天然塩の定義とは
天然塩ときくと、健康によさそうな、おいしい塩という印象がありませんか?海水塩の栄養成分を例にとると、ナトリウムの他にマグネシウム、カルシウム、カリウムなど微量のミネラルを含み、塩辛いだけでない複雑な味わいも感じますよね。天然塩や自然塩とは、このナトリウム以外のミネラルを取り除く精製の工程や、にがりの添加などをしていないものを指すのが一般的です。
天然塩の定義が、精製も添加もしていないものである!と判断するとして、今回は製造工程と原料で天然塩を見分ける方法を紹介するぞ!
天然塩の製造方法
海水で天然塩を製造するには、原料の海水を濃縮してかん水(濃い塩水)をつくる工程が必要です。以下に日本の海水を使ってかん水をつくる代表的な製造方法を3つご紹介します。この工程こそが、天然塩と精製塩の違い、見分け方のポイントになるところです。
逆浸透膜
逆浸透膜(淡水化膜、RO膜ともいう)とは、海水を淡水にするためのろ過膜のことです。このろ過装置に圧力をかけて海水を透過させ、淡水と濃い海水に分けます。これによって得たかん水を平窯で煮詰めたものが海水塩です。
日本式塩田
石川県の能登半島で行われる揚げ浜式塩田や、愛知県の三河湾で復元された入浜式塩田で行われる海水の濃縮方法です。塩田の砂に海水をまいて乾燥させたあと、砂を集めて箱に入れ再度海水を流し込み、かん水をつくります。そして、ろ過、炊き上げのあとにがりを切り、結晶化させます。
流下盤
重労働である塩田に代わって導入された流下盤は、流下式塩田ともいわれます。傾斜をつけた地盤に粘土や砂利を敷いて海水を循環させ、太陽熱によって水分を蒸発させる方法です。さらに、竹笹を使った枝条架(しじょうか)やネットを併用することで、濃い海水を1週間から10日ほどかけてつくります。
天然塩の種類
海水塩
海水を釜で煮詰める方法をせんごうといいます。天日塩を溶解して煮詰めるものも、ろ過装置や塩田によって得たかん水を煮詰めてつくる塩も海水塩またはせんごう塩です。このうち、海水に海藻を浸して煮詰めると、色のついた藻塩ができあがりますよ。
岩塩
岩塩は地殻変動によって陸上にとどまった海水が、長い年月を経て結晶化したものです。流通するものは外国産で、輸入した岩塩を再加工し販売したものは国内加工品として販売されます。日本には岩塩の資源はありませんが、山の温泉地域で塩分の強い温泉水を煮詰めてつくる山塩があります。
湖塩
世界ではボリビアのウユニ塩湖が有名ですね。塩湖で採掘された塩のほか、塩分濃度の高い湖水を結晶化させたものを湖塩といいます。原材料名には「湖塩」「湖水塩」とあります。
しお公正マークとは
食塩は「天然塩」や「自然塩」といった名称をパッケージに表示しないルールがあります。また「健康に効果がある」「美容に効果がある」という表示も明確な根拠がなければ表示できません。商品パッケージの表示が適正とされた食塩に関して「しお公正マーク」の使用ができます。ただし、しお公正マークが表示されている商品が、天然塩であるということではありません。
この規約には塩の作り方が分かるように、原材料と製造工程を記載することが義務付けられています。他の食品にはない、塩独特の表示です。
粗塩は自然塩?
粗塩はしっとりとした手触りで、料理のほか盛り塩にも使います。粗塩の定義には、海水を濃縮してつくる天然塩であるという意味があるため、精製されていない塩ということに違いはないでしょう。ただし、粗塩にもさまざまな種類があります。粗塩だから天然塩という見分け方は確実ではないでしょう。
天然塩と精製塩の違い
食塩は天然塩を含めて、再生加工塩(再製加工塩とも書く)と精製塩の3種類に分類できます。二つ目の再生加工塩とは、輸入した天日塩を海水や水を混ぜて再加熱したものに、にがり成分などを添加したものです。三つ目の精製塩は、商品の成分のうち塩化ナトリウムが高純度(99.5%以上)に含まれるものをいいます。
再生加工塩とは
再生加工塩とは、輸入した塩を国内で再製造、再加工する塩のことをいいます。原料となる塩を海水に溶かしてかん水をつくり、再結晶させる製造方法です。この工程を溶解といい、輸入する原料は比較的安価な精製塩や天日塩、岩塩を使います。天然かどうか分かりづらいですが、商品には「国内生産」と表示されます。
精製塩とは
精製塩とは、その名の通り精製により不純物を取り除いた塩のことをいいます。レストランで一般的に使われるのがこの精製塩であり、味噌や醤油の原料としても使われます。精製塩だからミネラルの栄養が不十分というわけではなく、調味原料として精製してあると考えるのがよいでしょう。
塩の精製には、海水をイオン交換膜にとおして電気分解する工程がある!食品表示には「イオン交換膜」という工程名と塩化ナトリウムが「99.5%」と書いてあるよ!
天然塩と精製塩の見分け方
スーパーでよく見かける伯方の塩は、天然塩なのでしょうか?製品特徴をみると外国産の天日塩を日本の海水に溶かしてつくった粗塩とあります。つまり、伯方の塩は再生加工塩です。ただし、原料にも精製の工程がないため、ミネラル成分による甘みが残っており、天然塩と同じように扱えると考えられます。
見た目や味では見分けられない?
精製塩は雑味のない塩辛さがあり、天然塩は海水に含まれるミネラル成分が残りやすいため、甘みやまろみが感じられます。また、塩は粒の大きさや形によっても味の感じ方が変わります。再生加工塩は、にがり成分を添加しているため自然塩に近い味になっていますよ。
原料が海水で、製品の工程にイオン交換膜と書いていない海水塩は、天然塩なんだね!
天然塩は工程に手間と時間がかかるので、精製塩に比べて値段が高いものが多いぞ!
まとめ
栄養成分が豊富なイメージをもつ天然塩ですが、実は原料や製造方法によって栄養成分に違いがでることがわかりましたね。また、塩の味が結晶後の粒の大きさや形によって変化することに驚いた方もいるのではないでしょうか。天然塩を選ぶときには、ぜひ食品表示を確認してみてくださいね!
天然塩を買いにスーパーに行ったら、種類が多すぎて選べなかったよ!そもそも塩は、天然のものじゃないの?