日本人になじみ深いカツオ
カツオは日本人にとって古くからなじみのある魚です。暖かい海を好み、日本では太平洋沿岸に生息します。高速で回遊するため身体は紡錘形で、尾びれの力も強いです。また第1背びれや胸びれ、腹びれ(次の画像参照)をたたんで、水の抵抗を少なくできます。カツオは刺身やたたきで食べるほか、缶詰やかつおぶしの原料としても重要です。
初鰹と戻り鰹
カツオの旬は1年に2回あります。1度目の旬は5~6月頃です。この時期のカツオはエサを求めて黒潮に沿って北上し、三陸沖~北海道の南の海域に向かいます。その年初めて水揚げされたカツオが「初鰹」で、さっぱりとした味わいです。2度目の旬は秋(9~10月頃)で、「戻り鰹」と呼ばれます。三陸沖でえさをたっぷり食べて脂がのったカツオです。親潮に乗って南下し、産卵場所を目指します。
カツオを1尾丸ごとさばくことは少ないと思われるかもしれんが、カツオは釣り魚としても人気が高いのじゃ。カツオのさばき方を解説しよう。
カツオのさばき方①うろこをそぎ落とす
最初にカツオのうろこを取ります。そのためには、カツオのうろこのつき方を理解しなければなりません。カツオのうろこは画像のように、尾びれ以外のひれの周囲に多くついています。頭側のうろこほど鎧のように厚くて硬く、尾に向かうほど薄くなるのも特徴です。これらは、高速で泳ぐ生活に合わせて進化したものと考えられています。
まず、側線(アジのぜいごがついている部分)のラインのうろこを包丁でそぎ落とします。続いて胸びれ周辺の硬いうろこも、そいでいきましょう。包丁を寝かせて身に押しつけるようにし、前後に動かしながらそぐのがコツです。
胸びれの周りのうろこを広くそぎ取りながら、頭を落としてしまう方法もあるぞ。
第1背びれは背中にしまい込まれていますが、この周辺にも硬いうろこがあります。同様にそいで処理しましょう。
背びれの両側から斜めに包丁を入れ、硬いうろこと背びれを一気にV字型に切り取る方もいるぞ。やりやすい方法で挑戦じゃ。
腹びれの周囲のうろこもそぎ取ってください。カツオの下側の白っぽい部分にはほとんどうろこがありませんが、腹びれ周辺にだけはうろこがあります。
この部分のうろこは、次の段階で腹びれを取るときに一緒にそぎ落としてもよいかもしれんのう。
カツオのさばき方②頭を取る
カツオの頭を落とします。まず、カツオの腹を上にして、腹びれの根元から口の方に向かって、斜めに切り込んでください。
頭を左、背を上にして、胸びれのつけ根から包丁を入れます。包丁の刃を尾側に寝かし、中骨に当たるまで斜めに切り込みましょう。
ひっくり返して腹を上にし、先程と同様に胸びれのつけ根から斜めに切り込みます。中骨に当たったら力を入れて断ち切りますが、骨が硬いです。しかし身はやわらかいので、身に負荷を与え過ぎないように注意します。内臓はまだ頭とつながっている状態です。
カツオのさばき方③内臓を取る
腹を開きます。向きを変えて腹をこちらに向け、刃先を肛門に入れてください。腹を頭側に向かって切り開いていきましょう。
頭を矢印のほうに向かって引くと、頭と内臓が一緒に取れます。
血合いに包丁を入れます。水を流しながら腹の中を洗い、ペーパーなどで水気を拭き取ってください。
カツオは身が割れやすいので血合いの処理を省略し、洗うだけでもよいぞ。さく取りするときに血合いを取り除けばOKじゃ。
カツオのさばき方④3枚おろしにする
カツオを3枚におろします。最初は普通の魚のおろし方と同様です。まず頭側を右、腹側を手前にして置き、腹側から中骨に沿って切っていきます。裏返さずに向きを変え、背中側からも切ってください。包丁の下側に中骨を感じながら、背骨に刃先が当たるまで徐々に深く切り込みます。
血合い骨を断ち切ります。尾びれのつけ根は筋っぽくて食べられないので、切り離してください。
切り離した半身を、両手で持って開きます。カツオのように身がやわらかい魚は割れやすいので、ていねいに扱うことが肝要なのです。これで2枚おろしの状態になりました。
裏おろし
カツオのおろし方でしばしば使われるのが「裏おろし」です。普通の3枚おろしなら中骨が下になるように置きますが、裏おろしでは反対に中骨を上に向けて置きます。背側から包丁を入れ、包丁の上側に中骨がこすれる音を感じながら切り開いてください。第1背びれと第2背びれは中骨と一緒に外れます。腹側からも、中骨の下をこすりながら切りましょう。
