筋子といくらとは
筋子(いくら)は鮭の卵です。産卵前に採取したもので、卵膜に覆われたものです。漁獲された一部の鮭は、雄鮭の精子と掛け合わせて、人工ふ化をさせ種の保存を優先させています。そのなかのわずかな鮭の卵は食用として出回ります。鮭の産卵期は秋で、8月の末~11月ころまで市場で出回ります。
白鮭の基本情報
分類 | サケ目サケ科サケ属 |
分布 | 北太平洋と北極海の一部 |
産卵期 | 9月~11月 |
鮭にはいくつかの種類がありますが、筋子(いくら)が採取されるのは、秋口に日本の河川に遡上する白鮭です。地域によってはアキアジやアキサケといわれます。なお、鱒子(ますこ)と呼ばれるものがありますが、こちらはサクラマスなどと呼ばれる鱒の卵であり、筋子やいくらとは異なります。
筋子について
筋子は、産卵期にあるメス鮭の体内から取り出した産卵前の卵です。卵膜に覆われた状態のものをさします。要は鮭から取り出した卵巣が筋子です。
店頭ではすでに調味された筋子と区別するために、「はらこ」や「生筋子」と表記されています。
いくらについて
いくらは、筋子の卵膜から取り出した卵の粒をさします。いくらとして使われるのは、産卵される前の未成熟卵です。卵膜から出した卵に雄鮭から出される精子をかけると、受精し稚魚が生まれます。
いくらの語源
いくらの語源は、ロシア語です。ロシア語では、「魚卵(Ikra lososya)」を意味します。日本でいくらといえば、食べ物としての鮭の卵の名称ですが、ロシアではキャビアもカズノコもすべて「イクラ」と呼びます。
筋子のほぐし方【下処理編】
いくらを調味する際に、卵膜から外す作業が必要になります。筋子の状態で売っているものを見たら、自宅でほぐしてみませんか。短時間でかつきれいに筋子をほぐす方法を、銀座渡利の板前さんの動画を参考にまとめました。
ほぐし方①準備するもの
- 50℃~60℃ほどのお湯(5秒以上手を付けていられないほどのお湯)
- 塩 適宜
- 筋子 1本
- ボウルとザル
一度沸騰させたお湯に水を足して、熱さを調整してください。
ほぐし方②膜を外す
準備したお湯に、塩を混ぜて海水程度の濃さにします。お湯入りのボウルに筋子をそのまま沈めてください。お湯を使うので、いくらに熱が入ってしまわないか心配になりますが、加熱の状態ではないので安心して作業しましょう。
海水の塩分濃度
- 海水の塩分濃度は3.4%です。調理をする際は3%食塩水を作ります。
- 100ccの水に3グラムの塩を溶かすと、海水の塩分濃度に近い食塩水が作れます。
お湯を使うと、卵巣の膜が縮んでいきます。ボウルの中でもむように膜を外してください。いくら自体は若干手荒にしてもつぶれません。時間をかけずに作業をするのがポイントです。
菜箸を使ってかき混ぜるようにすると、ほぐれやすいですよ。
大きな膜は画像にある通り縮んで小さくなります。ボウルの中には、まだほぐれていないいくらがあるので、指先でやさしくほぐしてください。
この状態になれば、次のプロセスできれいないくらを作れます。湯に浸したため、若干いくらの色が白くなっていますが、空気にさらせば元通りの透明感がある色になります。
ほぐし方③くずを除去する
ほぐしたいくらをザルにあけ、水切りをします。
手作業で目に見える血合いや卵の皮を丁寧に取り除きます。特に血合いと呼ばれる赤い筋や膜の残りは、醤油漬けにしたときに生臭さが残る原因となるので注意が必要です。
最後の仕上げに、水道水と塩を混ぜて海水程度の食塩水に作ります。この水を張ったボウルに再びいくらを入れてすすぎ洗いをします。菜箸を入れていくらをかき混ぜると、水流の力で取り切れなかったいくらの皮などが浮き上がります。皮も丁寧に取り除いてください。
食塩水を使う理由
食塩水にいくらを漬けるのは、下味をつけるという意味合いもありますが、浸透圧の関係でいくらの中の生臭い水分を抜くという考えに基づいています。塩水を使わない場合いくらが水を吸ってしまい、風味が損なわれてしまいます。時間をかけすぎるといくらがしぼんでしまうので注意しましょう。
いくらの殻は浸透膜と同じ役割を担っています。これによって醤油漬けが成立しますよ。
ほぐし方④水を切る
再びザルにあげて、5分程度水切りをします。これで筋子からいくらをほぐせました。
ほぐし終え、膜や殻などを取り除いたので、市販されているものと同じ透明な粒だけが残ります。
筋子の血抜き処理方法
次に、筋子の状態で調理をするための下処理をまとめます。筋子は鮭の卵巣そのままなので、下処理をきちんとしないと生臭い仕上がりになります。板前さんはどのような下処理を行うのでしょうか。
筋子の処理①準備するもの
- 竹串 1本
- 筋子 1本
- ザル
筋子の処理②血抜き処理をする
筋子に見える黒い筋は、血管です。この血管を通して、卵のひとつひとつに栄養を送り込んでいます。この血管を通る鮭の血液を抜くと生臭さが少ない筋子料理ができます。筋子の黒い筋の中央付近に竹串の先を刺して、複数個所穴をあけます。この穴から、血液を抜き出していきます。
時間がかかり、地道な作業となりますが、両端から黒い筋をなぞって血液を押し出していきます。太い筋から分岐した毛細血管もあるので、目に見える筋は竹串でなぞり太い筋へ押し出すように抜いていきましょう。
筋子の粒に傷がつかないよう、竹串の先端は使わないようにしましょう。
筋子の処理③洗浄し水を切る
押し出した血液を洗い流すため、海水程度の濃度の塩水で洗います。この時、1度食塩水を変えてしっかりと洗い流してください。鮭から直接取り出した内臓(卵巣)なので、寄生虫や汚れによる食あたりが心配されるためです。
洗浄をし終えたら、ザルにあげて30分ほど水切りをします。皮と卵の間に水分が残っている可能性があるので、水切りの時間は長めにしましょう。洗浄の過程でこぼれてしまったいくらも併せて水切りしておくと、ロスを防げます。
いくらと筋子、両方の下処理の方法がわかりました!
出典:写真AC