冬においしい人気料理!ブリ大根
ブリ大根は、冬に旬を迎えるブリと大根を組み合わせた定番料理です。ブリよりも、ブリの旨味がしみ込んだ大根がたまらないという声も少なくありません。白ごはんやお酒にもよく合います。本記事では、プロの和食料理人「銀座渡利」流のブリ大根の作り方をご紹介しましょう。時短で簡単に作るには切り身とあらのどちらを選ぶべきか、また、煮る順番の違いにも注目です。
煮物とか魚料理って、「難しそう」っていうイメージがあるの。大丈夫かしら?
おいしいブリ大根を作るには、下処理が大切なの。作業は簡単だから、大丈夫よ。
ブリ大根の作り方①大根の下ごしらえ
大根を適度な厚さに切り分けてください。煮物に使う大根は、できれば先端や葉のつけ根ではなく、真ん中の部分が適しているとされます。大根は皮が厚いので、断面の外皮の内側にうっすらと見える線を目安にして、厚め(3~5mm)に皮を剥きましょう。煮崩れを防ぐために、縁を削って面取りをします。
大根の皮って、厚いのね!なんだかもったいない気がするわ。
皮の部分は硬くて火が通りにくいので、厚く剥いて全体が同じ時間で煮えるようにするのよ。剥いた皮はきんぴらや漬物に利用できるわ。
大根は、米のとぎ汁(なければ水に米をひとつかみ入れる)で10分程度下茹でしてください。大根が踊り過ぎない程度の火加減が最適です。下茹でのひと手間であくが抜けて味がしみ込みやすくなり、おいしいブリ大根に仕上がります。芯が残っていて大丈夫です。大根に米ぬかの臭みがついているため、水道の水を細く注ぎながら水にさらします。時間は10~30分程度です。
下茹でだけでなく、そのあと水にさらすことも大切なのね。
よし、これで大根の下処理は完了よ。次はブリの下ごしらえね。
ブリ大根の作り方②ブリの下ごしらえ
ブリは切り身なら、塩をふって10分程度寝かせます。あらを使う場合は、塩を多めにふり、寝かせる時間も長めに(15~20分程度)しましょう。臭みのある水分が浮いてくるので、水できれいに洗い流してください。
塩の代わりに砂糖をふって臭み抜きをする方もいるわ。臭みを抜きは浸透圧を利用しているので、どちらでも大丈夫よ。
お湯を沸かし、ブリを湯引きします。1切れずつお湯に入れて、ブリの表面が白くなったら引き上げ、氷水に取ってください。うろこや血合い、皮のぬめりなどが残っている場合は、取り除きましょう。この作業をていねいに行うと、食べやすくおいしいブリ大根に仕上がります。
さあ、いよいよブリ大根の煮方を説明するわね。
ブリ大根の作り方③ブリと大根を煮る
下ごしらえが終わったブリと大根を煮ます。切り身を使うか、あらを使うかで、煮方が変わるのがポイントです。どのように違うのか見ていきましょう。
切り身とあらで順番が違う!
切り身からは、それほどだしが出ません。それどころか切り身を煮すぎると、旨味が抜けてパサついてしまいます。そこで、切り身を使う場合は大根を先に入れましょう。時短で作りたいときは切り身がおすすめです。一方、あらを使う場合は、骨からだしがじっくりと出てきます。そこで、大根よりもあらを先に煮ます。ブリのあらの旨味を、一晩かけてじっくりと大根にしみ込ませるのがおすすめです。
切り身とあらでは煮る順番が違うなんて、知らなかったわ!これでブリがぱさついたり、大根がふにゃふにゃになったりする失敗が防げるの?