背と腹から包丁が入ったら、中骨が下になるように置きます。血合い骨を断ち切り、尾のつけ根に切り込みを入れてください。身を両手で支えて開けば、3枚おろしの完成です。
ふう、3枚おろしの完了じゃ。次はさく取りをしていくぞ。
カツオのさばき方⑤さく取りする
おろした半身からさく取りします。真ん中に血合い骨と血合いがあるので、これを切り取るように包丁を入れ、背身と腹身に分けましょう。腹身は腹骨をそぎ落とします。さく取り後に長さを半分に切ると、扱いやすくなるかもしれません。一般的には背身は赤身が多く、腹身は脂がのっているといわれます。どちらが刺身に向いているかは、お好み次第です。
血合いの処理
血合いをそぎ落とします。血合いは鮮度が落ちやすく、血の味が苦手な方もいるからです。身に血の塊がある場合も取り除きましょう。血合いには鉄分やビタミンなどの栄養素が豊富なので、気にならない方はそのまま料理しても結構です。
さて、いよいよカツオを調理していくぞ。まずは刺身じゃ。
カツオの料理法(1)刺身
鮮度のよいカツオなら、ぜひ味わいたいのが刺身です。江戸時代には皮つきの刺身(芝づくり)をからし醤油で食べていたといいます。現代では皮を取り除く調理法が一般的です。皮のない刺身を作る方法をご紹介しましょう。
刺身の作り方①皮をはぎながら切る
カツオは皮が薄いので、皮をはぎながら切ります。まず、包丁を垂直に入れます(画像左)。刃が皮に当たったら、包丁を右に寝かすようにスライドさせつつ、前後に細かく動かして、皮から切り離してください(画像中央)。筋は皮目に残します(画像右)。
この切り方は、白身魚など他の魚の刺身でも応用できるぞ。
刺身の作り方②盛り付ける
カツオの刺身を盛り付けます。カツオは血の香りが強いので、薬味を多めに添えるのがおすすめです。大葉(葉全体や千切り)、生姜(すりおろし)、細ネギ(小口切り)、にんにく(薄切りまたはすりおろし)がよく使われます。醤油で食べる以外に、ポン酢+マヨネーズ+七味の組み合わせも人気です。
次はたたきじゃ。燻製のような香りを家庭で手軽につける調理法をご紹介するぞ。
カツオの料理法(2)たたき
次にご紹介するのはカツオのたたきです。もともとは、あぶったカツオに塩や薬味の味がしみこむように叩いたのが「たたき」の語源だといいます。現在は、カツオを火であぶったものをたたきと呼ぶことが多いです。藁焼きが有名ですが、バーナーやガスコンロの火であぶると家庭でも作れます。今回は、いぶした香りを家庭で簡単につける方法をご紹介しましょう。
アジも「たたき」にするが、これはたたき切りにしたことが語源だといわれておる。同じ「たたき」でも意味が違うとは面白いのう。
たたきの作り方①下味をつける
まず、カツオに下味をつけます。身側にも皮側にもまんべんなく薄く塩をふり、10分程度寝かしてください。水洗いしてから、ペーパーなどで水気を取りましょう。
たたきの作り方②炙る
今回香りづけに使うのは、燻製用チップです。コンロの上に鍋やフライパンを置き、アルミホイルを敷きます。その上に燻製用チップと砂糖を乗せてください。鍋の上に金網をセットします。火を点ける前に必ず換気扇を回しましょう。熱が燻製用チップに伝わって煙が出てきたら、金網の上にカツオを乗せます。
燻製で砂糖を加える理由は、色つやと香りをよくするためといわれておるぞ。
燻製用チップの煙の香りをカツオにまとわせながら、表面をバーナーで炙ります。身側は色が変わる程度、皮側は少し強めに炙ってください。
完全に燻製にしたい場合は、網の上から金属製のボウルを被せればよい。燻製器がなくても簡単に燻製ができるぞ。
表面に香りがついたら火から下ろし、冷蔵庫で冷やします。燻香をつけた場合は氷水では冷やしません。煙の香りは水に溶けやすいので、氷水に入れると取れてしまうからです。かといって冷やさずに切ると、焼いた表面が崩れやすくなります。ですから、冷蔵庫で十分冷やしましょう。
たたきの作り方③盛り付ける
カツオのたたきを切ります。お好みにもよりますが、ある程度厚めに切るのがおすすめです。
カツオのたたきを盛り付けます。薬味は、生姜(すりおろし)、細ネギ(小口切り)、玉ねぎ、ごま、すだちなどがぴったりです。特に新玉ねぎはカツオと相性がよく、初鰹と旬の時期が一致するので季節感も演出できます。スライスして添えても合いますが、食感も楽しめるフライドオニオンにするのもおすすめです。ポン酢や醤油でいただきます。
次項では、傷みやすいカツオをおいしく食べ切る料理をご紹介しますぞ。
出典:写真AC