心身がホカホカ温まる!おでん!
冬に食べたい料理として、おでんを上位に挙げる方は少なくないかもしれません。煮込んでよく味がしみた具材が、心身ともにホカホカ温めてくれます。関西風や関東風、地方や家庭によって味付けや具材が大きく異なるのも、おでんの特徴です。食べ慣れたおでんも落ち着きますが、たまには変わった具材を加えたり味を変えたりしてみるのも面白いかもしれません。
プロの料理人のおでんをご紹介
本記事では、プロの料理人「銀座渡利」流おでんの作り方をご紹介します(参考動画は記事の最後に添付)。前日にだしの準備をし、昼前後から調理を始めれば、その日のうちにおいしく食べられるおでんです。
ひと手間かけると、一品料理としても成り立つおいしいおでんになるの。具材に合わせた下処理、煮込む順番と時間が大切よ。
おでんの作り方(1)材料をそろえる
今回用意した材料は次の通りです。
だし | 昆布だし(一晩水に浸けた一番だし)、かつお節 干ししいたけのだし(一晩水につけた戻し汁) |
調味料 | 酒、薄口醤油、塩 |
具材 | 大根、こんにゃく、卵、玉ねぎ、手羽元、さつま揚げ、わかめ |
おでんの作り方(2)だしを取る
前の晩に、昆布と干ししいたけをそれぞれ水でもどして、だしをとっておきます。昆布だしを昆布ごと火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出してください。沸騰させて浮いてきたあくをていねいにすくいましょう。火を止めて二呼吸ほどおき、かつお節を加えて10分程度放置します。
ざるにキッチンペーパーなどを敷き、かつお節と干ししいたけをそれぞれ濾します。絞ると雑味が出るので、自然に濾されただしを使いましょう。昆布とかつお節から取った一番だしと、干ししいたけのだしができました。
次は、具材の下ごしらえよ。
おでんの作り方(3)具材別に下ごしらえする
具材によって適切な下処理や下茹でを行うと臭みなどが抜け、よりおいしいおでんに仕上がります。素材の味が楽しめ、見た目も美しくなるプロの下処理の方法を、素材ごとにご紹介しましょう。
具材ごとに別々に下ごしらえするの?面倒くさいのかしら…。
やることは簡単な作業ばかりよ!せっかく手作りするのですもの、コンビニよりもずっとおいしいおでんを作りましょう!
①大根の下ごしらえ
大根を下ごしらえします。おでんに使う大根は、できれば先端や葉元部分ではなく、真ん中辺りがおすすめです。お好みの厚さに切ってから厚めに皮をむきます。煮崩れしにくくなるように、面取りをしてください。片面に十字に切れ込み(隠し包丁)を入れると、火の通りと味のしみ込みがよくなります。
大根の皮を捨てるのはもったいないわ!きんぴらにすると、ご飯によく合うおかずに変身するのよ。
米のとぎ汁(なければ米をひとつかみ入れた水)を用意し、大根を入れて火にかけます。10~20分程度下茹でしましょう。少し透明感が出てきたけれど、芯が残っている程度で結構です。茹で上がったら水にさらし、米のぬか臭さを抜きます。
②こんにゃくの下ごしらえ
こんにゃくは、細かい斜めの格子状に隠し包丁を入れ、食べやすい大きさに切ります。こんにゃく特有の臭みがあるので、塩を適量ふって軽くもんでください。5分程度寝かせると、こんにゃくから水分が出てきます。
塩を洗い流さずに、こんにゃくを沸騰したお湯に入れて2~3分下茹でしましょう。臭みが抜けたこんにゃくは、おかあげ(水にとらずに、そのままざるに上げる)にして、自然に冷まします。これにより味のしみ込みもよくなるのが利点です。
へえ、こんにゃくの下ごしらえに、プロはこんなに手間をかけるのね。でも難しい作業ではないから、簡単にできそうだわ。
③半熟卵の下ごしらえ
ゆで卵にする卵は、新鮮なほど殻がむきにくいので、賞味期限が近いものから使うとよいでしょう。室温に戻しておき、水から茹でるとひび割れしにくくなります。黄身が中央にくるように、沸騰するまでは軽く転がしてください。半熟卵にしたいので、沸騰後8分程度経ったら氷水にとって急冷しましょう。
卵の殻にひびを入れて、殻をむいてください。急冷したことで膨張した中身がきゅっとしまり、殻の下に隙間ができたことで、きれいにむきやすくなっているはずです。ゆで卵の硫黄臭さを抜くために、水にさらしておきます。
おでんの卵って固ゆでが普通よね?せっかく半熟卵にしても、煮込んでいるうちに黄身がかたまってしまうんじゃない?
