イカの塩辛とは
イカの塩辛は、生のイカを塩漬けにして酵素の力で発酵させた、発酵食品の一種です。白いご飯にのせたり、お酒のおつまみにあわせたりと、さまざまな食べ方があります。市販の塩辛の他、家庭で手作りすることもできます。
多く使われるのはスルメイカ
イカの塩辛で一番多く使われるのは、スルメイカです。他のイカに比べて肝が大きく、うまみの濃い塩辛を作ることができるからです。また、スルメイカは一年中とれるため価格が安定しているのも、理由の一つです。スーパーで選ぶときは、白くにごっておらず赤褐色の濃いものが新鮮です。
おすすめのシーズンは冬
一年中手に入るスルメイカですが、中でも塩辛にむいているシーズンは冬です。冬のスルメイカは肝が大きいため、濃厚な塩辛になります。他の季節に手作りの塩辛を作るときは、イカの身2杯に対して3杯分の肝を使うのがおすすめです。残った身の部分は、お刺身やイカフライで食べるとおいしいですよ。
保存期間は冷蔵庫で1週間
手作りのイカの塩辛は、市販のものに比べると塩分が少ないため、保存期間は短くなります。冷蔵庫で保存した場合、保存期間は1週間です。それ以上長く保存したい場合は、冷凍庫に入れておくと約1カ月になります。冷蔵庫で保存する間は、毎日清潔なはしで全体を混ぜるとうまみが増します。
ここからの説明は、最後にご紹介する銀座渡利さんの動画を参考にさせて頂きました。
説明の中では、ゲソがある方が「下」・三角形にとがっている方を「上」とするね。
イカの塩辛の作り方
イカの塩辛を手作りする手順を紹介します。さまざまな方法がありますが、ここでは3日間干してから身と肝をあえる、本格的な作り方です。一見難しそうに思えるかもしれませんが、さばき方さえ慣れれば簡単に作れますよ。
イカの塩辛の作り方1:イカをひらく
イカをさばきます。さばき方にはさまざまな方法がありますが、ここでは包丁を使って開いていく方法を解説します。まず、イカの目の上に包丁を差し込み、刃を上向きにしたままゆっくり包丁を進めましょう。一番上まで届いたら、両手でイカの胴を開きます。
イカの塩辛の作り方2:肝を取り出す
胴を左右に開くと、内臓が現れます。胴を片手で押さえ、もう片方の手で目のあたりを持って持ち上げると、ゲソと目に内臓が全てついた状態で外れます。包丁で、内臓と目の間を切り離し、一番大きな肝以外の内臓を手ではずせば完了です。目やゲソは塩辛に向かないので、塩焼きや天ぷらなどで食べてください。
スミ袋を破らないように注意
スルメイカの肝には、スミ袋がついています。これを破ってしまうと、身や肝が黒くなるため仕上がりがやや悪くなります。外す方法は、包丁で切り離した下側からスミ袋をつまんでひっぱるだけです。もし破ってしまった場合は、キッチンペーパーなどで拭き取るときれいになりますよ。
イカの塩辛の作り方3:皮をむく
イカの胴体には、表と裏に2枚の皮がついています。端のほうを少し包丁で切り、そこから少しずつ引っ張ると簡単にむけます。キッチンペーパーやふきんを使うと、皮がすべりにくくなりますよ。えんぺらと呼ばれる耳の部分も、忘れず皮をむいてください。
イカの塩辛の作り方4:肝に砂糖と塩をふる
肝はしっかりと水分を抜く必要があるため、最初に砂糖をふります。砂糖は塩に比べて分子が大きいため、先にかけることで水分が抜けやすくなる効果があるからです。甘くなりそうに思えますが、肝の表面を覆う皮のおかげで甘みはほとんど入ってきません。そのあと、全体がうっすらと白く覆われるまで塩をまぶします。
イカの塩辛の作り方5:身に塩を振る
身は肝より薄く皮をむいているため、塩はやや少なめにかけます。また、砂糖をかける必要はありません。あら塩でなく目の細かい塩を、全体的に偏りがないようにかけていきます。
イカの塩辛の作り方6:冷蔵庫で干す
