はじめに
お月見の過ごし方は地域によって違います。本州では十五夜になると小さな丸いお団子を積み重ねたお月見団子やススキをお供えしますし、スーパーなどでもお月見団子をよく見かけます。しかし、沖縄のお月見は少し違います。沖縄のお月見の代表格といえば、なんといっても「ふちゃぎ」です。本州ではなじみのないこのふちゃぎの特徴や味、食べ方などをご紹介します。
沖縄のお月見と「ふちゃぎ」
沖縄のお月見団子「ふちゃぎ」
本州では、今は新暦で9月上旬から10月上旬の間で満月の出る日を十五夜としてお月見をします。しかし沖縄では少し違い、旧暦の8/15に行います。綱引きや獅子舞、棒術や女性が輪になって踊る臼太鼓(ウスデーク)など、華やかでにぎやかに過ごすのが風習です。そんな十五夜に神棚や仏壇にお供え物として捧げられているのが「ふちゃぎ」なのです。
ふちゃぎの特徴とは
ふちゃぎは沖縄風あずき餅
見た目のインパクトがすごい
ふちゃぎは沖縄風の蒸気で蒸した餅(ムーチー)にあずきをまぶしたものです。十五夜の際にはこれを台所のヒヌカン(火ぬ神:家内安全をつかさどるかまどの神様)と神棚、仏壇にお供えし、無病息災と五穀豊穣をお祈りします。あずきは災厄除けを意味し、つぶしてしまうとその効果がなくなると言われているので、本州のあんことは違って豆をつぶさないのが特徴です。
ふちゃぎは縁起物
ふちゃぎの餅とあずきには意味がある
ふちゃぎは漢字で書くと「吹上餅」と書きます。餅を蒸すときの蒸気が吹き上げる様子からこの名前が付いたと言われています。このふちゃぎには、餅を月、あずきを星々と見立てて五穀豊穣を祈るだけでなく、餅を母親、あずきを子供達に見立てて、子孫繁栄の象徴としての意味合いもあり、お供えした後は家族でおいしく頂きます。
ふちゃぎの食べ方
気になるその味は?
本来はあっさり塩味
カラフルふちゃぎ♪
— natsuco.k (@KNatsuco1) October 4, 2017
沖縄で旧の8月15日にお供えするお餅。
学校の給食にも出たり。
本当は白餅に小豆なんだけど最近は色んな味が。
左から紅芋、かぼちゃ、よもぎ、黒糖。お店の人に昨日オススメされた安納芋のはすでに売り切れ😭残念。#ふちゃぎ#お月見#沖縄#okinawa pic.twitter.com/rz1VwJW5FG
ふちゃぎの味はというと、本来のふちゃぎは餅には味を付けず、塩ゆでしたあずきの塩味のみです。最近では、いろいろな味付けをしてあるものも多くなってきました。餅に砂糖を入れた「甘ふちゃぎ」や、紅芋やヨモギ、黒糖、カボチャなどでさまざまに色や味を付けたものも売られていて、大変人気です。
ふちゃぎをアレンジ!
ふちゃぎは人気がない!?
本来のふちゃぎは伝統的な食べ物である一方、お子さんや若い方の中では薄味ということで敬遠されてしまうこともあります。ふちゃぎは本州でいうところの豆餅に近い味なので、砂糖やあんこ、きな粉などをかけてみたり、お汁粉に入れてみたり、味を追加することでおいしく食べられます。
ふちゃぎに似ている食べ物が本州にもある
その名は「ささげ餅」
本州でも、富山、石川、福井の北陸3県にはふちゃぎに似たお餅があります。ついている豆はあずきと似たものですが、厳密にいうとあずきではなく、一回り大きくあずきより割れづらいささげ豆を使った「ささげ餅」です。ふちゃぎと同じく塩ゆでした豆を餅にまぶしただけのシンプルなもので、ささげ餅は土用餅として夏の土用の日に食べられる夏の和菓子です。
ふちゃぎの作り方
実はふちゃぎは、自宅で簡単に作れます。十五夜には沖縄のスーパーに並んだり、給食で出されたりするだけでなく、家庭でもよく作られています。もち粉か上新粉か、蒸すかゆでるか、甘くするかしないかなど、その家ごとに材料も作り方も食べ方も違っていて、その家庭の味があります。ここでは、一般的なふちゃぎの作り方についてご紹介します。
ふちゃぎの材料
ふちゃぎの材料は、次の5つです。
もち粉(または上新粉) | 200g |
水(もち用) | 100~150mⅬ程度 |
あずきまめ | 150g |
塩 | 少々(小さじ1/2程度) |
お好みで砂糖や黒糖、紅芋、よもぎ、かぼちゃなど | 適宜 |
紅芋やよもぎ、かぼちゃはパウダー状のものが大手百貨店などの製菓コーナーやネット通販で手に入りますので、そちらを使っても手軽で美味しくできますよ。
①あずきを煮る
まずは、半日から一日、あずきを塩水につけておきます。そして、塩水ごとあずきを火にかけます。煮立ったら、いったん煮汁を捨て、もう一度ひたひたの水を入れて40~50分煮ます。煮崩れないように、つぶさないように気を付けてくださいね。煮えたら、ざるにあけて水を切り、バットに広げておきます。ここで塩をまぶす家もあります。
②餅を作る
本州の餅と沖縄の餅(ムーチー)は少し違います。沖縄はもち粉や上新粉をこねて、蒸したりゆでたりしたものです。もち粉に少々の塩と水を加え、耳たぶ程度の固さになるまでこねます。もちに味をつけたい場合はここで混ぜましょう。ひとまとまりになったら、等分して俵型や小判型にまとめて、15分程度蒸し上げます。蒸す代わりに茹でる家もあります。
③餅にあずきをまぶす
餅が熱いうちに、茹でたあずきをまぶします。バットに広げたあずきの上に蒸しあがった餅を転がすようにして、あずきを付けましょう。餅はまだ熱いので火傷しないように注意してくださいね。あずきをしっかりまぶす家もあれば、ちょこちょこつける程度の家もあり、その家庭によってさまざまです。これで、ふちゃぎのできあがりです。
まとめ
沖縄の月見団子である「ふちゃぎ」をご紹介しました。本州の月見団子とは見た目も味も作り方も違います。最近ではさまざまな種類のものが出てきていますが、材料自体は本州でも手に入りやすいものですし、ご自宅で簡単に作れます。今度の十五夜には、ぜひふちゃぎを作って、一風変わったお月見を味わってみてはいかがでしょうか。
引用:写真AC