煮る順番と味をしみ込ませる方法にポイントがあるの。具材を煮込むときにくわしく説明するわね。
④玉ねぎの下ごしらえ
おでんに玉ねぎが入っているのって、見たことがないかも…。
料理好きで知られるタモリさんは、玉ねぎのおでんがお気に入りだそうよ。一度試してみても損はないかもしれないわ。
玉ねぎは皮をむき、芯を取らずに4等分程度に切り分けます。そのまま煮込むとばらばらになってしまうので、竹串や爪楊枝を刺して固定してください。沸騰したお湯で20秒程度下茹でし、おかあげにします。
玉ねぎの味がつゆに出るのが気にならない方は、下茹でしなくてもよいでしょう。蒸した玉ねぎを丸ごと入れる方もいるわ。
⑤手羽元の下ごしらえ
手羽元は骨からとてもよいだしが出る具材です。水を沸騰させて塩をひとつまみ加え、手羽元を入れて40秒程度湯引きしてください。この下処理で臭みとあくが抜けます。下茹でが終わったらざるに取っておきましょう。
⑥さつま揚げの下ごしらえ
さつま揚げは熱湯で10秒程度下茹でし、油抜きをします。練り物はよいだしが出ますが、茹で時間が長過ぎると味が抜けてしまうので、注意してください。下茹でが終わったら、おかあげにしておきます。
さあいよいよ、それぞれの具材を煮込んでいくわよ!具材を煮る順番と、それぞれの素材に適した煮込み加減に注目してね。
おでんの作り方(4)具材を煮込む
具材を煮込む際に、コトコトと長く煮込めばおいしいおでんができると思っている方もいるかもしれません。しかし、どんな具材でも、煮込み過ぎると味が抜けてしまいます。それぞれの具材に適した煮込み時間になるようにするのがポイントです。そのためには具材を入れる順番が非常に大切になります。
①だしに調味料と肉を入れる
まずは煮汁を用意します。今回は一番だし(昆布とかつお節)と干ししいたけのだし汁を1:1に混ぜたものです。味付けは、人気の関西風おでんを意識して、酒、薄口醤油、塩で上品な味付けにしています。だしも味付けもお好みで調整してください。
沸騰してあくをすくったら80~90℃
おでんを煮込む順番として、最初に入れるのは手羽元です。骨からよいだしが出るので長く煮込みます。下茹ではしてありますが、多少あくが出るかもしれません。沸騰したらていねいにあくをすくいましょう。沸騰させるのはこのときだけで、そのあとは火を少し弱めます。
②火が通りにくい具材を入れる
沸騰がおさまって80~90℃に落ち着いたら、火の通りや味のしみ込みが遅い具材を加えます。今回の具材の中では、大根、こんにゃく、玉ねぎです。10分程度煮込みます。
③練り物を入れる
さつま揚げを加え、さらに10分程度煮込みます。火を止めて、2時間程度冷ましながら味をしみ込ませてゆきましょう。
練り物は、煮込み過ぎると旨味が抜けてしまうので、注意しましょう。煮物は冷めるときに味がしみ込むのよ。
④冷ます途中で半熟卵を入れる
冷ましてゆく途中で、半熟卵を入れます。黄身は65~70℃で固まるので、それより低い温度になっているのを確認して入れましょう。火は止めたまま、さらに3時間程度冷まします。この間に半熟卵は黄身が固まることなく、味がしみてゆくのです。
なるほど、これがおでんに半熟卵を入れるコツなのね!でも温めなおすときに加熱されてしまうのでは?
それを避けるために、もうひと工夫するのよ。
⑤半熟卵を取り出して温める
食べる直前に温める際には、半熟卵を一度取り出します。この頃には、卵の表面にうっすらとつゆの色がついているはずです。
火をつけて80~90℃まで温度を上げ、具材の中まで温めます。煮込む順番として最後に入れる具材は、だしが出るわけでもなく、温めるだけで食べられる素材です。今回は半熟卵とわかめがこれにあたります。5分程度温めたら火を止めて出来上がりです。
おいしそう!おでんは、素材によって煮込む順番と時間がとても大切なのね!
そうよ。半熟卵は黄身が固まらないうちに、取り出して召し上がってね。
おでんの作り方(5)盛り付ける
具材のひとつひとつに適切な下処理と煮込みを行ったおでんは、素材の味が生きた一品料理としても成り立ちます。薬味もいろいろ試してみたいものです。画像では、手羽元とわかめにからし、大根に柚子、玉ねぎに七味、半熟卵に柚子胡椒を添えています。もちろん、おでんの鍋を食卓に置いてみんなで囲み、思い思いの薬味で食べるのもおいしいです。
ひと手間かけてワンランク上のおでんに!
おでんはコンビニでもおなじみですが、各家庭のこだわりを詰め込んだおでんに勝るものはないかもしれません。おでんは時間をかけて煮込めばおいしいというわけではなく、素材に合わせた下処理、煮込む順番と時間がポイントになります。面倒に思われるかもしれませんが、簡単な作業ばかりです。身も心も温まるワンランク上のおでんに、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
参考動画
本記事は銀座渡利様のYouTubeチャンネルを参考にさせていただきました。魚介類のさばき方や調理についての動画が中心ですが、肉を使った定番の家庭料理も紹介されています。名店で修業したプロの料理人の解説はわかりやすく、真似して作るとおいしいと評判です。よろしければぜひご覧くださいませ。
おでんって、いろいろな具材をぐつぐつ煮込むだけの簡単な料理じゃないの?