ハワイアンキルトとは
ハワイアンキルトとは、ヨーロッパ発祥のキルトがハワイで独自に発展したものです。キルトは19世紀にイギリス人のキリスト教宣教師の妻たちから、ハワイの女性に伝えられました。一針一針ていねいに仕上げられたキルトには、マナ(神秘的な力)が込もっているといわれます。ハワイアンキルトとは、ハワイの方にとって家族の宝物のようなものです。
ハワイアンキルトの特徴
ハワイアンキルトの特徴は、布を4つまたは8つに折って切り抜いた、切り紙のような上下・左右に対称のデザインです。モチーフにはハワイの植物がよく使われます。気持ちが明るくなる鮮やかな色合わせも魅力です。そのデザインは親から子へと代々伝えられることも多いといいます。
ハワイアンキルト初心者がまず知っておきたいことを、いくつか説明するわね。
作り方の前に知っておきたいこと
初めて作るハワイアンキルトは、「ファーストキルト」と呼ばれます。ファーストキルトに何を作るか決める前に、ハワイアンキルトのタブーについて知っておきましょう。また、ハワイアンキルトの部分縫いの名称、初心者向けの作品や図柄についても紹介します。
ハワイアンキルトのタブー
踏んではいけない
ハワイアンキルトは、踏んだりお尻の下に敷いたりしてはいけないとされています。キルトには、作った人のマナや、図柄の植物の精霊が宿るとされているためです。したがって、玄関マットや座布団カバーなどに使うのは好ましくありません。
動物や人間の図柄はNG
ハワイアンキルトでは、動物や人間の図柄は使わないのが伝統です。近年ではイルカやウミガメなどの図柄を見かけられるようになりましたが、昔は海の生き物もNGだったといいます。少なくとも、陸上の動物や人間は避けるのが無難です。
黒は使わない
黒の生地は死を意味するので、使わないようにしましょう。
へえ、いろいろなタブーがあるのね。作るものやデザインを決める前に知っておいてよかったわ。
ハワイアンキルトの部分縫いの名称
ハワイアンキルトのタペストリーを作るうえで、部分ごとの呼び名についても把握しておきましょう。縫うときにはこの順番に縫っていきます。
- アップリケ:図柄の通りに切り抜いた布を、表布に縫い付けたもの
- 落としキルト:アップリケのきわに行うキルティング。図柄を際立たせる
- デザインキルト:葉脈など、アップリケの上に行うキルティング
- エコーキルト:アップリケの周りに、波紋が広がるように行うキルティング
- パイピング:布端をバイアステープでくるんで縁取りをしたもの
ちなみにキルティングとは、2枚の布の間に綿などの芯をはさんで縫い合わせたものよ。
初心者がハワイアンキルトを作るなら、どんなものを作ったらいいのかしら?
初心者にはミニタペストリーが最適
初心者が取り組みやすいといわれているのは、ミニタペストリーです。キルトは生地が厚くなるため、初心者には細かい加工処理はしにくいかもしれません。その点、ミニタペストリーならポーチなどに比べて、キルティングした後の処理が楽です。また、大きさは30cm角程度がよいでしょう。小さい作品のほうが簡単そうに見えがちですが、図柄の曲線や角が急になりやすく、アップリケが難しくなります。
初心者向けのデザインについても教えて!
ハワイアンキルトの初心者向けの図柄
ハワイアンキルトに取り上げられるハワイの植物の中で、初心者に好まれるモチーフがパンノキ(画像)です。パンノキはハワイ語で「ウル」と呼ばれます。現地では繁栄と成長を象徴する縁起のよい植物です。ファーストキルトとしてパンノキの図柄を選ぶと、キルトが上達するともいわれます。
次に、初心者が取り組みやすい図柄を描くポイントを見ていきましょう。既製の図柄を使う際にも、これらのポイントをおさえて選んだり修正したりすると、取り組みやすくなります。
図柄を描くポイント
- 急な曲線や鋭角、急なU字やV字を避け、緩やかな曲線と角にする
- S字カーブは、左曲がり→直線→右曲がりのように、直線部分をはさむ
- プカ(穴)は作らない。作りたい場合は、大きめの緩やかなカーブの穴にする
なるほど、ファーストキルトにはやさしいパターンを選ぶといいわね。作るためには特別な材料や道具を揃えなければならないの?
専用の材料や道具もあるけれど、身近な裁縫道具で代用できるかもしれないわ。説明していくわね。
ハワイアンキルト作りで準備するもの
必要な材料
- 布:アップリケ用布、表布、裏布
- バイアステープ:布から作ってもよい。アップリケと同色にすることも多い
- しつけ糸
- 糸:手芸店ではキルト用の細めの糸もある。布の色に合わせて揃える
- キルト芯(キルト綿):100均でも入手可能だが、綿の密度が低いとの声もある
必要な道具
ハワイアンキルトのミニタペストリーを作る際に必要な道具は、基本的には一般的な裁縫道具です。
- 針:縫い針(手芸店には短く細めのキルト専用針もある)、待ち針
- はさみ:糸切りばさみ、裁ちばさみ
- アイロン、アイロン台
- 指抜き:リング型や釣鐘型、皮製や金属製などがある。使いやすいものを用意
- フープ(刺繍枠):ミニタペストリー程度の小さな作品なら、なくてもよい
キットも市販されている
布やキルト芯、糸などがセットになったキットも市販されています。キットにはくわしい説明もついているため安心です。キットを選ぶ際には作品の大きさと、前項の「初心者向けの図柄」のポイントを考慮するとよいでしょう。
本記事では、布とキルト芯は100均の商品を使いました。また、画像で針や糸が見やすいように、針は普通の縫い針、糸はミシン糸を使っています。
作品の仕上がりを見れば、キルティング専用の芯や針、糸を買うべきかどうか、判断の参考になるかもしれないわね。
では、アップリケの作り方から説明しましょう。
出典:筆者撮影(本記事掲載の画像のうち、特段の断りのない全画像)