はじめに
「塩抜き」とは塩漬けしたそのままでは、しょっぱすぎて食べられない魚や肉などの食材の塩分をぬく調理前の下処理のことで「塩だし」ともいいます。真水にさらすだけでも食べることができる食材もありますが、食材によっては真水を使うと表面の塩だけが早く抜けてしまう上、一緒にうまみ成分も抜けて水っぽくなってしまう場合があります。手順や方法をまちがうと美味しさを損なってしまうのです。
塩蔵する意味
塩は「塩味をつける」ときにかかせないものですが、味付け以外で塩を利用する方法に大量の塩に漬けて食材を保存する「塩漬け」があります。ではなぜ塩漬けすると食材は腐りにくいのでしょう?
塩による殺菌効果
残念ながら、塩には殺菌効果の役割はありません。野菜や魚、肉などの食材は常温で置いておくと、食材の水分で細菌やカビなどの微生物が繁殖して腐りやすくなってしまいます。そこで食材の微生物を増やしてしまう原因である水分を吸い取るために塩を使いました。塩をまぶしたり漬けたりする意味は浸透圧で水分を抜き、保存に向かない・腐りやすい食材を長期的に貯蔵するためでした。
「砂糖漬け」も砂糖の浸透圧を利用した保存方法だね。
一番美味くて、まずいもの
徳川家康の時代に一番「美味しくて、美味しくないもの」と挿話で語られていた塩ですが、塩の味付けしだいで食材が美味しくなり、塩味が過ぎると塩辛くて食べられなくなります。人間が美味しいと感じる塩分濃度は0.9%前後といわれています。実は人間の体液の塩分濃度が約0.85%で、美味しく感じる塩分濃度とほぼ一緒というのもおもしろいですね。
塩抜きして美味しくいただく
塩蔵品の食べ方ですが、大きく分けるとつけた塩味をいかして「そのまま食べる」と、塩漬けした塩分を「塩抜きして食べる」の二通りがあります。せっかく保存・熟成しておいた魚や肉、野菜です。美味しくいただける塩抜きのやり方をご紹介します。
そのまま食べる
塩味をいかして「そのまま食べる」塩蔵品は数多くあり、塩分濃度をおさえ発酵や熟成をさせてうまみを引き出した食品には、キムチや、塩辛、チーズなどがあります。
塩抜きして食べる
塩漬けした塩分を「塩抜きして食べる」食材は長期保存を目的としていて、食品の重量の3~4割程度の塩に漬けこんであり、数の子や塩鮭、海藻、漬物や山菜の塩漬けなどがあります。
呼び塩の原理
調理の塩の使い方に「呼び塩」があります。塩蔵品に含まれている塩分を塩水を使って塩抜きするのですが、どのような原理で塩を抜いているのでしょう?
薄い塩水の方が塩は抜けやすい?
呼び塩は浸透圧の原理を利用した方法です。液体の中で濃度に差があると、濃度の濃い部分から薄い部分に移動してゆっくり液体全体の濃度を均一にしようという変化がおこります。この原理を利用してゆっくりと食品の塩気を抜いているのです。
塩水を使うと表面と中心部分の塩を均等に抜くことができるんだね。このとき使う塩を「呼び塩」または「迎え塩」というんだよ。
真水からだとうまみがなくて水っぽい
真水からだと濃度差が大きすぎるので急激に塩は抜けますが、塩と一緒に「うまみ」も逃げてしまいます。さらに抜けた「うまみ」の部分に水分が入り込み、食品が水っぽくなるのです。
次ページからはさっそく魚類の塩抜き方法について紹介するぞ!
塩を利用した以外の保存のやり方はあるの?