海老芋とは?
海老芋はサトイモ科サトイモ属の根菜です。里芋の変種である唐芋(トウノイモ)に、頻繁な土寄せなど特別な手を加えて栽培しています。芋に縞模様があり、寄せた土の重みで曲がっていることが、海老芋の名の由来です。京野菜の一つとしても知られています。粘り気があり、きめの細かい肉質が特徴で、冬が旬の高級食材です。親芋から子芋へと増えることから、縁起物としてお節料理にも使われます。
手がかゆくなることも
海老芋は里芋と同様に、下処理をしていると手がかゆくなることがあります。原因はシュウ酸カルシウムという成分で、針状の結晶が皮膚に刺さることでかゆみや痛みを感じるのです。かゆみを軽減する方法としては、手を酢水で洗う、粗塩をこすりつける、などがあります。
海老芋の剥き方
海老芋は土を落とすと乾燥して品質が低下するため、土がついていることがあります。そこでまず、たわしなどを使って皮についた泥をよく洗いましょう。
里芋類の剥き方としては、六方剥きや八方剥きがあります。六方剥きは断面が六角形、八方剥きは断面が八角形になる剥き方で、見た目もよく、煮崩れしにくいのが利点です。今回は八方剥きを解説します。六方剥きに比べて初心者にも形が整えやすく、無駄になる部分も少ないです。
断面が八角形になるように剥くなんて、難しそう。
きれいな八角形が、比較的簡単にできるコツをご説明するわね。
まず断面を四角形にする
まず、海老芋の上下の端を水平に切り落とします。続いて側面の皮を、上から下に向かって厚めに剥いてください。画像①の部分を剥いたら、次はその反対側の②を剥きます。その間の③を剥いて、反対側の④を剥く、という要領で、まず断面が四角形になるように剥きましょう。
①②③④の間をそれぞれ剥きます。剥き残した部分や、中が透明になって使えない部分は削りましょう。断面が八角形の八方剥きの完成です。
本当に簡単に八方剥きができたわ。次はあく抜きの方法を教えて。
海老芋のあく抜きの仕方
皮を剥いた海老芋を、適当な大きさに切ります。切ったらすぐに水にさらすのが、上品な白さの煮物を作るコツです。海老芋はあくが回りやすいので、放置すると全体的に紫がかったグレーになってしまいます。
さらにしっかりとあくを抜きましょう。海老芋が入ったボウルに細く水を注ぎ、溢れさせながら、40分程度おきます。水が透明になるのが、終了時間の目安です。
今度は下茹でよ。煮崩れしないコツを解説するわね。
あく抜きの後は下茹で…、下処理に結構時間がかかるのね。
おいしいものには手間暇がかかるわね。でも、簡単な作業ばかりよ。
海老芋の下茹での仕方
海老芋を、米のとぎ汁(または水に米をひとつかみ入れたもの)で下茹でします。芋が水面から出ないように、キッチンペーパーなどを被せましょう。根菜類を茹でるときは、水から茹でるのが鉄則です。お湯から茹でると先に表面だけ先に火が通り、煮崩れてしまいます。水から茹でると、芋の内部と表面の温度差が小さくなり、芋全体に均一に火が入るのです。
弱火で芯が残る程度
下茹での火加減は弱火(90℃程度)です。強火で煮ると鍋の中で芋がぶつかり合い、煮崩れてしまいます。また、火を通し過ぎると、だしで炊く前に移動させる段階で煮崩れを起こしやすいです。海老芋は急にやわらかくなるので注意して、芯が残る程度で終了しましょう。時間の目安は7~10分程度です。
下茹でが終わったら、再度水にさらします。水を細く注ぎ入れてオーバーフローさせながら、水が透明になるまでさらしてください。水流で芋が踊ってぶつかり合わないように注意しましょう。
さあ、今度は海老芋の煮方をご説明しましょう。
海老芋の煮方
海老芋の煮方では、ごく薄めのかつおだしを使うのがおすすめです。海老芋の白さと香りを生かすため、だしの色と香りがつき過ぎないようにしましょう。海老芋自体のの甘みを感じたいので、砂糖も控えめにします。煮崩れを防止してくれるみりんも、この段階で加えてください。弱火で炊いて甘みを入れます。時間は10分程度が目安です。
薄口醤油を香りづけ程度に加え、味見をします。味がよければ、海老芋がやわらかくなるまで弱火で煮てください。火が通っているかどうかは、串を刺してみれば確認できます。できるだけ細い串(普通の串を削ってもよい)を、色が変わってしまった芋や端っこの部分に刺してみるとよいでしょう。串が抵抗なく刺さったら火を止め、一晩寝かせて味を含ませます。
最近は、素材の色を最大限に生かす透明な醤油もあるわよ。芋が煮汁に浸かるようにキッチンペーパーなどを浮かべておきましょう。
いよいよ海老芋の煮物の完成ね!
海老芋の盛り付け方
海老芋の煮物を盛り付けます。冷めたままでもおいしいですが、温めても結構です。適度な大きさに切ったり、盛り付けたりする際には、崩れないように優しく扱います。
お好みで煮汁をかけます。味噌などで味を加えたり、柚子などで香りを加えたりするのもおいしいです。
とっても上品で優しいお味だわ!
美しい海老芋の煮物を作ろう!
海老芋は優しい甘みのある、きめの細かい芋です。冬が旬で、お節料理の食材としても人気があります。あく抜きの際の水流も、加熱の際の火加減も、静かに優しくするのが煮崩れ防止のコツです。時間はかかるかもしれませんが、難しい作業はありません。素材の味と香り、色を最大限に生かした、美しい煮物を目指してみてはいかがでしょうか。
参考動画
本記事は銀座渡利様のYouTubeチャンネルを参考にさせていただきました。プロの板前の解説動画はわかりやすいと評判です。魚介類のさばき方や料理法が中心ですが、定番の家庭料理の解説も多数ございます。よろしければぜひご覧くださいませ。
水分が垂れない程度まで乾かすか、キッチンペーパーなどで水分を拭き取ると、皮を剥くときにかゆみが出にくいわ。