ざるに乗せた状態で、冷蔵庫で3日乾燥させます。干し方は、ざるの下に水分受けの皿をしき、ラップはしません。冷蔵庫で乾燥させることに抵抗がある場合は、脱水シートを使うのがおすすめです。また、冬の寒い時期であれば、風通しのよい場所で陰干しするのもおすすめの干し方です。
イカの塩辛の作り方7:塩を洗い流す
3日たつと、肝は黒くなり、身は乾いて透明感が出てきます。このままでは塩気が強すぎるので、表面の塩を洗い流します。日本酒・みりん・しょうゆを混ぜた調味液を作り、身をさっとくぐらせてキッチンペーパーで表面をふきます。肝は、液の中で表面についている塩を洗い落としておきます。
イカの塩辛の作り方8:身を刻む
身を刻みます。横に半分にわけ、さらに切りやすいように縦にわけます。そのあと、できるだけ細く刻みましょう。イカを細切りにするときは、押すように切る方法と引くように切る方法の2つがありますが、乾燥の具合にあわせて切りやすいほうで切ってください。
イカの塩辛の作り方9:肝をすり鉢でする
肝は、やや硬い薄皮に包まれています。このままでは舌触りが悪いため、中の液状の部分だけを使います。肝のはしを包丁で切って、中をしごき出します。指で押してもうまく出てこないときは、しゃもじを使ってしごくとうまくいきますよ。すり鉢でするか裏ごしをすると、舌触りがなめらかになります。
イカの塩辛の作り方10:身をあえて寝かせる
肝と身をあえます。この状態でも食べられますが、できれば1日冷蔵庫で寝かせます。そうすることで肝と身の塩加減がととのい、また肝のうまみを身になじませることができます。冷凍するときは、この状態で冷凍庫に入れるといいでしょう。食べるときは、自然解凍をします。
薬味を加えてもおいしい
一緒に薬味を加えることもできます。肝の風味が苦手な人も、薬味を加えることで食べやすい塩辛になります。おすすめは、ユズの皮です。皮の表面を薄くむき、細切りにして混ぜればできあがりです。また、ネギや大葉、ゆずの絞り汁などもおすすめです。
イカの塩辛の寄生虫対策
イカには、アニサキスという寄生虫がついている場合が多いです。アニサキスは、体長2cmほどの白い糸に似た生き物です。生きたアニサキスを食べると、胃や腸に穴を開けようとするため、激しい痛みを起こします。しかし、調理する際に気をつけることで、アニサキス症は防げます。
和えたあと冷凍する
一番のアニサキス対策は、冷凍です。アニサキスは、-20度で24時間冷凍することで死んでしまいます。家庭用冷凍庫は-18度までしか下がらないものが多いため、48時間冷凍すると安心です。解凍イカを買うのが一番安全ですが、新鮮な釣りたてイカを使う場合などは、身と肝をあえた後に2日冷凍庫に寝かせるといいでしょう。
身を細く切る
アニサキスは、傷がつくとすぐに死んでしまいます。そのため、生きたままのアニサキスがいたとしても、できるだけ細く切ることで対策することができます。また、肝をすり鉢ですったり裏ごししたりするのも、肝に残っているアニサキスを退治するためでもあります。
身の干し方に気をつける
アニサキスは、目に見えないほど小さいというわけではありません。そこで、身をしっかりと干すことで、身についているアニサキスを見えやすくすることができます。干すときに、できるだけ重ならないようにざるに並べましょう。もし糸くずのようなアニサキスを見つけたら、そこだけ切り落せば食べられますよ。
まとめ
イカの塩辛は、塩漬けの肝と身をあえてできるおいしい発酵食品です。さばき方や干し方に気をつければ、初心者でも簡単に作ることができます。しかし、寄生虫であるアニサキスには注意が必要です。冷凍したイカを使うよう心がける他、目視できる範囲ではとり除き、最後にもう一度冷凍すれば安心です。
参考動画
この記事は、銀座渡利さんの動画を参考にさせていただきました。他にもさまざまな魚介類を扱っていますので、よろしければご覧ください。
出典:写真AC