真鯛の三枚おろしの方法
一尾丸ごとの魚から刺身に仕立てられたら調理の幅が広がります。三枚おろしだけではなく、刺身の切り方も併せて覚えてみませんか。この記事では、板前(銀座渡利)さんの画像を参考に三枚おろしの方法と刺身の切り方を紹介します。
包丁の選び方
魚の三枚おろしをするときには、一般的に、出刃包丁を使います。文化包丁や菜切り包丁では刃の付き方が異なるため、魚をさばくことはできません。しかし、家庭用に市販されている小ぶりの出刃包丁では、硬い鯛の骨が落とせない場合も考えられます。鮮魚をさばくための出刃包丁は、刃渡りが長く、刃に厚みがあるものを選ぶとよいでしょう。
①ウロコをひく
どんな魚でもまずはウロコをはがすところからはじめます。尾から頭に向け、ウロコの流れに逆らうように「ウロコ引き」を動かします。家庭で「ウロコ引き」の準備がない場合は、包丁のみね(背)の部分で同じようにウロコをはがしても構いません。背中、腹などまんべんなくウロコをはがしましょう。
②頭を落とす
三枚おろしをするにあたり、頭を落とすところから始めます。腹のところにある「胸ヒレ」の根元に包丁を当て、頭へ向けて斜めに包丁を入れます。
エラから1cmほど胴へ寄ったところにヒレがあります。このヒレの根元に包丁をあて、中骨に向かって真っすぐ包丁を入れます。この作業は両側行います。
ほぼ頭は落とせた状態にありますが、内臓もあわせて処理したいところです。頭を落とす前に、肛門から喉元へ向けて包丁を入れ腹の皮を割きます。すると、内臓が見える状態になります。
最後に、頭をもぎ取るように身から頭をはずします。このときに、内臓が頭と一緒にはずれますので一緒に処理しましょう。流水で腹の中を洗い流しましょう。
③骨に沿って包丁を入れる
先ほど腹を割いたところを起点に、身を3枚に分けていきます。まずは、ヒレの上に包丁を当てて切り目をつけていきます。このときに、包丁の刃を立てて鯛の中骨にアタリをつけておきましょう。腹から尾にかけてガイドとなる切り筋を付けます。二度目で中心の骨に向かって包丁を入れていきましょう。
前の手順とおなじく、次は背側に包丁を入れます。一度目は骨にアタリをつけ、ガイド線を作る感覚で包丁をいれます。二度目で鯛の中骨(中心の骨)に向かって包丁を添わせながら身と骨を切り分けていきます。最後に尾に包丁を入れたら、1枚おろせました。
この工程を反対側の身にも施すことで、身と骨の3枚おろしの完成です。骨にも身が残っているうえ、ダシがたっぷり詰まっていますので、炊き込みご飯のだし汁などに使ってください。
刺身のサクの取り方
ここからは、三枚おろしの身からお刺身の基本となる「サク」の取り方を紹介します。「サク」は鮮魚店などで販売されている形といえば、わかりやすいですね。
①腹と背を切り分ける
腹の内臓を守るための骨をそぎ切ります。身の中ほどから見える骨をそぐように包丁を寝かせて当てます。骨だけをそぐように包丁を動かしていきます。
腹の脂身が強い部分も切り落としましょう。
身を見ると、中心に小骨のラインが見えます。このラインをガイドに、尾から頭に向けて包丁を動かし腹と背に切り分けます。刺身として使うのは、切り分けた背の部分です。腹側も刺身として食べることがありますが、まれです。
②皮をひく
尾の付け根の皮を押さえます。身と皮の間に包丁の刃を入れ、上下に小刻みに動かしながら皮を引いていきます。包丁は左右にスライドさせることはせず、皮を引っ張るイメージを持つときれいに皮が引けますよ。
これで、サクが取れました。もう半分もサクを取るとよいでしょう。
刺身の切り方
