なぜ豚肉の生焼けは危険なの?
豚(豚レバーを含む)やイノシシ・シカの肉や内臓を半生や生で食べると、公衆衛生上のリスクが高く危険とされています。生の豚肉には食中毒の原因になる、さまざまな病原体や寄生虫が感染している可能性があります。万が一食べた場合、原因となる病原体によっては重篤な症状が出る場合があります。
サルモネラ菌
特徴
- 動物の腸管、自然の中(下水や川、湖など)の広範囲で分布している。
- 生肉、特に卵や鶏肉から感染する危険性が高い。
- 乾燥に強い。
症状
- 病原体の潜伏期間は6〜72時間程度。
- 激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐がある。
- 長期間にわたり、保菌者になることもある。
対策
- 肉・卵は十分に加熱する(75℃以上で1分以上)。
- 生肉や半生の状態で肉を食べない。
- 卵の生食は、新鮮なものだけにする。
- 低温保存をする。
カンピロバクター
特徴
- 家畜や家きん類の腸管内に生息する。
- 主に鶏肉や臓器、飲料水を汚染する。
- 乾燥にとても弱い。
- 通常の加熱調理で、病原体は死滅することが多い。
- 0〜4歳の子どもと15〜25歳の患者が多く報告されている(海外旅行の食事やBBQなどで間違って食べたことが原因と考えられている)。
症状
- 潜伏期間は1〜7日と長い。
- 発熱や倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢、血便などがある。
- 自然治癒で完治することが多い。
対策
- 調理器具を熱湯消毒し、よく乾燥させる。
- 生肉と他の食品との接触を防ぐ。
- 十分な加熱(65℃以上、数分)を行う。
腸管出血大腸菌
特徴
- 主に牛や豚の腸管にいる細菌である。
- ベロ毒素(病原体大腸菌で生産され菌体外分泌される毒素のこと)を生産する大腸菌である。
- 主に夏季に増加する。
症状
- 腹痛や下痢、嘔吐などを引こ起こす。
- 2〜9日潜伏し、約6週間もの間症状が継続することがある。
- 人によっては感染しても、症状がでないこともある。
対策
- 普段の免疫力によって発症するかが変わるため、日頃から規則正しい生活を心掛ける。
- 生の豚肉や牛肉はしっかりと肉の中心部まで火を通してから食べる。
- 二次感染も考えられるため、念入りに手洗いうがいを行う(特に食事前やトイレ後)。
E型肝炎ウイルス
特徴
- 豚の生レバーや生の豚肉からの感染する危険がある。
- 二次感染の可能性もある。
症状
- 38℃以上の高熱が出る。
- 発熱後、全身の倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐、右季肘部痛などの症状が現れる。
- 褐色尿や黄疸も見られる。
- 妊婦が感染すると、重篤化する可能性が高いので、要注意である。
- 15〜50日の約6週間潜伏し、発症から1ヶ月経ったあと、完治する。
- この感染症は、症状に応じて専門的な治療を必要とする。
対策
- 生の豚肉やレバーはしっかりと加熱してから食べる。
- 二次感染の可能性が高いため、調理器具を清潔に保つことが大切である。
- 手洗いうがいをしっかりする。
トキソプラズマ症
特徴
- 豚の寄生虫で、豚の生肉や半生の肉を多く食べる国や地域で感染する人が多い。
- トキソプラズマ原虫が人に感染して発症する。
- 免疫に異常がなければ、感染しにくい。
症状
- ごくわずかな人しか症状が出ない。
- 約1週間潜伏するが、風邪と似たような症状しか出ない。
- ほどんど自然治癒で完治する。
- 妊婦が感染してしまうと、死産や流産の可能性があるので要注意である。
対策
- 免疫に異常がなければ症状が出ないため、特に対策は取られない。
- 生の豚肉または半生の状態で食べることのないよう、中心部までしっかり火を通す。
寄生虫
特徴
- 豚肉には「有こう条虫」というミミズのような見た目の寄生虫が赤身に多く付着しており、この「有こう条虫」に感染する。
- 生の豚肉や生焼けの豚肉が感染源となる。
- 最近では、海外からの輸入キムチに寄生虫が付着して、食べた人から感染が広がるケースも報告されている。
症状
- 腹痛や下痢を起こす。
- 寄生虫が中枢神経に入り込むと、痙攣発作や神経徴候が引き起こす危険性がある。
対策
- 「有こう条虫」を駆除するには、豚肉を−5℃で4日間、−15℃で3日間、−24 ℃で1日冷凍すれば死滅する。
- 保存するときには、しっかりと冷凍することを心掛ける。
- 加熱するときには、しっかりと火を通すことを心掛ける。
では食中毒の原因となる代表的な病原体や寄生虫を紹介していきましょう。