場合は、マジックなどで記名することをおすすめします。濃度別に作った場合も用途に応じた使い方ができるように分けましょう。腐食の恐れがあるため、缶や酸に弱い樹脂製ボトルでの保管はNGです。
まとめ
園芸家の必須アイテムのひとつ、害虫駆除や土壌改良に使える木酢液について、その用途や作り方をお伝えしました。材料や作り方の手順を見ると、家庭で木酢液の抽出を試みることは現実的ではありませんでしたが、市販品を上手に使ってよりよいガーデニングライフを過ごせるとよいですね。
かなり大掛かりじゃなぁ。