ここからは、銀座渡利の板前さんの動画を参考に刺身の切り方を紹介します。刺身をきれいに見せるための切り方を3種類まとめました。切り方によって、歯ごたえなどの食感の違いも楽しめるので参考にしてください。
包丁の選び方
刺身を作るときには、柳刃包丁や刺身包丁と呼ばれるものを使います。出刃包丁でも構いませんが、出刃包丁は刃が厚いため薄く身を引くときには不向きです。刺身包丁でも、包丁の刃のつき方によって、銀座渡利の板前さんと同じ切り方ができない場合があります。包丁を選ぶ際には「薄造りができるもの」を目安に選びましょう。
刺身の切り方【基本】
まずは、刺身を切るための基本の置き方を紹介します。画像で示しているのは皮目がある「表面」です。ピンクがかった模様があるので見分けられます。サクにしていますが、尾側の端は細く、頭側の端は太くなっています。頭側を利き手側に置くことを常に守ってください。
刺身の切り方①平造り
平造りは一般的な刺身の切り方です。皮目を上に、向かって右側から切っていきます。真っすぐ包丁を下したあと、手前に包丁を引きます。この切り方を用いると、刺身の厚みや高さが際立ちます。
刺身の切り方②そぎ造り
そぎ造りは、皮目を下に向け、左側から切りつけていきます。このとき包丁を寝かせ「そぎ切る」ように包丁を手前に引きます。そぎ造りは平造りよりも薄く仕上がりますが、刺身の面積が広くとれるので、大きく見せられます。
刺身の切り方③薄造り
薄造りは皮目を上に、左からそぎ造りと同じ要領で包丁を寝かせたまま、手前に引く方法です。ただし、そぎ造りより心持ちわずかに包丁を寝かせ、薄めに仕立てるのがコツです。身が崩れやすいので、切った後はそのままお皿に盛り付けるのがセオリーです。
手の熱が刺身に入りやすくなるので、薄造りでは刺身を押さえつけることはしないでください。
刺身の切り方の違い
切り方のおさらいとまとめです。3種の切り方の違いを知ると、鯛以外の魚の刺身の切り方にもバリエーションが生まれます。包丁の入れ方によって繊維の断ち切り方も変わりますので、食感もそれぞれ違います。鯛のように皮目の色を見せたいときなどにも応用してください。
刺身の盛り付け方のポイント
ここからは、刺身を魅力的に見せる盛り方を紹介します。動画では料亭で行う刺身の盛り方のコツが紹介されているので、動画もあわせてご覧ください。
盛り付け方①飾り・添え物の配置
お皿の上に、きゅうりやかんきつ、ワサビなどを仮置きしてどのように配置するかイメージします。このワザは、家庭でも応用できるので試してみましょう。
盛り付け方②高低を考えた配置
料亭で実際に盛り付ける際には、はじめに高さがある平造りの刺身を奥に配置し、バランスを取ります。しその上に刺身をのせるほか、きゅうりを添えるといった色のバランスも考えていくとよいでしょう。
盛り付け方③バリエーション
手前側には、そぎ造りや薄造りの刺身を配置し、皿の中に奥行きを作ります。この時、同じ刺身を三種盛ることもよいのですが、鯛以外の刺身に変えるなどバリエーションを持たせると華やかさが生まれます。
盛り付け方④お皿とのバランス
最後に、お皿とのバランスを見ることも忘れないでください。同じ種類の刺身でも、切りつけた形が違うものを組み合わせれば、見栄えすることが画像からもわかります。飾りの位置によってもバランスが変わりますので、最後に微調整をして盛り合わせの完成です。
まとめ
鯛の三枚おろしから、サクの取り方、刺身の切り方3種と駆け足でお伝えしました。家にある包丁などでお造りにするのは難しいことがありますが、生魚をサクで購入し刺身に仕立てることは自宅でもできるので、ぜひチャレンジしてみましょう。
参考動画
今回の記事は、銀座渡利様のYouTube動画を参考に作成をいたしました。
鯛の頭はダシ取りや鯛めしなどに使えます