そう、ブリも大根も煮込み過ぎると旨味や水分が出過ぎてしまうわ。それぞれの煮込み加減がほどよくなるようにするのがポイントなのよ。
切り身の場合とあらの場合に分けて、もう少し詳しく煮方を教えて。
切り身を使う場合
切り身を使う場合は、まず水に昆布を浸した昆布だしに大根を入れます。酒、砂糖、醤油を加え、下味程度に味付けしてください。コトコトと30分程度、大根にすっと串が通るまで煮ます。
ブリの切り身を加えて、さらに煮ます。味見をし、必要に応じて砂糖や醤油を追加してください。みりんを入れて照りを出し、煮詰めてゆきます。切り身を入れてからの時間の目安は15分程度です。落し蓋を使うか、煮汁をこまめに上からかけて、味を入れていきましょう。
ブリの切り身を一度取り出し、旨味が抜け過ぎるのを防ぎます。大根だけを入れたまま煮汁を煮つめ、ブリの旨味を大根にしみ込ませてゆきましょう。ほどよく煮詰まったらブリを戻し入れ、温めたら完成です。
切り身は長く煮込まないから、時短で作れて助かるわ。
あらを使う場合
ブリのあらを使う場合は、先に昆布だしと酒であらを煮ます。頭や骨からしっかりと旨味を引き出してから、大根を加えましょう。あくが浮いてきたらその都度すくって味付けし、ある程度煮汁が煮詰まってきたら火を止めてください。一晩(または冷めるまで)おくと、ブリの旨味が大根にしみ込んでゆきます。召し上がる前に温めて完成です。
あらの場合は時間がかかるけれど、ブリの旨味がたっぷり味わえるのね。食べる前の日にがんばって作れば、当日は温めるだけで簡単ね。
ブリ大根の作り方④盛り付ける
ブリと大根を盛り付けます。ブリと大根、どちらを主役として盛り付けるかはお好み次第です。煮汁を適量かけ、青みを飾ると美しく見えます。
ところで、ブリとハマチって違う魚なの?
ブリとハマチの違いは結構ややこしいの。簡単に説明するわね。
ブリとハマチの違い
ブリは成長に応じて名前が変わる出世魚です。さらに、地方によって呼び名が大きく違う魚でもあります。例として関東と関西の呼び名の変化を次表に示しました。北陸や四国など地方によっては、もっとさまざまな呼び方があります。
大きさ | 35cm以下 | 35~60cm | 60~80cm | 80cm以上 |
関東での呼び名 | ワカシ | イナダ | ワラサ | ブリ |
関西での呼び名 | ツバス | ハマチ | メジロ | ブリ |
出世魚のブリは、関西圏ではお節料理になくてはならない、おめでたい魚よ。
ハマチが大きくなるとブリになるのね。そういえば、ハマチというと養殖もののイメージがあるわ。
昔は、養殖ものは天然ものよりも臭みが強くて劣ると思われていたわ。でも最近では養殖技術が向上して、そのイメージは払拭されつつあるの。
ハマチ(ブリ)の養殖場の多くは関西圏にあります。従来は湾内など限られた場所で養殖されていたため、ハマチのサイズまで育つと「ハマチ」の名で出荷されていました。関東にはハマチの呼び名がなかったため、ハマチは養殖ものというイメージがついたといわれます。近年では養殖を外海で行うことが増え、餌にもさまざまな工夫がされてきました。
養殖ハマチや養殖ブリもおいしい
その結果、出荷時の抗生剤の残留はなくなり、臭みも少なく、味も質も天然と比べて遜色なくなっています。ブリのサイズまで育ててから出荷されることも多くなりました。天然ブリよりも養殖ブリのほうが、浜値がよいこともあるといいます。ブリ大根にするなら脂のりのよい養殖もののほうが、身がパサつかずにおいしく仕上がるかもしれません。
最近は餌に柑橘類を加えて、魚臭さや魚肉の変色を抑えた「フルーツ魚」もあるわ。ブランド化されて人気の養殖ブリもあるのよ。
養殖ものも安心でおいしいのね!
おいしいブリ大根で冬を乗り切ろう!
冬に旬の食材を組み合わせたブリ大根は、白ごはんにもお酒にも合います。ていねいな下処理をし、素材ごとに適切な煮こみ加減に仕上げたブリ大根は絶品です。ぜひ、ご家庭のブリ大根にもプロの技を取り入れてみてはいかがでしょうか。愛情こめた優しい味が冬の寒さを吹き飛ばし、家族を笑顔にしてくれることでしょう。
参考動画
本記事は銀座渡利様のYouTubeチャンネルを参考にさせていただきました。プロの料理人が落ちついた語り口で、魚介類のさばき方や調理をわかりやすく解説してくれます。魚の知識を広げながら、おいしい料理を作りたい方にぴったりです。よろしければぜひご覧くださいませ。
産卵期前に脂がのった冬のブリを特に「寒ブリ」と呼ぶのよ。ブリ大根は冬にぜひ作りたい料理のひとつね。